第44話 底辺配信者、ギルド対抗戦に参加する。5

【はじめに】


 前話で視聴者が運営に問い合わせる点に関してご指摘をいただき、仰る通りだと思ったため…


『運営へ連絡』→『閃光ギルドへ連絡』


 へと、変更させていただきます。


 よろしくお願いします。<(_ _)>


******




「さて、コメントを見ることはできないから視聴者の反応を気にせず、ぼちぼち白い虎を狩っていくか」


 そんなことを思いながら俺は歩き出す。


 すると、おかしな点に気がつく。


「あれ?何で俺しか95階に来てないんだ?」


 そう思い、立ち止まる。


 普通、ワープしてダンジョンに入った際は必ず、一定の位置に飛ばされる。

 

 そのため、95階層を選択した人は俺と同じ場所からスタートとなる。


 しかし、時間が経過しても誰も来る気配がない。


「な、なるほど。白い虎は雑魚モンスターだから討伐した際のポイントが低い。だから、みんな虎より強いモンスターがいる階層に行ったのか」


〈違うわww〉


〈白虎が強すぎて誰も来てないんだよww〉


〈そもそも95階層に来れるのはお前だけだww〉


「ま、いっか。他に冒険者がいないってことは俺が倒すはずだった虎を横取りされることがないってことだ。つまり俺にとってはプラスでしかない。この状況をラッキーと思おう」


 そう思い、俺は探索を開始する。


「あれ?そういえば、このダンジョンに強いモンスターなんかいたっけ?虎より強い階層にみんなワープしたと思ったが……マジでみんなどの階に行ってるんだ?」


〈だから95階に来れるのはお前だけなんだってww〉


〈みんな95階よりも下にいるからww〉


〈和歌奈さんに後で教えてもらえ!〉


「ま、いっか。俺は白い虎を30体倒さないと和歌奈さんから罰ゲームを受けることになるから、他の冒険者なんか気にしてられないや」


 そんなことを思った。




 みんながどこにいるかという疑問を忘れ、俺は探索を開始する。


「和歌奈さんからのノルマは30体。3時間も探索する時間があれば余裕だろ……っと、さっそく一体目」


 俺は数10メートル先に現れた虎をロックオンする。


「できるだけ体力を温存しないと、午後からの決勝戦で戦えなくなる。ってなると……うん。虎を呼んだ方がはやいな」


 そう思い、俺は息を大きく吸う。


「虎さーん!ここに獲物がいますよー!」


 目の前の虎に聞こえる程度の声量で叫ぶ。


 すると、俺の声に気づいた虎が突進してくる。


〈白虎相手に大声を出すとかあり得ないんだがww〉


〈ただの自殺志願者ww〉


〈体力を温存するために虎を誘き寄せる方法は理解できる……いや、できねぇよ!不意打ちするのが常識だろ!〉


〈落ち着けよ。死ぬことはないんだ。気楽に見ようぜ〉


〈慌てても仕方ないぞ。どうせ瞬殺なんだから〉


〈S級モンスターの白虎を見ても落ち着いてる視聴者が多すぎるんだが!?〉


 俺は突進してくる虎に対して剣を構える。


 そして柔らかい毛を纏う虎を縦に真っ二つにする。


「グォ……」


 俺の攻撃を防ぐことのできなかった白虎は一瞬で魔石となる。


「虎さんはトカゲより楽だなぁ。全身を覆ってる柔らかそうな毛が弱点だから、どこを攻撃しても大ダメージを与えれる」


〈違うからww。柔らかそうな毛は弱点にならないからww〉


〈海外で活躍してたSランクパーティーの攻撃全て受けても無傷だったからな。モフモフしてそうだけど、すごく頑丈だから〉


〈相変わらず剣筋が見えねぇ!一瞬で白虎が魔石になっとる!〉


「っと、俺の声が響きすぎたかな。めっちゃ足音が聞こえてくるぞ」


 俺が耳を澄ませると“ドドドドっ!”という足音がどんどん大きくなっている。


 そして、数10メートル先に4体の白い虎が現れる。


〈ヤバっ!さすがの裕哉でも白虎4体は同時に相手できねぇだろ!〉


〈それができちゃうんだよね〜〉


〈ジタバタするな。そこでゆっくりお茶でも飲んどけ〉


〈だから何で落ち着いてる視聴者が多いんだよ!〉


「そこまで大きな声を出したわけじゃなかったから4体だけか。まぁ、この場で20体くらい集まられると面倒だから、4体くらいがちょうどいいが」


 広い場所なら20体くらい集まっても余裕だが、通路という狭い場所での戦闘となるため、たくさん集まられると面倒となる。


 そのため、4体という数はありがたい。


「さて、誰から来てくれるんだ?」


 俺の問いかけが聞こえたのか、タイミングよく4体の虎が突進してくる。


「全員で来るのか」


 その様子を確認した俺は剣の柄を持ち、目にも止まらぬ速さで剣を引き抜く。


 そして斬撃を2つ飛ばす。


「「グォっ!」」


 俺の斬撃を顔面から喰らった2体の虎が突進の途中に倒れ、魔石となる。


 生き残った2体は瞬殺された2体に目を止めることなく突進してくる。


「よっと!」


 その突進を俺はジャンプすることで冷静に躱し…


「喰らえっ!」


 目にも止まらぬ速さで剣を振り、2体の虎へ斬撃を喰らわす。


「「グォ……」」


 その攻撃を避ける事ができなかった2体の虎は一瞬で魔石となる。


〈ほらな。余裕だったろ〉


〈10体同時に現れても勝てそうだったな〉


〈正直、裕哉が負ける未来が見えん。これで日本は安泰だな〉


〈おかしすぎるわぁぁぁぁ!!!〉


「よし、これで5体は討伐完了っと!残り25体!余裕だな!」


 そんなことを呟きつつ、俺は探索を再開した。

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