第57話 底辺配信者、ギルド対抗戦に参加する。18
千春さんをお姫様抱っこしているため、ライ⚪︎ーキックにて『牙狼』ギルド2名を気絶させる。
「大丈夫ですか?千春さん」
俺は腕の中にいる千春さんへ声をかける。
「え、えぇ。ビックリしたけど大丈夫よ」
かなり驚いている顔をしているが、新たな怪我を負ったとかはなさそうだ。
〈おい。コイツ、ギルド対抗戦という場を利用して、メンバー全員にセクハラするつもりなんじゃないか?〉
〈美柑ちゃんや芽吹ちゃんだけでは飽き足らず、千春ちゃんまで手を出したからな〉
〈許せねぇ!みんなもそう思うだろ!?〉
〈%#$¥@&%#っ!〉
〈日本語使えよww〉
〈ブチ切れてるのだけは伝わってくるなww〉
「すみません、俺なんかがお姫様抱っこしてしまって。今降ろしますね」
俺はそっと千春さんを降ろす。
「助けてくれてありがとう。女装してなかったら惚れてるくらいカッコ良かったわ」
「い、いえ。メンバーとして当たり前のことしたまでですよ」
女装してなかったら惚れられていたという事実に泣きそうになる。
(後でギルマスの和歌奈さんを呪おう。あの人が女装用の服を持ってなかったら、女装する必要なんてなかったのに)
本気でそう思う。
「じゃあ、私は重症の美柑を回復させてくるわ。あの地震で立てなくなったようだから」
忘れていたわけではないが、視界の隅で美柑が力尽きている。
リタイアしてないことから意識はあるのだろう。
「ウチも千春さんに回復してもらってから愛菜さんの援護に行きます。先に愛菜さんを助けに行ってください」
「分かりました。千春さん、みんなの回復をお願いします。芽吹ちゃんは回復したら援護に来て。美柑はゆっくり寝てていいからな」
「な、なんで私だけ寝てなきゃいけないのよ……」
美柑が力無い声で返事をしてくる。
「ははっ、なら動けるようになったら援護に来てくれ」
「わ、わかってるわよ。だからさっさと行きなさい」
俺は千春さんと芽吹ちゃん、美柑に一言ずつ声をかけて愛菜さんのもとへ向かう。
「愛菜さんが相手をしているハルカさんは全盛期の和歌奈さんと同レベルの強さを持っている。侮れないぞ」
そんな相手と1対1で戦っている愛菜さんは防戦一方となっていたため、超特急で向かう。
〈冒険者をしてる日本人女性で1番強いのがハルカさんだ。昔、和歌奈さんと一緒に活動してたくらいだからな〉
〈さて、龍馬さんを裕哉キックで倒した裕哉ちゃんはハルカさんをどうやって倒すのか。楽しみだな〉
〈違うぞ。あれは裕哉キックじゃなくてライ⚪︎ーキックらしいぞ〉
〈いや、あれがライ⚪︎ーキックだったら、仮⚪︎ライダーが街を滅ぼしちゃうからww〉
「見えたっ!愛菜さんは無事のようだな!」
ハルカさんの剣を上手く受け流しつつ、愛菜さんが戦っているのが見える。
ただ、愛菜さんの身体には至る所に傷ができており、ところどころ服も破れている。
しかも今回も千春さんの時と同様に近接戦闘を繰り返しているため、斬撃を飛ばす等で地面に攻撃すれば愛菜さんにも危険が及ぶ。
〈さて、今回はどうやって愛菜ちゃんを助けるのか〉
〈もう一回地割れを起こすんじゃないか?〉
〈俺は他の封印されし技を使って助けてほしいな。地割れの他に何があるかものすごく気になる〉
(仕方ない。もう一回地割れ攻撃を……いや、待てよ?要するに愛菜さんがこれ以上ダメージを受けず、愛菜さんの攻撃でハルカさんをリタイアさせればいいんだろ?)
攻撃禁止令を発令されている俺はハルカさんに直接攻撃をできないが、愛菜さんがハルカさんに勝てるようサポートするのは禁止されていない。
(面白いことを考えてしまった)
自分の天才的思考に自然と口角が上がる。
〈おい、裕哉ちゃんがバカなこと考えてそうだぞ〉
〈俺には見える。裕哉ちゃんがバカなことをする未来が〉
〈〈〈〈上に同じ〉〉〉〉
〈アイツ、視聴者からバカキャラと思われてるぞww〉
「となれば、さっそく行動だ!」
俺は思いついた作戦を実行すべく、愛菜ちゃんとハルカさんが戦っている戦場へ急行する。
その際、今回の作戦に剣が邪魔になるので、剣を鞘に納める。
そして、一瞬でハルカさんの背後に回る。
その距離数cm。
「っ!」
「きゃっ!」
背後を取られたと思ったハルカさんが愛菜さんを吹き飛ばし、180°回転しながら俺に剣を振る。
剣を鞘に納めている俺は、その攻撃をしゃがんで回避する。
「ハルカさん、さっきぶりですね!」
そして軽く挨拶をする。
「っ!」
しかし、俺の挨拶を無視してハルカさんが連撃を披露する。
「うわっ!ちょっ!ハルカさん!?見て!俺、武器持ってませんよ!」
俺はハルカさんの攻撃を回避しながら丸腰であることをアピールする。
〈え、アイツ何やってんの?〉
〈知らん。死にたいんじゃないか?〉
〈あの状態のハルカさんに武器持たないで話しかけるのは自殺志願者ww〉
「何を言ってるかわからない……よっ!」
そんな俺の言葉に聞く耳を持たず、ひたすら攻撃してくる。
ハルカさんが攻撃し、俺が回避し続けること数十秒。
待望の人物が戻ってきた。
「アタシを忘れてもらったら困るなっ!」
「っ!」
愛菜さんがハルカさんの背後から攻撃を仕掛ける。
しかも回避するのは不可能な絶妙なタイミング。
ハルカさんは愛菜さんの攻撃を防ぐか喰らうかの2択しかない。
(完璧です、愛菜さん!ここまでは俺の想像通りですよ!)
ハルカさんは瞬時に武器を持たない俺の方がダメージが少ないと考え、俺の攻撃を素手で防御できる体勢を作りつつ、愛菜さんの攻撃を剣で防ぐ。
「今だ!裕哉くんっ!ハルカさんの隙を作って!」
「任せてくださいっ!」
俺は無防備となったハルカさんへ詰め寄る。
そして耳元で…
「うらめしや〜」
と、囁く。
もちろん、しっかり両手を上げ、お化けのポーズまで行って。
「「…………」」
そんな俺のことをアホの子でも見るような目で見る愛菜さんとハルカさん。
2人とも闘いの最中ということを忘れているらしく、剣を交えた状態で固まっている。
「あ、あれ?今が攻撃チャンスですよ、愛菜さん。ハルカさん、俺の「うらめしや〜」で隙を作ってますから」
「アホかぁぁぁぁ!!!!」
戦いの最中、愛菜さんが声を上げる。
「他に方法があっただろ!アタシまで力が抜けるわ!」
〈アホすぎるww〉
〈マジでしょうもないことを考えてたわww〉
〈要望通り、ハルカさんの隙は作ってたけどなww〉
〈あははっ!お兄ちゃん、マジさいこーっ!〉
〈「うらめしや〜」が下手くそすぎて笑えるww。家で練習させないとww〉
〈いや、笑うところそこじゃないからww。「うらめしや〜」の下手さに俺たち笑ってないからww〉
何故かダメ出しを受ける俺だった。
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