第39話 底辺配信者、5人で探索をする。6

「よしっ!フォーメーションX開始っ!」


 愛菜さんの言葉がダンジョン内に響き渡る。


〈おい、フォーメーションXだってよ。何だと思う?〉


〈ある程度予測はできている。どんな感じで戦ってくれるか非常に楽しみだ〉


 俺はみんなとトカゲの間に立ち、トカゲたちを捉える。


「ここから先は遠慮なく行くぞ」


 そしてトカゲたちに戦線布告をする。


「アタシらは壁際まで後退し、芽吹ちゃんを守るように陣形を組むぞ」


「わかりました!」


「えぇ!」


 チラッと後方を確認すると、愛菜さんたちがフォーメーションXの陣形を組んでいる。


 その様子を確認して、再びトカゲたちに視線を戻す。


「よし、やるか。フォーメーションX!」


 そう呟き、俺は上空にいるトカゲの位置までジャンプする。


「「「グォっ!?」」」


 70メートルほど上空にいたトカゲたちの目の前に一瞬でジャンプした俺は、突然現れた俺に驚いているトカゲに攻撃を仕掛ける。


「まずは3体!」


 俺は左右にいるトカゲと目の前にいるトカゲ目掛けて斬撃を飛ばす。


「「「グォォォ……」」」


 弱点である顔から斬撃を喰らったトカゲ3体が落下しつつ魔石となる。


〈はやっ!全然見えなかったんだけど!〉


〈あっという間に3体もレッドドラゴンを討伐しとるし!〉


〈まだ油断はできないが勝てるぞ!がんばれ裕哉!〉


 3体のトカゲを空中で倒した俺は重力に逆らわず、落下する。


 そんな俺を見て好機と思ったのか、2体のトカゲが左右から突っ込んでくる。


〈ヤベェ!挟み撃ちだ!〉


〈挟み撃ちだから片方しか瞬殺できねぇぞ!しかも、空中だから逃げ場はねぇし!〉


〈裕哉!何とかしろー!〉


「ありがてぇ。自ら殺されに来てくれるなんて」


 トカゲが殺されることを希望してるらしいので、要望通り、右から突っ込んでくるトカゲに斬撃を放ち、その後180°回転して左から突っ込んでくるトカゲを一刀両断する。


「「グォ…ォォ……」」


 そして新たに2つの魔石が落下する。


〈いや、空中で有り得ん動きをしてるんだが!?〉


〈左右から突っ込んで来るドラゴンに対して、まず右のドラゴンを瞬殺し、その後、空中で180°回転して左のドラゴンを瞬殺する……おかしいだろっ!〉


〈落下しながら180°回転するのは可能だろうが、裕哉のヤツ、一瞬で180°も回転してたぞ?そんなことできるのか?〉


〈普通はできねぇなww〉


 魔石が地面に落ちると同時に俺も地面に着地する。


「おいおい。いつの間にかトカゲが3体しかいなくなったぞ?増殖したりできねぇのか?」


〈できねぇよww〉


〈レッドドラゴンが増殖したら世界が滅ぶわww〉


〈てか、数秒で5体のレッドドラゴンが魔石となったんだが〉


〈裕哉強すぎww〉


 俺の挑発に「「「オォォォォっ!」」」と咆哮して応える。


 そして2体のトカゲが突っ込んでくる。


 一際大きなトカゲは未だに吼えるだけで高みの見物をしている。


「学習せんなぁ」


 そんなことを思いながら作業のように剣を振って斬撃を放つ。


「「グォ……ォォ……」」


 俺が突っ込んでくるトカゲ2体を瞬殺した瞬間、一際大きなトカゲが突っ込んでくる。


 俺ではなく愛菜さんの方へ。


 どうやら俺が2体のトカゲを相手している間に愛菜さんたちを狙ったようだ。


「来たぞ!芽吹!」


「準備万端です!エクスプロージョンっ!」


 芽吹ちゃんの魔法がトカゲの顔面にクリンヒットし、“ドゴっ!”という大きな音がする。


「サポートするわ!」


「私もサポートします!」


 そしてドラゴンに攻撃が当たった瞬間、千春さんと美柑がサポートし、火力を増大させる。


「グォォォォォっ!」


 それにより、突っ込んでいたトカゲのスピードが落ちる。


 しかし、芽吹ちゃんの魔法だけでは倒し切ることができず、トカゲは前衛を務めている愛菜さんへ攻撃を仕掛ける。


「皆さん、ナイスです」


 芽吹ちゃんたちのおかげで一際大きなトカゲに追いつくことができた俺は、横からトカゲの首を一刀両断する。


“シュパッ!”


「グォ…ォォ……」


 俺の斬撃を喰らったトカゲは愛菜さんへ攻撃することなく消滅する。


〈おぉ!全てのドラゴンを倒したぞ!〉


〈やっぱり裕哉って化け物だろ〉


〈マジで何をしたらこんな異次元な強さをゲットしたのか気になるわ〉


〈ホントそれww〉


 俺は一際大きなトカゲが消滅したのを確認して、愛菜さんたちへ話しかける。


「すみません、俺が不甲斐ないせいで皆さんの手を借りてしまいました。フォーメーションXの初陣としては情けない限りです」


「そんなことないぞ。完璧なフォーメーションX……いや、裕哉くん無双だった」


「えぇ、裕哉さんが頑張ってくれたおかげで私たちは無事なんだから」


「そうね。それにフォーメーションXは裕哉に丸投げしてる感を半端なく感じてたから、最後に少しだけ役に立てて良かったわ」


「裕哉先輩、ありがとうございます!」


「そうか。完璧なフォーメーションXなら良かったよ」


「あぁ。もし、次もフォーメーションXの指示を出した時は今回のように頼むぞ」


「はい!次は皆さんの手を借りずとも全てのモンスターを俺が倒してみせます!」


 フォーメーションX……つまり『俺が全てのモンスターを倒す』という指示が次に出た時は、今回以上に頑張ろうと思った。

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