第29話 底辺配信者、芽吹ちゃんとダンジョンデートをする。2
「こんな感じで投げれば石ころも立派な遠距離攻撃の手段になるからだ。これなら石ころを生成するだけですぐに攻撃できる。どうだ?参考になったか?」
「………」
〈〈〈〈参考になるかぁぁぁ!!!〉〉〉〉
視聴者がそんなことを言っている。
〈石ころを投げてミノタウロスの頭を消し飛ばせるわけないだろ!〉
〈そんなんできる奴はお前だけで芽吹ちゃんにできねぇよ!〉
「え、そうなのか?」
俺は視聴者のコメントを見て芽吹ちゃんに聞く。
「そ、そうですね。ウチにはできそうにないです」
「なんで………あ、もしかして魔法使いだから身体強化が苦手とか?」
「身体強化が得意不得意の問題ではないような気がしますが、ウチは身体強化が得意ではないので、石ころでミノタウロスにダメージを与えることはできません」
「そうか。芽吹ちゃんの力になりたかったんだが、力になれず申し訳ない」
俺は身体強化の魔法しか使えないため、芽吹ちゃんの力になれず、申し訳なさが現れる。
すると、「落ち込まないでください!」との言葉が聞こえてくる。
「裕哉先輩は身体強化が上手くなれば石ころでもミノタウロスを倒すことができるということを教えてくれました!すなわち、ウチも裕哉先輩くらい身体強化の魔法が上手になればミノタウロスを石ころで倒せるということです!だから先輩のアドバイスは無駄じゃありません!」
「芽吹ちゃん……」
年下である芽吹ちゃんの心温まるフォローに感動する。
〈芽吹ちゃん、めっちゃ良い子やん〉
〈良いアドバイスができず落ち込んでる先輩を励ますなんて。本当に19歳か?〉
〈あの巨乳から考えて20歳は超えてるだろう〉
〈あの大きさで19歳はヤベェ。きっと年齢を偽ってるな〉
〈そのやり取り、さっきやったわww〉
〈だから19歳って公表されてるだろww〉
芽吹ちゃんのフォローにより立ち直った俺は、芽吹ちゃんに話しかける。
「身体強化の魔法なら俺でも教えれるかもしれない。何かあれば遠慮なく相談してくれ。少しでも芽吹ちゃんを助けたいからな」
「はいっ!ありがとうございます!」
芽吹ちゃんが笑顔で答えてくれる。
〈はい、可愛い〉
〈この笑顔だけで癒される〉
〈カメラ越しに見る笑顔でこの破壊力だ。間近で芽吹ちゃんの笑顔を見たら告白してるわ〉
〈俺なら押し倒してあの巨乳を揉みまくってるな〉
〈通報しました〉
〈冗談です。揉んだりしません。ソフトタッチするだけです〉
〈それもアウトだよww〉
俺は芽吹ちゃんの眩しい笑顔を見て…
(くっ!可愛いっ!持ち帰って美月と交換したい!)
美月も10人中10人が二度見するであろう容姿を持っているが、兄を丁重に扱うことを一切しないため、芽吹ちゃんと交換したくなる。
しかし、そんな変態行為を行うわけにはいかないのでグッと我慢する。
そんなことを思っていると、またしても数100メートル先に牛が現れる。
「じゃあ、今度はウチの実力を裕哉先輩に見せたいと思います!」
そう言って杖を構える芽吹ちゃん。
「ミノタウロスが気づいていないならウチの出番です!奇襲攻撃は得意なので!」
そして何やら呪文のようなものを唱え始める。
魔法を放つ前に詠唱を唱えることは魔法を使う上での基本とされている。
もちろん、実力のある冒険者は無詠唱で魔法を放つことができるが、実力のある冒険者でも無詠唱は、簡単な魔法や補助的に使う時しか無詠唱で魔法を使えない。
そのため、強力な魔法を放つとなれば詠唱が必須となり、仲間がいなければ、魔法使いは安全に探索することが難しくなる。
ちなみに、俺の身体強化の魔法や美柑が矢に火を纏う程度の魔法なら詠唱の必要はない。
詠唱が進むにつれ、芽吹ちゃんが持っている杖の先から黒い炎が出現し、徐々に大きくなる。
〈でたーっ!芽吹ちゃんの最強魔法っ!この魔法が使える冒険者って日本じゃ芽吹ちゃんしかいないらしいぞ!〉
〈あんなの喰らったら一瞬で燃え盛るわ〉
〈天才やら年齢詐欺とか言われるのに納得してしまう〉
〈相変わらず可愛い顔して使う魔法は半端ないな!〉
かなり危険な魔法を放つ気配を感じるが、未だに牛は俺たちに気づいていない。
すると、詠唱も終盤に差し掛かったようで芽吹ちゃんが「黒き炎よ、穿てっ!」という言葉とともに杖先を牛に向ける。
「エクスプロージョンっ!」
その掛け声とともに放たれた魔法が“ドンっ!”という大きな爆発音や熱風とともに牛にヒットする。
「グァァァァァァっ!」
断末魔を上げる牛が燃え盛る。
「おぉ。牛が焼けよるわ」
そんな感想を抱く。
〈いや、焼けるというより燃えとるわ〉
〈燃え盛ってる炎が見えんのかww〉
〈真っ黒になるレベルで燃えてるからww。ウェルダンよりも焼けてるからww〉
しばらく牛を眺めていると、牛の断末魔が消え、魔石がドロップする。
「ふぅ。こんな感じですね」
「おぉ!素晴らしい魔法だな!」
俺は手放しで褒める。
「あ、ありがとうございます。裕哉先輩が近くにいてくれたおかげで詠唱に集中できました」
照れくさそうに俺の褒め言葉を受け取る芽吹ちゃん。
〈すげぇの一言だな〉
〈いつ見てもすごい攻撃だ。これで19歳なんだから末恐ろしいわ〉
〈しかも芽吹ちゃんはこの魔法を連発できるからな。爆裂魔法を一発撃って動けなくなる女の子とは違うな〉
〈それは『この⚪︎ば』のめぐみんww〉
〈この世界にいないからww〉
「こんな感じで詠唱に時間がかかりますがミノタウロスを一撃で倒す実力は持ってます。ですがウチは誰かに守られないと強力な魔法を使えません。こんなウチですが、ギルド対抗戦では先輩たちの足を引っ張らないよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします!」
芽吹ちゃんが頭を下げる。
「芽吹ちゃんを守るくらいならどーってことない!だから、対抗戦では芽吹ちゃんの魔法、頼りにしてるぞ!」
「はいっ!」
その後、芽吹ちゃんが披露する様々な魔法を間近で見ながら80階の探索を終了した。
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