第48話 底辺配信者、ギルド対抗戦に参加する。9

 ノルマを達成できなかった俺は落ち込んだ表情でダンジョンを出る。


「お疲れ、裕哉くん」


「お疲れ様です!裕哉先輩!」


 そんな俺に愛菜先輩と芽吹ちゃんが声をかけてくれる。


「聞いたわ。白虎を25体討伐したようね。すごいじゃない」


「そうね。さすが裕哉さんよ」


 そして美柑と千春さんが励ましてくれる。


「それでも和歌奈さんからもらったノルマの30体は討伐できませんでした。30体討伐しないとみんなの役に立てないという意味でくれたノルマだと思うのですが……」


 俺はノルマを達成できなかったため、みんなに合わせる顔がなく俯いた表情で返答する。


「なんだ、さっきから嬉しくなさそうな顔してると思ったら、そんなことを気にしてたのか」


「えぇ、ノルマのことなんて気にしなくて良いわ。だって予選はトップ通過できたもの」


「ホントですか!?」


「あぁ。みんなと裕哉くんのおかげでトップ通過だ」


「よかったぁ」


 ノルマを達成できなかったせいで予選落ちとなっていたら愛菜さんたちに合わせる顔がなかったので、その言葉を聞いて安堵する。


「午後からは予選を通過した4つのギルドでバトルロイヤルになる。休憩しながら作戦会議を行うから、和歌奈さんのもとへ行こうか」


「………分かりました」


 正直、罰ゲームのことがあるので和歌奈さんに会いたくはないが、そういうわけにもいかないので、大人しく愛菜さんの後ろをついて歩く。


「お疲れー!みんなのおかげで『閃光』ギルドは予選をトップ通過だよ!」


「ありがとうございます。やはり4人いるとA級モンスターのミノタウロスも危険なく討伐できますね」


「うんうん!見てたけど、4人のチームワークは最高だったよ!」


 和歌奈さんが満足気に話す。


「裕哉くんも白虎相手に無双してたね!私の読み通りだよ!さすが裕哉くん!」


「あ、ありがとうございます」


 まさか褒められるとは思ってなかったので、慌てて返答する。


「特に、白虎15体を同時に相手しても負けない無双っぷりがよかったよ!」


(おぉ!なんか知らんが虎ごときを15体瞬殺したくらいで大絶賛されてるぞ!これはもしかして「頑張ったから罰ゲームなんてなくていいよ!」という話の流れなのでは!?)


「っというわけで罰ゲームだね!」


「………」


 そんなことありませんでした。


「いやー、惜しかったね!あと5体!あと5体討伐できれば私からの罰ゲームを回避できたのに!」


「異議ありっ!俺だけ罰ゲームがあるのは間違いだと思います!」


 そのため、少しでも罰ゲームの内容を和らげるため、全力でおかしいことを伝える。


「そんなことないよ!弟子に厳しくするのは師匠として当然だからね!裕哉くんだけに罰ゲームを与えるのは当然だよ!」


「そんなことしなくていいんです!」


 と、その後も罰ゲームを回避、もしくは罰ゲームの内容を緩和しようと頑張るも、全然聞いてくれない。


 そのため、俺は諦めて罰ゲームを受けることにする。


「はぁ、分かりました。どんな罰ゲームでも受けますよ」


「さっすが裕哉くん!」


(この人、楽しんでるなぁ)


 そんなことを思う。


「じゃあ、後で裕哉くんに罰ゲームとして服をプレゼントするとして……作戦会議に移りますか!」


「あ、俺の罰ゲームは女装することなんですね」


「うん!本当は他の罰ゲームを考えてたんだけど、なんか『閃光』ギルドに『裕哉ちゃんを出せーっ!」って問い合わせが殺到したらしくてね!決勝で裕哉ちゃんを出さないと『閃光』ギルドの受付職員が泣いちゃうから!」


「ホント、ここの視聴者ってバカしかいませんね!」


 毎度のことながら、『閃光』ギルドの視聴者にはアホしかいないようだ。


「こほんっ!さて、裕哉くんの罰ゲームも決まったことだし、作戦会議に移るよ!」


 そう言って、決勝に向けての作戦会議が始まった。




 俺たちは軽食を取りつつ、和歌奈さんの話を聞く。


「今回、予選を勝ち上がり決勝に進んだギルドは『閃光』を含めて4つ。2位通過は昨年優勝の『牙狼』ギルド。リーダーを務める広瀬龍馬さんを筆頭にレベルの高い冒険者が出場してるよ」


 俺は午前中に愛菜さんから教えてもらった、背中に馬鹿でかい斧を背負っており、見るからに脳筋のような体格をしている男を思い出す。


「そして3位通過が、ドSで私にイジワルしかしないくせにめっちゃ強いハルカさん率いる『霧雨』ギルド。去年は3位だったけど、今年は去年のメンバーよりも数倍レベルが上がってるから要注意だね」


 俺は午前中に話しかけてきた、髪をショートカットにしているボーイッシュな美女を思い浮かべる。


「4位で通過したのは『紫電』ギルド。このギルドは実力者が少ないけど、チームワークが抜群といった印象ね。注意すべき人はいないけど、予選を通過するくらいだから油断は禁物だよ」


 俺たちは敵となるギルドの情報を簡単に聞き、頭に入れる。


「さて、情報収集はこれくらいにして、次は決勝戦での戦い方を話し合うよ!」


 そんな感じで、俺たちは決勝戦の作戦会議を始めた。

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