第26話 底辺配信者、美柑とダンジョンデートをする。1

 美月と紗枝に散々遊ばれた翌日。


 俺は神谷さんとダンジョン探索を行うため、いつも俺が1人で探索するダンジョンへ足を運ぶ。


 女装は昨日限りでやめると決めていたため、今日は男性用の服を着てダンジョン探索に臨む。


 待ち合わせ場所に到着するとすでに神谷さんが待っていた。


「ごめん、神谷さん!遅くなった!」


「遅刻はしてないから気にしなくていいわよ。それより、今日は私のチャンネルでダンジョン配信をすることにしてるけど本当にいいの?」


「あぁ。俺は妹と幼馴染が見てくれれば俺のチャンネルじゃなくてもいいからな」


「そう。なら私のチャンネルで配信をするわ」


 そう言って神谷さんがテキパキと準備を行う。


 事前に俺のチャンネルの方で神谷さんのチャンネルでダンジョン配信をすることは伝えてあるので問題ない。


 すると、作業を行いながら神谷さんが話しかけてくる。


「それと私のことは美柑って呼んで。同級生で一緒にギルド対抗戦へ出る仲なんだから他人行儀な呼び方はしなくていいわ」


「そうか。なら美柑と呼ばせてもらうぞ」


「ええ、私も裕哉って呼ぶから」


 美柑から了承をもらい、お互いに名前呼びをすることで、少しだけ仲良くなったように感じる。


「配信の準備ができたから、みんなに挨拶するわよ」


「あぁ、わかった」


 俺たちはカメラの前に立ち、挨拶を行う。


「こんにちはー!今日は美柑チャンネルに来てくれてありがとー!」


〈待ってました!〉


〈美柑ちゃん!今日も可愛いよ!〉


〈美柑ちゃんの配信を見るために仕事休んできた〉


「うんうん!私もみんなと会えて嬉しいよ!」


 どこぞのアイドルが言うようなセリフを連呼し、視聴者に挨拶をする。


(配信する時はこんなテンションなんだ。喋り方やテンションが和歌奈さんに似てるな)


 今の美柑を見ると、和歌奈さんのダンジョン配信を参考にしてると感じる。


「そしてなんと!今日は昨日ギルドメンバーになったお姉様の弟子である中島裕哉と一緒にダンジョン探索をしまーす!」


「ど、どうも。今日はよろしくお願いします」


 俺は美柑の紹介に合わせて挨拶をする。


〈え、知らない男が出てきた〉


〈俺、中島裕哉とか知らんのやけど。誰か知ってる奴いるか?〉


〈俺も知らねぇ。中島裕哉ちゃんなら知ってるが〉


〈それな。こんな男知らんわ〉


〈裕哉ちゃんを出せ!〉


〈そうだそうだ!〉


〈裕哉ちゃん!裕哉ちゃん!〉


「なんで女装してダンジョン探索しなきゃいけねぇんだよ!」


 挨拶した瞬間、知らない男扱いされる。


 そして裕哉ちゃんコールが止まない。


〈そうだそうだー!お兄ちゃんなんかいらない!お姉ちゃんを出せー!〉


〈私のユウちゃんを返して〉


 挙げ句の果てに妹と幼馴染からも女装を求められる。


 アイツらには女装好きじゃないこと説明し、2度と女装なんかしないとまで言ったにも関わらず。


(お前ら俺の説明を聞いて「わかったー!」とか言ってたよな?何をわかったんだよ)


 何も分かっていない2人に頭を抱える。


 すると、美柑が「視聴者の皆さんならそう言うと思ったよ!」と、大きな声をあげる。


 その声を聞き、美柑の方を見る。


 すると、そこには大きなカバンを持った美柑がいた。


「そういうわけだから裕哉、これに着替えてきて!」


「どういうわけか全く分からないんだけど!」


 何となく、何がカバンの中に入っているかは分かるが、分かりたくない。


「ちなみに、お姉様はこのことを予見してたよ!絶対、コレが必要になるって!さすがお姉様だよね!」


「どの辺がさすがなんだよ!」


 俺は大きな声でツッコむ。


 納得のいってない俺はこのまま拒否し続けたいが、女装好きという条件で『閃光』ギルドに入っているので女装好きじゃないことがバレるのはマズイ。


 そのため、渋々着替える。


 美柑や視聴者の前で着替えるわけにはいかないので、近くにあるトイレで着替える。


 そして服を見て思う。


「これ、昨日着てない服だな。絶対、昨日買ってきただろ」


 手際の良さに感服してしまう。


 そんなことを思いつつ女装し、美柑や視聴者の待つカメラに向かう。


〈キターっ!裕哉ちゃん!〉


〈今日も可愛いぞっ!〉


〈お兄ちゃん、めっちゃ似合ってるよww〉


〈ユウちゃんサイコーww〉


「………」


 美月と紗枝には帰ってお仕置きをしようと心に誓う。


「さて、裕哉ちゃんも来たことなので、さっそくダンジョンを探索しまーす!」


 コメント欄が俺の女装で盛り上がっているのを確認しつつ、美柑が話を進める。


「今日は80階を探索し、私の実力を裕哉ちゃんに見せたいと思います!」


〈80階のフロアボスはA級上位のモンスターだから油断はしないようにな〉


〈美柑ちゃんなら大丈夫だとは思うが気をつけてね!〉


「はーい!というわけでレッツゴー!」


 美柑の声かけで俺たちは80階層へ足を踏み入れた。




 80階に到着する。


「今日の目的は裕哉ちゃんに私の実力を見せることだから裕哉ちゃんは見てるだけでいいよ!」


「そうか。なら美柑の動きを見るだけにしておこう」


〈美柑ちゃんのエッチな足ばかり見るなよー〉


〈スカートの中を見たら殺すからな〉


〈美柑ちゃんのAカップ貧乳でムラムラするなよ〉


「しねぇよ!」


「え、Aカップじゃないから!Bはあるから!」


〈おい、美柑ちゃんBカップだってよ〉


〈エッチぃな〉


〈貧乳好きにはたまらんぞ〉


〈エッチぃ〉


〈貧乳はステータスだ〉


「私の視聴者には変態しかいないの!?」


〈〈〈〈その通りだ〉〉〉〉


「認めちゃったし!」


 美柑が大声で叫ぶ。


(美柑も大変だなぁ)


 そんなことを思った。

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