第40話 底辺配信者、ギルド対抗戦に参加する。1

 2階層のフロアボスを倒した俺たちは一度帰還することとなった。


 視聴者へ挨拶を行い、『閃光』ギルドにいる和歌奈さんのもとへ訪れる。


「お疲れー!無事に帰ってきてくれて嬉しいよ!」


 配信を見ていた和歌奈さんが俺たちの帰還を労う。


「裕哉くんのおかげで無事に帰ってこれました」


「まさか2階層のフロアボスが大量のレッドドラゴンとは思いませんでしたよ」


「私もその辺りは予想してなかったなぁ。裕哉くんが居れば大丈夫とは思ってたけど!」


 相変わらず、和歌奈さんからの評価が高い俺。


「みんなのおかげでダンジョンからモンスターが溢れる心配は今のところ無くなったよ!私の依頼を引き受けてくれてありがとう!」


「いえ、ダンジョンからモンスターが溢れると、この街に住んでる人たちも危険に晒されます。それを防ぐことができて良かったです」


 俺たちは愛菜さんの返事に頷く。


「で、連携の方はどうだった!?配信を見てる限りだと良さそうだったけど!?」


「そうですね。俺はギクシャクすることなく連携できたと思います」


「アタシらも連携ミスなくできたと思います。試したフォーメーションは2つでしたが、主なフォーメーションはこの2つになると思いますので、この2つのフォーメーションでレッドドラゴンを倒せたことは大きな自信になります」


「うんうん!それなら良かったよ!」


 俺たちの返答にご満悦の和歌奈さん。


「ギルド対抗戦まで残り1ヶ月を切ったからね!ここからは個々の技量よりもチームワークの向上が必須!そこで、私からお願い……というより命令があります!」


(またかよ。命令多いなぁ)


「そこ!うるさいよ!裕哉くん!」


「俺、一言も喋ってないんだけど!」


 口を開いてないのにうるさい認定される。


「喋ってないけど、さっき『また命令かよ』みたいなこと思ったでしょ!」


「………いえ」


“ベシっ!”


「痛っ!何で頭を叩くんですか!」


「なんでもないよ!私が理由なく他人の頭を叩くギルドマスターってだけだよ!」


「タチ悪っ!」


「自覚してる分、より一層タチが悪いわね」


「ギルドマスターがやったらダメだろ」


 千春さんと愛菜さんの言葉に激しく同意したい。


「こほんっ!とにかく、私から1つ命令を言い渡す!」


 俺たちのツッコミを華麗にスルーした和歌奈さんが言葉を続ける。


「これからダンジョンに潜る際は誰かと一緒に潜ること!1人で潜ることは許さないよ!」


「あ、命令ってそれのことですか。またとんでもない命令をされるのかと思いました」


「私はいつでも常識ある人だからね!とんでもない命令なんてするわけないよ!」


「どの口が言ってんだか」


 本気で言ってるなら一度、病院に行ったほうがいいと思う。


 すると、俺の言葉に和歌奈さんの言動を全て肯定する美柑が反応する。


「裕哉!なんてことを言ってるの!お姉様は常識のある人よ!」


「うんうん!さすが美柑ちゃん!私のことわかってるね!」


「はい!お姉様の事なら何でも知ってますので!それこそお姉様のスリーサイズまで私は知ってます!」


「私のスリーサイズは知らなくていいんだよ!?」


(どうやって和歌奈さんのスリーサイズを知ったんだよ。逆に気になるわ)


 知ったところで実行なんてできないが。


 そんなことを思ってると、和歌奈さんが大きく咳払いをする。


「こほんっ!とにかく、ギルド対抗戦まで残り1ヶ月を切ったからね!残りの期間は個々の技術向上よりもチームワーク向上が大事!だから1人で探索せず、誰かと一緒に探索するように!」


「はい!お姉様!」


 そんな感じで、ギルド対抗戦までダンジョンに潜る際は誰かと一緒に潜ることとなった。




 その後、ギルド対抗戦までは和歌奈さんの命令に従い、ダンジョンに潜る際は誰かと潜るようにする。


 そのおかげで愛菜さんや千春さん、美柑や芽吹ちゃんとの連携をより一層深めることができ、万全の状態でギルド対抗戦の当日を迎える。


 俺たちはギルド対抗戦の会場となるダンジョンに向かう前に『閃光』ギルドへ訪れる。


 そこにはたくさんのギルドメンバーがおり、ギルド対抗戦に出場する俺たちにエールを送ってくれる。


「ついにギルド対抗戦の日がやってきたよ!みんな準備はいいね!?」


「はい!万全です!」


 和歌奈さんの質問に愛菜さんが代表して返答する。


「よしっ!去年は『牙狼』ギルドに負けて2位だったからね!今年こそは優勝するよ!」


 周りが「おー!」と盛り上がる。


(和歌奈さんは今回のギルド対抗戦で優勝するために俺を女の子しかいない『閃光』ギルドに加入させたんだ。俺に期待してるってことだろうから、その期待には応えたい!)


 そう決意する。


「じゃあ、ギルド対抗戦の会場に出発するよ!」


 俺たちは『閃光』ギルドのメンバーからエールをもらい、ギルド対抗戦の会場を目指した。

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