第49話 底辺配信者、ギルド対抗戦に参加する。10
「さて、情報収集はこれくらいにして、次は決勝戦での戦い方を話し合うよ!」
そんな感じで、俺たちは決勝戦の作戦会議を始める。
「まずはルール確認ね。決勝は4ギルド総当たりでのバトルロイヤル。決勝に進んだギルドメンバー全員が同じフィールドに立ち、メンバー同士で攻撃し合うの。一定数のダメージを受けた場合、フィールドから強制的にリタイアする魔法を施すから、死ぬことはないよ」
一定数のダメージとは審判が判断するため、一定数を数値で表すことはできないが、気絶や重症を負った際は強制的にリタイアさせられるとのこと。
また、バトルロイヤルで受けたダメージはそのまま残るため、相手を殺さないよう注意が必要となる。
「バトルロイヤルでは相手を気絶させる攻撃を行うことが推奨されてるね。もちろん、そんな余裕がない時は死なない程度に全力で攻撃していいよ。リタイアした後は回復係が回復してくれるから」
(できるだけ大怪我を負わせないってところが難しいな)
「フィールドは狭いので制限時間は1時間。終了時に残っている人数が多いギルドが優勝になるよ」
ちなみに終了時に残っている人数が同数のギルドがあった場合は、リタイアさせた人数の多いギルドが優勝となる。
「フィールドは見えてると思うけど森のようね」
その言葉に俺たちは近くに見える、予選開始前までは見られなかった森林に目を向ける。
予選を行っている最中に運営が1階層に決勝の舞台となる場所を用意したようだ。
「配置位置は運営スタッフに案内されるから今は分からないの。だから、決勝が始まった時、他のギルドがどこにいるかも分からない」
「それは厄介ですね。どの方角にどのギルドがいるのか分からないのは作戦が立てれません」
「確かに。しかも森だと視界が悪くて敵ギルドを発見しにくいですし」
愛菜さんの言葉に俺も賛同する。
「その通り。だから、私は予選を見ながら作戦を考えたんだ!」
和歌奈さんが自信満々に言う。
「名付けて、裕哉くん囮作戦!」
「うん、作戦名だけで作戦の全容がわかりますね」
もはや説明などいらない。
「っというわけで、裕哉くんが敵ギルドを見つけて攻撃を仕掛ける!そして、敵が裕哉を相手してる時に、愛菜ちゃんたちが後ろから攻撃するって作戦だね!」
「なるほど。確かにこれが1番良い作戦のような気がします」
和歌奈さんの作戦に愛菜さんたちが同意する。
「裕哉くんなら単体で敵ギルドに攻め入ってもリタイアすることはないと思う!しかも、裕哉くん相手に敵ギルドは愛菜ちゃんたちの動向を確認しながら戦うなんて不可能!」
「そうですね。その作戦でいきましょう」
「俺は構いませんよ。むしろ、囮は男子である俺がやるべき役割ですから」
「よし!じゃあ、この作戦で頑張ってね!」
「「「「「はい!」」」」」
その後、囮作戦の内容を詳しく話し合い、決勝開始時間を待った。
「で、俺は結局、この格好なんですね」
「うん!似合ってるよ!裕哉ちゃん!」
和歌奈さんから手渡された服を着て、みんなの前に現れる。
「本当はスカートを着てほしかったんだけど、さすがにスカートじゃ動きにくいかなーって思ってズボンにしたんだ!ナイス判断だよね!」
「ズボンじゃなくてスカートが入ってたら暴動を起こす自信があります」
スカートが準備されてなくて心の底からホッとする。
「はぁ。罰ゲームだから仕方なく着てますが……もう2度と着ませんからね」
「それは約束できないなー!」
「………」
(ダメだ。これ、絶対また着せられるやつだ)
そんなことを思う。
すると、「決勝戦を開始します。出場メンバーは集まってください」とのアナウンスが聞こえてくる。
「じゃあ、みんな頑張ってね!優勝以外は全員、罰ゲームだから!」
「次はアタシらも罰ゲームかよ」
「絶対優勝しなきゃいけない理由ができたぞ」
「ですね。ウチ、和歌奈さんからの罰ゲームなんて受けたくないですよ」
「えぇ。どんな罰ゲームか見当がつかないもの。私も受けなくないわ」
「お姉様からの罰ゲーム!つまり優勝しなくてもご褒美が待ってるってことね!」
「罰ゲームをご褒美と思ってんのはお前だけだ」
「誰か美柑を黙らせろ」
「もごもごっ!」
チームワークの無さが露呈しました。
運営スタッフに案内され、決勝の会場となる森へ誘導される。
俺たちが誘導された場所は数十メートルはあるであろう高い木々に覆われた場所。
「木が高すぎて周りが見えませんね」
「あぁ。視界が悪すぎる。これじゃ、先に敵を見つけた方が有利になるぞ」
俺たちは案内された場所で周りを確認する。
「では、今から5分後に開始となります。開始の合図があるまでは動かないでください。また、予選と同様、配信をする予定となっておりますので、1人一台カメラを貸し出しております。視聴者のコメントは見ることができませんので、その点は注意してください」
との忠告をして、案内してくれたスタッフが消える。
「じゃあ、作戦の最終確認だ。まず、裕哉くんが適当に動いて敵を見つけ、攻撃を仕掛ける。そしてバトルしてると思ったところにアタシたちが駆けつけ、背後から攻撃をする。いいな?」
愛菜さんの言葉に全員が頷く。
「よし!絶対優勝するぞ!」
「「「「おー!」」」」
俺たちは気合を入れて開始時間を待った。
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