第43話 底辺配信者、ギルド対抗戦に参加する。4
ハルカさんと和歌奈さんが話をしていると…
『ギルド対抗戦に出場される方は集まってください』
との声が聞こえてくる。
「お、始まるようだね。じゃ、僕はここで失礼するよ。君たちと決勝で戦えること、楽しみにしてるから。あ、それと和歌奈」
「な、何かな?」
ハルカさんからお願いされていた物を家に忘れてきた和歌奈さんが、少し怯えながら返答する。
「後でたっぷりお仕置きするから。逃げないでよ」
そう言ってハルカさんが俺たちから離れていく。
「………私、帰っていいかな?」
「ダメです。ハルカさんからのお仕置きを嬉々として受けてください」
「いやだ!ハルカちゃんドSだもん!絶対、私のお仕置きを楽しんじゃうよ!」
「ならドMになってください。これでプラマイゼロです」
「そんな理論初めて聞いたよ!」
その後も和歌奈さんが1人でわーきゃー騒いでいたため…
(ハルカさんってお仕置きを受けたくないほどのドSなんだろうな。自業自得なので助けたりはしないが)
そんなことを思った。
その後、ギルド対抗戦に出場する冒険者が呼ばれ、ルール説明を受ける。
その際、「必ず配信を行ってください」という指示をもらった。
詳しく聞くと、今回の配信で得たお金の何割かを運営側が得ることで利益にしているとのこと。
そのため、出場者全員にドローン型のカメラが手渡される。
「今回は配布したカメラで配信を行ってください。それに伴い、冒険者の方々はコメントを見ることができませんので、視聴者のことは気にせず探索をしてください。また、貸し出しのカメラということでギルド対抗戦の公式チャンネルで配信をすることになりますが、視聴者には誰が配信しているか分かるようにしてますので、ご安心ください」
(つまり、普通に探索しているところにドローン型のカメラが後ろから着いてくるって感じか。それにコメントを気にしなくていいのか)
いつもはドローン型のカメラと連携しているスマホでコメントの確認をしていたが、今回は渡されていないため、視聴者のコメントを一切見ることができない。
視聴者がどんな反応をしているのかは気になるが、コメントを見ることができないのなら気にしても仕方ないため、カメラの存在は忘れて探索することにする。
「では、出場選手の方たちはコチラへ集まってください」
とのことで、俺たちは好きな階層へ移動できるワープゾーンへ移動する。
「では、行ってきます」
「うん!頑張ってくるんだよ!」
俺たちは和歌奈さんからエールをもらい、呼ばれた場所へ向かう。
「あ、裕哉くん!ちょっと待って!」
すると和歌奈さんからストップがかかり、俺は立ち止まる。
「どうしましたか?」
「これ、忘れ物だよ!」
そう言って和歌奈さんは俺に紙袋を手渡す。
中には女物の服が入っていた。
「結構お高い服を用意したよ!奮発したんだから、この服に見合う活躍をしてね!」
「いらんわ!」
俺はもらった紙袋を和歌奈さんに押し付けてワープゾーンへ移動した。
「今から3時間です。皆さん、カメラを起動して配信を行ってますか?」
スタッフの声掛けにみんなが頷く。
「では、いってらっしゃいませ」
その言葉を聞き…
「3時間後に会おう、裕哉くん」
「お互い頑張りましょ」
「そうね。私たちも頑張ってくるから」
「目指せ、予選トップ通過です!」
「はい!また後で会いましょう!」
俺たちは好きな階層へワープする。
俺はみんなと別行動ということで、和歌奈さんの指令通り、1人で95階層に到着する。
「さて、30体は討伐しろって言われたな。まずはテキトーにぶらついてみるか」
そんなことを呟きつつ、俺はカメラに向けて挨拶をする。
「こんにちは。今日はギルド対抗戦に出場してますので、その様子を配信したいと思います。今回、皆さんのコメントを見ることはできないので、皆さんの反応を気にすることなく探索をしたいと思います。ちなみに、現在は95階層です」
俺は簡単に現在の状況と場所、そして視聴者のコメントを見ることができないことを伝える。
「さて、コメントを見ることはできないから視聴者の反応を気にせず、ぼちぼち白い虎を狩っていくか」
そんなことを思いながら俺は歩き出した。
〜視聴者side〜
〈おい、知らん奴がおるんやけど〉
〈おかしいな?俺、裕哉ちゃんの配信を見にきたはずなのに知らない男がいるんだけど〉
〈これ、詐欺じゃね?替え玉作戦だろ〉
〈なるほど!裕哉ちゃんの名前で登録して本番は裕哉ちゃんじゃない人に探索させてるのか!じゃあ、『閃光』ギルドが違反してるってことになるぞ!〉
〈あぁ。本来なら裕哉ちゃんが出場してるはずなのに知らない男が出場している。これは立派な違反行為だ〉
〈それなら急いで連絡しねぇと!〉
〈あぁ!俺、『閃光』ギルドに連絡するわ!どーなってんだって!〉
〈俺も!裕哉ちゃんと思ったら違う男がカメラに映ってたって!〉
〈俺、もう連絡してるぞ!〉
〈はやっ!〉
そんな感じで、『閃光』ギルドに問い合わせる人が殺到していることに、俺は気づかなかった。
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