第50話 底辺配信者、ギルド対抗戦に参加する。11
試合開始を待つ間、俺は愛菜さんから話しかけられる。
「いいか、裕哉くん。今から大事な話をする」
「……?」
見当のつかない俺は愛菜さんからの続きの言葉を待つ。
「必ず、敵である冒険者に攻撃を当てないでくれ。敵を気絶させるのはアタシたちがやるから」
理由は分からないが目がマジなので、俺が敵に攻撃すると困るようだ。
「わ、わかりました。敵の冒険者には攻撃が当たらないよう、うまく囮になります」
「あぁ。頼んだぞ。でないと、死人が出てしまうからな」
「それは大変ですね」
「まるで他人事のように言ってるが……まぁいい。頼んだぞ」
との忠告をもらう。
そして5分後。
「全てのギルドが配置につき、配信を行う準備も整いました。決勝戦、開始!」
というアナウンスが聞こえ、俺はさっそく動き出す。
「まずは北に行ってみます!」
「あぁ、アタシたちも後から行く」
俺は囮となるため、先行して敵を見つけに行く。
〈お、『閃光』ギルドは裕哉ちゃんが別行動を始めたぞ〉
〈いや、裕哉ちゃんの後ろを愛菜たちが移動していることから、裕哉ちゃんと戦っているところを後ろから攻撃する作戦だと思われる〉
〈なるほど。つまり裕哉ちゃんが囮になるのか……え、裕哉ちゃんが囮?囮が敵を全滅させるぞ?〉
〈戦車が囮になってるようなものだからな。死ぬことのない、最強の囮が完成しとる〉
先行して移動する俺は、フィールド自体が狭くできているため、簡単に敵ギルドを見つけることができた。
かなり距離のある位置で発見したため、敵は俺の存在に気づいていないようだ。
俺は数10メートルの高さがある木の上から敵ギルドを観察する。
(あれは……4位で予選を突破した『紫電』ギルドか。要注意人物はいないが、油断するなと言われていたな)
そう分析した俺は、さっそく囮の役割を果たすべく、攻撃を仕掛ける。
「さて、気絶する攻撃が推奨されているが、雑魚モンスターしか倒せない俺の攻撃を受けたくらいで気絶するはずがない。でも愛菜さんから念押しされたから、ここは愛菜さんたちの援護を待つために気を引くだけにするか」
そう思った俺は雑魚モンスターである『空飛ぶトカゲ』や白い虎を瞬殺できる斬撃を遠距離から放つ。
目的は俺に注意を向けてもらうことと、『紫電』ギルドの混乱なので、俺は5人固まって移動している『紫電』ギルドの足元目掛け、斬撃を一つ放つ。
「よっ!」
“シュッ!”という音と共に斬撃が放たれ、“ドゴっ!”という音とともに地面で斬撃が爆ぜる。
「「「「「グハッ!」」」」」
その衝撃で5人が吹き飛ぶ。
〈でたー!裕哉ちゃんの飛ぶ斬撃!〉
〈てか、よく見つけたな。しかも寸分違わず5人の真下に当ててるし〉
〈いやいや!おかしいだろ!斬撃を地面に当てただけで『紫電』ギルドのメンバー全員が吹き飛んでるんだけど!?〉
〈おそらく地面にバカみたいな威力の攻撃が当たり、地面が抉れると共に衝撃波を発生させたんだろう〉
〈そんなの普通できねぇよww〉
斬撃を放った俺は囮になるよう、斬撃が当たった場所に降り立つ。
そして…
「ここから先は俺が相手になってやる!」
と、高々と宣言する。
「………」
しかし、一向に誰も現れない。
すると「『紫電』ギルド、5人の気絶を確認」とのアナウンスが聞こえてくる。
「………へ?」
そして、『紫電』ギルドの敗退が決定する。
「あ、あれぇ?」
不思議な現象が起こり、俺は首を傾げる。
〈いや、エグすぎww〉
〈何があったんだよww〉
〈さっきまで『紫電』ギルドの配信を視聴してたから説明するわ。突然、地面が爆ぜてメンバー5人が吹き飛ぶ→威力を殺しきれなかったメンバー5人は木々をなぎ倒しつつ遥か彼方へ飛んでいく→全員、気絶してリタイア。って感じだ〉
〈裕哉ちゃんの斬撃、核弾頭かよww〉
〈もはや囮の攻撃じゃねぇww〉
〈囮って言葉、ググってこいww〉
俺が首を傾げていると、愛菜さんたちが到着する。
「なぁ、裕哉くん。何があったんだ?」
「あ、愛菜さん。それが、斬撃を地面に向けて放ったら、『紫電』ギルドの5人が吹き飛んでリタイアしたらしいんです。俺の見解だと、俺の斬撃がたまたま爆発系のトラップに当たり、みんなが吹き飛んでリタイアしたんだと思います」
〈このフィールドにトラップなんてものはないからなww〉
〈お前の攻撃で吹き飛んだんだよww〉
〈トラップww。相変わらず、思考回路がわからねぇww〉
「なるほど。全て理解した」
そう言って愛菜さんが、俺の肩に手を置く。
「今の攻撃を『牙狼』ギルドと『霧雨』ギルドにもしてこい。それをしてくれたら裕哉くんは最高の囮となるだろう」
「了解です!俺に任せてください!」
〈愛菜さん、説明するの放棄したなww〉
〈最高の囮って何!?囮のやる攻撃じゃねぇよww〉
〈そうか。囮って敵を全滅させる人のこと言うのか。勉強になったぜ〉
〈違うからww。そんな囮いないからww〉
「アタシたちはさっきと同じように裕哉くんを追いかけるから、裕哉くんは敵を発見したら攻撃してくれ」
「わかりました!」
俺は愛菜さんから指示をもらい、張り切って敵を探しに行った。
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