第51話 底辺配信者、ギルド対抗戦に参加する。12
俺は愛菜さんから指示をもらい、張り切って敵を探しに行く。
「爆発音が響き渡ったから、ここで『紫電』ギルドがやられたことは『牙狼』と『霧雨』も理解してるよな」
ということもあり、なかなか敵ギルドが見つからない。
俺は『紫電』ギルドを見つけたように高さ数10メートルはある木の上から探しつつ、移動する。
「よっ!」
そして猿のように木と木を移動していると、突然移ろうとしていた木が爆発する。
「っ!」
俺は着地点を見失い、落下する。
その落下地点に敵ギルドの冒険者たちが待ち構えていた。
「ファイヤーボール!」
「フレイムアローっ!」
「ホーリーランスっ!」
「ウィンドカッターっ!」
落下中の俺に一斉攻撃を仕掛けてくる。
「くそっ!真下にいたのか!だから見つからなかったのか!」
『紫電』ギルドを見つけた時のように遠方ばかり気にしていたため、真下にいるとは思わず油断していた。
「これが灯台下暗しっていうやつか……って、この試合、気絶を推奨してるんだよね!?俺、殺しに来てない!?」
〈当たり前だ。お前を脱落させるには殺すしか方法がないからな〉
〈手加減してる場合じゃねぇよ〉
〈ん?裕哉ちゃんは気づいてなさそうだが、あれって『牙狼』ギルドと『霧雨』ギルドの奴らじゃん。手を組んだのか?〉
〈どうやらそのようだ。まぁ、どう考えても手を組まないと『閃光』ギルドには勝てないだろ〉
「くっ!」
落下中の俺に迫る4つの攻撃を防ぐため、俺は剣を引き抜く。
そして4方向から迫る攻撃に対して、斬撃を放つことで何とか防ぐ。
「ぐっ!」
しかし、至近距離で斬撃を放ったため、相殺した時の爆発により、全身にダメージを負う。
「やったか!」
どこかの誰かが、俺が生存しているフラグを立ててくれる。
そのため…
「痛ぇじゃねぇか!」
俺はかすり傷程度で立ち上がる。
「な、何だと!?あの攻撃で生きてるだと!?」
俺に攻撃を仕掛けた冒険者の1人が、立ち上がった俺を見て驚く。
〈コイツ、モブとしては満点だなww〉
〈裕哉ちゃん生存のフラグを作り、裕哉ちゃんが生きてたとわかった後の反応も完璧ww〉
〈アホかよww〉
「やりやがったな!喰らえっ!」
俺は愛菜さんからもらった指示通り、冒険者4人の足下目掛けて斬撃を放つ。
「ぼ、防ぎ……ぐはっ!」
冒険者4人が防御しようとするが少し間に合わず、斬撃によって地面が爆ぜた衝撃で遥か彼方に飛んでいく。
「『牙狼』ギルド2名、『霧雨』ギルド2名の気絶を確認。リタイアします」
「ん?『牙狼』と『霧雨』が2人ずつリタイアってことは……まさか、2つのギルドが手を組んだのか!」
その発見と同時に、後方で激しい爆発音が響いた。
〜星野愛菜視点〜
「まさか、2人が手を組むなんて」
「さすがに耐えたか。集中砲火だったんだが」
「やはり『閃光』ギルドは侮れないね。さすが和歌奈の作ったギルドだ」
『牙狼』ギルドのリーダーを務める龍馬さんと、『霧雨』ギルドのリーダーを務めるハルカさんが、集中砲火を喰らって体制が整っていないアタシらに近づく。
アタシらは裕哉くんを後方から援護できるよう、距離をとって裕哉くんを追っていた。
すると、突然魔法が飛んできて、アタシらは慌てて防御をとった。
そのため、足が止まり、その場で体制を整えようとすると、あっという間に龍馬さん率いる『牙狼』ギルド3人とハルカさん率いる『霧雨』ギルド3人に囲まれる。
先程、『牙狼』と『霧雨』ギルドが2名ずつリタイアしたアナウンスを聞き、手を組んだことを瞬時に把握する。
一応、ギルド同士が手を組むことは反則ではないらしいが、そんなことをやっているギルド対抗戦の決勝は見たことがない。
そのため、このパターンを失念していた。
「まずいな。4対6だ。しかも龍馬さんとハルカさんがいる」
「えぇ、囲まれてることに加え、あの2人を相手にするのは厳しいわ」
「どうしますか?」
「逃げることは無理ね。戦うしかないわ。裕哉が来るまで耐えるのよ」
「美柑の言うとおりだ。みんな、さっきの攻撃でケガはないか?」
「はい!千春さんのバフのおかげで、かすり傷程度です!」
あの時、咄嗟に千春が防御のバフを全力でかけてくれたため、全員重傷を負ってはいない。
だが、みんな所々に痛々しい傷が見える。
「我々では裕哉に勝てないと思った」
「だから裕哉ちゃん以外をリタイアさせて、あとは裕哉ちゃんから逃げることにしたの」
「なるほど。アタシらがいなくなれば『閃光』ギルドは裕哉くんだけ。『牙狼』と『霧雨』は3人残るから、『閃光』ギルドの敗退は決まり、『牙狼』と『霧雨』は引き分けになると」
「あぁ。その場合リタイアさせた数の多いギルドが優勝になるが、そんなのは後で考える」
「君たち4人を全滅させた後でね!」
ハルカさんの発言が引き金となり、4対6のバトルが始まった。
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