いよいよ、最後の決戦に向けて
第319話 ゴンドワナ サウスポートタウンの攻略が決まる
最前線の基地に飛行場を作り始めて一月が経とうとしていた。
この間、本当に好きなことで時間を過ごすことができたので、作っている飛行場の整備が捗ること捗ること、初めに作った滑走路以外にも関連施設の建設を色々としていた。
だが、流石に地下格納庫の建設ばかりはどうしようもない。
穴の整備だけはさっさと済ませたが、その上にふたをすることができない。
おやっさんや海軍の技術者たちとの協議で、解体中の航空母艦から装甲甲板を持ってくることになっているが、これがものすごく厄介だ。
なにせ、船で運べる場所でないので、ここまで部材を運ぶのには陸路か空路しかないが、重量があるために空路は全く使えない。
また、陸路もその重量が問題となっている。
なのでおやっさんはこの一月の間、建設中の飛行場と海軍基地までの間の輸送路の整備に全力で当たっている。
そう、全力でだ。
ここに回されてきているブルドーザーの内常時8割を補給路整備に充てており、おやっさんも常に現場で監督している。
なので、こちらの方も本当に整備がはかどっている。
少なくともここから連邦近くの町までの道路整備は終わっていおり、これまたすごいことにこの道路が、連邦のどこよりも道幅、耐荷重どれをとっても最高の出来だ。
下手をするとゴンドワナ大陸にある道の中で一番だと言える。
ゴンドワナにある敵占領地も含めてと言っても過言ではなさそうだ。
おやっさん曰く、帝国第一級道路の規格に準拠させているとか。
第一級って、軍用高速道路規格だ。
何を作っているんだ。
まあ、俺はそんなことはお構いなく、飛行場整備をしている。
当初3つある穴全てを地下格納庫にとの意見もあったが、一つ作るのにも大変なのにということもあって、格納庫は一つだけとして、必要に応じて地上にも格納庫を作ることで妥協した。
その代わりに、残り二つには弾薬庫と燃料貯蔵施設を作った。
こちらの方はスロープを作り中に建屋を作ればいいだけで、建屋周りに土塁を作る手間がない分手数がかからない。
ということで、その施設もほぼ出来上がり来週あたりから稼働させると海軍さんは言っていた。
その海軍さんだが、この基地に対する力の入れようが半端ない。
まだ整備中にもかかわらず、どんどん航空機の配備を進め、今では正式稼働時の配備を終えたという話だ。
戦闘機だけで2個大隊、爆撃機が1個中隊、偵察機も2個小隊配備が済んでいる。
それら全てが野ざらしだが、本来前線基地なんかはそんなものだそうだ。
そんな俺に今朝、不吉な知らせが届いた。
皇太子府からの呼び出し状だ。
『次の定期便にて帝都に来い』とのことだ。
さらに最悪なのが、先にも言ったが、ここは既に正規の大規模航空基地になっており、毎日数便の定期便がここと帝都の間を往復している。
そう、俺は半日も待てば帝都行の輸送機を捕まえられる。
さらに最悪なのが、その状況を皇太子府は正確に把握している。
俺がさぼろうものならすぐにでもお叱りの使者が帝都から来れると言うのだ。
本当にここも便利になったもんだ。
所要時間だけを見れば、連邦の首都よりも帝都に近い場所になっている。
「大尉、2時間後の輸送機に手配が付きました。随員は私だけでよかったでしょうか」
「他に誰を連れて行けと言うのだ。俺の気持ち的には俺も置いて行って欲しかったのだが」
「あいにく、大尉は随員ではありませんから無理ですね」
俺の冗談にもアプリコットはすげなく答えた。
夕方には俺たちは帝都郊外にある皇太子府に着いた。
直ぐに大会議室に拉致られ……不敬罪に問われかねないので訂正して、召集を受け、その会議室にて会議中。
しかし、毎度のことでもはや驚かないが、何で俺がこの会議に出席しないといけないんだ。
周りには将官しか、いや、佐官もいるが、どう見てもあの佐官は参謀肩章を付けているから普通の佐官では無いし、うちからはサクラ閣下も俺の隣で参加している。
普通なら、サクラ閣下も幕僚として参謀もいるので、参謀を連れてくればよさそうなのに、こういう時には決まってレイラ大佐を後ろに控えさせている。
そう後ろにだ。
それなのになんで俺がサクラ閣下の隣に座らされているのだ。
絶対に席次がおかしい。
会議はどうせ俺なんかが聞いても分からないだろうと、たかをくくっていたら、とんでもないことを話し合っている。
いよいよゴンドワナ大陸最南端にある敵補給港『ゴンドワナ・サウス・ポートタウン』の攻略に乗り出すらしい。
殿下はあくまでもゴンドワナのことはゴンドワナの人に任せたいらしく、今度の攻略も海軍の発案だったこともあって帝国陸軍には一切加わらせるつもりはないらしい。
主力を帝国海軍と、サクラ閣下率いるゴンドワナに展開中のサクラ軍団、それに連邦軍だけで落とそうと言うのだ。
そう簡単に敵基地が落とせるのなら、誰かがとっくにやっているよと俺は云いたかったが、そんなことを殿下や並み居る提督たちの前で言える筈も無く、黙って聞いている。
ここまで来れば俺も覚悟を決める。
俺が呼ばれたのは最悪の貧乏くじを俺にという話だろう。
まあ俺は一度死んだ身だ(たぶん)。
諦めもつくが、アプリコットやジーナのような若い、しかも女性が散らして良い命ではない。
そんな無駄をするくらいなら俺にくれ……違った、他にやりようがあるだろうとは思うが、組織の決定には組織にいるならば従わないといけない。
戦力が出そろったところで、今度は作戦の話だ。
普通は作戦があって戦力を準備するのだろう。
しかし、今回は殿下の政治的野心の関係もあって、陸軍から戦力を望めない以上やむを得ない。
いくつかの案が出て来たところで、殿下から俺に話を振ってきた。
俺がどう考えているか正直に話せと言うのだ。
海軍は全面協力する前提ならばできない話ではない。
少ない兵力での制圧ならば、奇襲以外には無い。
「夜間に海上移動して、強襲後、日の出とともに空挺団の降下、降下した部隊と陸戦隊とが協力して町の入り口を押さえて、味方の地上軍を町に入れるしか手はないかと思います。 奇襲以外に、私には思いつきません」
「確かに奇襲は良き考えかと。流石です、知恵の英雄と云われるだけありますね」
え??
何、その称号。
聞いたこと無いよ。
参謀憲章の付いた、階級章を見たら大佐の階級だ。
多分今回の作戦立案の責任者のとんでもない評価を頂いたが、あんなんで良いんか。
その後は、俺の奇襲案を作戦に落とし込む話し合いが持たれた。
その結果、作戦名『黄昏の狼』が立案され、直ぐに準備にかかる。
次の新月の夜に実施が決まった。
作戦の内容は次の通りだ。
まず、潜水艦にて陸戦隊1個大隊と俺の率いる2個中隊が深夜に目的地付近の浜に強襲する。
深夜の強襲なんか無理かと思ったが、これには海軍さんの方で案があるらしい。
なんでも海軍陸戦隊特殊部隊に『霞』と云うのがあって、これが潜入作戦に特化した部隊だそうだ。
彼ら『霞』が日中にあらかじめ敵地に潜入後、夜間あたりが暗くなっての作戦開始時間にライトで合図を送ることになる。
強襲部隊はその合図に向かって強襲を敢行するのだそうだ。
素人の俺までそんな危ない作戦に投入しなくても良さそうだが、発案者の権利だとか言っていた。
なんでも一番槍の栄誉を受けよというのだ。
そんなの要らないよ。
だが、流石に俺のところから出ても実戦に連れて行けそうなのがお借りしている陸戦中隊とメーリカさん率いる中隊だけで、そこはサクラ閣下も弁えており、その2個中隊を率いて作戦の口火を切ると言うのだ。
上陸後に速やかに海岸から離れて、海岸に展開している砲兵陣地の無力化と、日の出と同時にやって来る空挺団の受け入れの準備を行うと言うのが作戦の骨子だ。
最後まで俺はその話し合いに付き合わされて、翌日には分厚い作戦要領書を渡され元居た基地に戻された。
戻ってさっさと準備を始めよというのだ。
正直、勘弁してほしいが、上からの命令なのだから俺には選択肢がない。
だが、アプリコットはなぜかしら張り切っているのが気になる。
なんでなんだ?
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