第37話 底辺配信者、5人で探索をする。4
俺は女装をすることなくダンジョン探索をする。
「というわけで、今から2階に降りる。フォーメーションや連携に関してはアタシが指示を出すから、指示が出た際は昨日伝えた通りに動くように」
愛菜さんの発言に俺たちは真剣な表情で頷く。
「よし。じゃあ行くぞ」
愛菜さんの声かけで俺たちは階段を降りる。
すると「ガァァァァァァッ!!」という咆哮が聞こえてくる。
「っ!今の咆哮は!」
「あぁ。レッドドラゴンだろう」
今までトカゲと出会ったことのない美柑が咆哮を聞いて驚く。
「最初はビックリするとは思うが徐々に慣れてくれ」
「わ、わかりました」
美柑は愛菜さんに返事をするが、動きにぎこちなさを感じる。
そんな美柑を安心させるため、俺は美柑に話しかける。
「大丈夫だ、美柑。みんなはレッドドラゴンと言って騒いでいるが、この声はレッドドラゴンじゃない」
「え、そうなの!?それならめっちゃ嬉しいんだけど!」
「あぁ。あれは『空飛ぶトカゲ』だ」
「………裕哉の言葉を信じた私がバカだったわ」
そんなことを呟く。
〈美柑ちゃん、遊ばれてるなぁ〉
〈いや、あれは裕哉なりのジョークだろう。ガチガチに緊張してる美柑ちゃんに笑顔を届けたかったんだよ〉
〈アイツにそんなテクニックはないww〉
〈本気で思ってることを伝えただけだよww〉
そんな会話を美柑としていると「っ!来るぞ!」という緊迫した声で愛菜さんが叫ぶ。
その声を聞いて、俺たちは戦闘準備へ移る。
「敵は一体!フォーメーションAで行くぞ!」
「えぇ!」
「はい!」
俺たちは愛菜さんに返事をして、正面から突っ込んでくるトカゲを視認する。
フォーメーションAを一言で言えば、俺がモンスターのヘイトを集め、モンスターの攻撃が俺に集中するよう仕向けさせる。
その間、芽吹ちゃんが特大魔法の準備を行い、美柑と千春さんが俺のサポート、愛菜さんが指示を出しつつ芽吹ちゃんを護衛する形となっている。
俺は愛菜さんの指示通り、トカゲの突進を防ぐ。
“ドゴっ!”という大きな音とともに足元の地面が割れるが、俺は剣一本でトカゲの突進を防ぎきる。
「グォっ!?」
すると、トカゲから驚きの声が聞こえてくる。
「おいおい、お前の突進はこんなもんか?これじゃ、俺たちの連携練習にならねぇぞ」
そしてヘイトを集めるため、しっかりと挑発していく。
〈ヤバすぎてww。あの突進を剣一本で防いでるんだがww〉
〈もはや鉄壁の壁だろww〉
〈てか、裕哉の奴、律儀に愛菜さんの指示守ってるの可愛いな〉
〈アイツなら突進してくるドラゴンを一撃で倒せるのにww〉
俺の挑発が効いたのか、一目でお怒りなのがわかる。
「おー、怒ってんなぁ。怒りすぎると血管切れるぞー」
〈そんな心配はせんでいいww〉
〈てか、ブチギレしてるドラゴン見てその感想は間違ってるww〉
〈わー!トカゲさん、めっちゃ怒ってるよ!あれ以上怒ったら進化するんじゃないかな!?〉
〈美月の言う通り。あれ以上怒ると進化しそう〉
〈ってことはお兄ちゃんがもっと怒らせると、トカゲさんの進化が見られるかもしれないんだね!〉
〈おそらくは。ちなみに蛇はトカゲが進化して生まれたと研究者たちが言ってるから、進化するならあのトカゲは蛇に進化するはず〉
〈そんなわけねぇだろww〉
〈むしろ退化してるわww〉
〈ドラゴンが持ってる翼と鉤爪を削ぎ落とすことになるからなww。逆に弱くなってるわww〉
〈てか、蛇ってトカゲが進化して生まれたんだ。知らんかった〉
〈それww。なんか豆知識が増えたんだがww〉
見るからに怒っているトカゲは俺を殺そうと追撃を仕掛ける。
しかし、雑魚モンスターの攻撃が通用するはずないので、俺は剣一本でなんなく防ぐ。
その間、千春さんがバフをかけ、美柑が弓でトカゲを攻撃する。
「硬すぎ!私の攻撃、効いてなさそう!」
美柑が弓で攻撃しつつ嘆く。
「大丈夫だ!美柑の攻撃は確実にドラゴンへダメージを与えてる!この調子で攻撃を続けてくれ!」
「わかりました!」
愛菜さんが美柑に声をかける。
その後、俺がトカゲを引きつけて愛菜さんたちに攻撃しないよう注意を払っていると…
「10秒後に芽吹が魔法を放つ!各自注意しろ!」
との言葉が聞こえてくる。
愛菜さんの声かけで俺は心の中で10秒数える。
そして10秒後。
「エクスプロージョンっ!」
芽吹ちゃんが特大魔法を放つ。
放たれた魔法は“ドンっ!”という大きな爆発音や熱風とともにトカゲの弱点である顔面にヒットする。
「グァァァァァァっ!」
断末魔を上げるトカゲが燃え盛る。
しかし、その攻撃でトカゲを殺すことはできず、いまだに燃え盛りつつも俺たちに攻撃を仕掛けようとする。
「千春!美柑!芽吹の魔法を援護だ!」
「えぇ!」
「わかりました!」
愛菜さんの指示を受けた2人が風魔法等で燃え盛る炎の勢いを上げる。
すると「グァァァっ!」と先程よりも大きな断末魔をあげながらトカゲが地面に倒れ、魔石となる。
「ふぅ。終わったな」
「えぇ、作戦通りね」
無事に戦闘が終わり、愛菜さんたち4人がホッと息をつく。
5人での初戦闘は無事、大勝利で終えることができた。
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