第46話 底辺配信者、ギルド対抗戦に参加する。7

 俺はアレ(魔力解放)を披露して虎を従わせる。


 そして虎の背中にまたがり、ダンジョンを移動する。


「さぁ、虎さんよ!俺のために仲間のもとへ連れてってくれ!」


「グォゥ!」


 俺の言葉を聞いて元気に吠え、走り出す。


(ふぅ、虎さんが仲間のもとへ連れてってくれそうだ。これでノルマは達成したも同然だな)


 そんなことを思いつつ、虎の毛をもふもふする。


 そして10分が経過する。


「おい、虎よ。お前、全然仲間のところに連れてってくれねぇじゃねぇか。いつまで走り続ける予定なんだ?」


「グ…グォゥ…」


「そうかそうか。もう少しなんだな」


「グォゥ!」


「よし。なら、もう少しだけ待ってやるか」


「グォゥ!グォゥ!」


 寛容な俺は怒ることなく、虎の背中にまたがり続ける。


〈白虎の奴、絶対仲間売る気ないなww〉


〈そして裕哉はそのことに気づいてねぇぞww〉


〈白虎ー!あと1時間半走り続ければ生き残れるぞー!〉


 そして、さらに10分が経過する。


「おい、虎ぁ。いい加減にしろよ?いつまで走り続けてんだ?」


「グ…グォゥ…」


「え?もう少し?」


「グォゥ!グォゥ!」


「仕方ねぇな。あと5分だけだぞ」


「グォゥ!」


〈優しいなww〉


〈白虎に乗ってから20分経過してんのに余裕なんだがww〉


〈てか裕哉の奴、白虎と会話してるんだけどww。アイツ、白虎の言葉が分かってんのかよww〉


 寛容な俺は再び怒ることなく虎のもふもふを堪能する。


 そして5分後。


 虎にまたがっていた俺は、通路のような場所から剣を振り回しても問題ないくらい広い場所へ連れて来られる。


 すると、そこでは14匹の虎が戦闘準備万端といった形で俺を出迎えてくれた。


〈おいっ!白虎が14匹いるぞ!〉


〈案内してくれた白虎を入れたら15匹だ!〉


〈あの白虎、普通に裏切ってきたなww〉


〈白虎15匹はヤベェだろ!絶対逃げた方がいいて!〉


「よくやったぞ、虎さんよ。25分間背中に乗った甲斐があったぜ」


 俺は虎の頭を“ポンポン”と叩き、背中から降りる。


 その瞬間、俺を案内した虎が襲いかかってくる。


「はい、1匹目ー!」


 “ザシュっ!”


「グ…ォォ……」


 そんな力のない声とともに魔石へと変化する。


 それを合図にしていたのか、案内した虎が魔石になった瞬間、全方角から虎が襲いかかってくる。


〈ヤベェ!これはヤベェ!〉


〈さすがの裕哉でもこの状況はマズイ!〉


〈なんとかしろーっ!〉


 その様子を見た俺は自然と笑みをこぼす。


「なんだ、みんな死にに来てくれるじゃん。そんなサービスまであるんかよ」


 そう呟いた俺は剣の柄を握る。


 そしてその場で50メートルほどジャンプし、14匹の攻撃を躱す。


 その後、俺は空中で目に見えない速さで剣を振り、虎に向けて無数の斬撃を放つ。


 合計50近くの斬撃が雨のように上空から降り注ぎ、14体の虎を襲う。


「「「「グ…ォォ……」」」」


 柔らかい毛では俺の斬撃を防ぐことができず、14匹の虎全てが魔石に変わる。


〈いやおかしいだろww〉


〈雨のように斬撃が降ってたんだが!〉


〈すごすぎww。裕哉は15体のS級モンスターに襲われても死なねぇのかよww〉


「ふぅ、これで15体討伐完了だな」


 俺は着地と同時にそう呟く。


「結局、虎さんは仲間のところへ案内してくれたな。しかも自ら殺されに来るというサービス付き」


〈それはサービスじゃねぇww〉


〈白虎の作戦にまんまとハマったんだよww〉


〈返り討ちにしたけどなww〉


〈てか、案内してた白虎は25分間の散歩で仲間を待機させてたんだな〉


〈そうなるぞ。ってことは白虎って知性を持ってて他の白虎と協力もできるってことだ〉


〈あぁ、15体の一斉攻撃は裕哉じゃなきゃ生き残れねぇ〉


〈残念だったな、白虎よ。お前が連れてきたのは地獄へと誘う死神だ。連れてこないで逃げ回るのが正解だったな〉


「よし、これで20体を討伐したから残りは10体。そして、残り時間は1時間以上ある。勝った!罰ゲームの未来は回避できるぞ!」


 1時間で5体しか討伐できていなかった時はどうなるかと思ったが、残り10体となったところで先ほどまでの焦りが消える。


「さて、残り10体。討伐に行きますか!」


 そう呟いた俺は再びダンジョン内を歩き出した。


――残り1時間10分で予選終了――

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