第47話 底辺配信者、ギルド対抗戦に参加する。8

「さて、残り10体。討伐に行きますか!」


 そう呟いた俺は再びダンジョン内を歩き出す。


 そして20分が経過する。


「虎がいねぇぇぇぇ!!!!」


 俺は再びダンジョン内で叫ぶこととなる。


〈だからお前から白虎が逃げてんだよ〉


〈S級モンスターの白虎が逃げるってヤバすぎww〉


〈逃げてる……というより隠れてる可能性、マジであり得るぞ。裕哉の足音しかしねぇからな〉


「おかしい!全然虎がいねぇ!ってか、残り50分で予選が終わるぅ!」


 刻一刻と予選終了時刻が近づいており、俺は焦りを覚える。


「仕方ねぇ!もう体力温存とか言ってられねぇからな!走って虎を見つけ、瞬殺するパターンでいくぞ!」


 そう思い、俺は再びドローン型のカメラを持つ。


「すみません、もう一度走ろうと思います。画面が揺れないように注意しますので、少しだけ我慢してください。それか、視聴をやめてください。あと10秒後に走り出します」


 俺は視聴者に一言入れる。


〈おう!さっきのダッシュは面白かったから、気にすることないぞ!〉


〈むしろ、俺の方からお願いしたいくらいだ〉


〈「あれが裕哉の見てる世界かぁ」って思ったからな。異次元の速さすぎて〉


 俺は心の中で10秒数え、走り出す。


〈うぉぉぉ!!!速すぎっ!〉


〈このスピードで虎を瞬殺すんのかよ!どんな様子が見れるか楽しみなんだけど!〉


〈てか、相変わらず景色は変わんねぇなww〉


 俺は画面が揺れないよう細心の注意を払いつつ、虎を見つけるためダンジョン内を駆け回る。


 そして5分後。


「マジで虎がいねぇ!!!」


 俺は再度、ダンジョン内で叫ぶ。


〈白虎は知性があるんだ。15体の特攻で勝てないと思った白虎は、お前から全力で逃げてんだよ〉


〈裕哉が放つオーラ的なのを無くせば白虎が近寄ってくるかもしれんぞ。知らんけど〉


〈今、視聴し始めたが………白虎が逃げるってなに?〉


〈お、新参者か。言葉通りだ〉


〈だからわかんねぇってww〉


「お、おおお落ち着け。まだ慌てる時間じゃない。あと45分で10体倒せばいいだけだ。そうすれば和歌奈さんからの罰ゲームを回避できる」


〈とか言ってる割に両手と両足は震えてるけどな〉


〈和歌奈さんにどんだけビビってんだよww〉


〈和歌奈さんって白虎より恐ろしいのか!?〉


〈白虎を瞬殺できる裕哉がビビってるんだ。可愛い顔して実は恐ろしい女だったとは……〉


〈和歌奈さんが実は怖い女みたいになってるぞww〉


〈普通、白虎を目の前にした時に全身震えるはずだけどな。むしろ、和歌奈さんからの罰ゲームなんかご褒美でしかない〉


〈俺も和歌奈さんからの罰ゲームを受けてみたい……いや、受けさせてください!〉


〈俺は和歌奈さんから罵られたいぜ〉


〈ここの視聴者、変態しかいねぇのかよww〉


「今はひたすら走って虎を見つけることが大事だ!和歌奈さんからの罰ゲームの内容を考えても無駄だ!」


 そう言って俺は再び走り出す。


 しばらく走っていると…


「見つけたっ!」


 数メートル先に虎を1体発見する。


「残り9匹ーっ!」


 “ザシュっ!”


「グ…ォォ……」


 虎が俺の存在に気づいて攻撃しようとしたが、動きが遅すぎたため、攻撃を受けることなく、虎を魔石に変える。


〈待って、虎の姿が見えた瞬間、魔石になったんだがww〉


〈裕哉の攻撃と虎の姿を視認できなかったんだけどww〉


〈えっ!今、虎を瞬殺したの!?全く気づかなかった!〉


 魔石なんか拾ってる場合ではないので魔石を放置して再び走り出す。


〈そして数100万の魔石を放置する裕哉〉


〈だから和歌奈さんからの罰ゲームにビビりすぎww〉


〈裕哉なら10秒もあれば拾ってバックに詰めることできただろ!〉


〈その10秒を惜しむくらい和歌奈さんからの罰ゲームを逃れようとしてるんだ。和歌奈さん……恐ろしい女だぜ〉


 俺は1体の虎を瞬殺し、スピードを落とすことなく走り続ける。


 そして、その後も4体の虎を瞬殺する。


 しかし…


「ヤベぇ!時間がねぇ!」


 残り時間が5分となる。


〈アイツ、45分間ずっと走り続けてるぞ〉


〈午後からの決勝戦、大丈夫かよww〉


〈まぁ、裕哉のことだ。大丈夫だろう〉


〈あぁ。だって今も「出てこいやぁぁぁ!!!」とか言いながら走ってるからな。体力は余裕なんだろう〉


〈むしろ、自分の居場所を教えてるだろww〉


「くそっ!虎の分際で!」


 そんなことを呟きつつ、俺はダンジョン内を走り続ける。


〈5秒前ー!〉


〈4ー!〉


〈3ー!〉


〈2ー!〉


〈1ー!〉


〈ぜろーっ!〉


「だぁーっ!終わってしまったぁぁぁ!!!」


 無情にもタイムアップを迎えてしまう。


 タイムアップ後に討伐してもポイントにはならないので、俺は大人しくダンジョンを出ることにする。


〈結局、3時間で25体討伐してるのか〉


〈強すぎて笑うww〉


〈こりゃ、決勝戦も楽しみだ〉


〈あぁ。裕哉がどんな罰ゲームを受けるのか、楽しみだな〉


〈それは気になるww〉


「ヤベぇよ。ノルマ達成できなかったよ。愛菜さんたちに合わせる顔がねぇよ」


 そんなことを思いつつ、俺はダンジョンを出た。 

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