ジャングルに再び
第207話 謹慎?解除
その日は遅くにやっと開放された。
「本当に疲れましたね。結局何がしたかったのでしょうか」
「アンリさん。口が過ぎるのでは」
「大丈夫だよ。批難には当たらないし、第一アンリさんが軍人じゃないからね。それにしても、アンリさんの疑問は尤もだ。俺でもそう思うよ」
「私には閣下のお考えがわかるような気がします」
「マーリン、それってどういうことなの」
「中尉の常識はずれの行動で、溜まったストレスの吐き出し先を求めていたのでしょう。これ以上、中尉に好き勝手やられると、帝国すら無くなるんじゃないかと危惧して、とにかく中尉に自重を求めたのでしょう。私だって同じように思うことは度々ですし、閣下ともなれば帝国のお歴々からの圧力はいかほどかと、尋問だけは避けたいですが、ある意味納得している自分がいます」
「マーリンさん、それって酷くないですかね」
「う~~む。確かにマーリンの言うことにも一理あるわね。でも面白そうだし、私はこのままでもいいかなと思うわよ。さすがに先の騒動の時には私にもとばっちりが来て、本当に大変だったけど。そうよね、あのようなことが四六時中だったら納得するしかないわね」
「で、中尉。明日からはどうするのですか」
「一応、謹慎が解けたことになるのだよね。それだと、ジャングル探査の仕事に戻らないと命令無視になりかねないよね」
「あそこをやりかけでですか」
「そうだよね。いきなり直ぐに新兵全員を連れてのジャングル探査もできないだろうし、これは手分けしてあそこはそのまま工事を続けるとして、一部、そうだな、訓練を兼ねて半数を連れて近場を回ろうか。あちらのアンリ少尉も借りることが出来るのだよね。サリーちゃんと同じように、だったら彼女を連れてきちんと周りを調査してみようかと思っているよ。地勢調査も兼ねてね」
「わかりました。明日、一番で申請書類などを出しておきます。計画の方は中尉の方で作成をお願いしますよ」
「ジーナを借りてもいいかな」
「そうですね、それがいいでしょう」
グラス中隊は謹慎のような待機任務を解かれ、通常任務に復帰した。
アプリコットは朝から書類を持って師団本部の司令部に行き色々と手続きをしていく。
グラスの方はローテーションを組んで、ここと探査に分けて訓練を兼ねた付近の地勢調査に出る準備をしていた。
そこに、サカイ中佐が訪ねてきた。
コンコン、ドアをノックして、「いるかな」
「はい、どうぞ。あ、サカイ中佐でしたか。今日はどうしましたか」
「またお願いをしに来た」
「は?お願いとは何ですか」
「お前のところに出している新兵をそのままもうしばらく面倒を見てくれないかな。お前に預けると、本当に驚く程早く兵士の教育が終わるんだよな。あの新兵たちもあと少しで、普通の兵士として計算できるまでになりそうだし、このまま引き上げるのはちょっともったいないかなと」
「え、俺たち、明日辺りから2つに分けて半数はジャングルに入りますよ。預かっているのはこちらで作業を続けさせるのですか」
「いや、お前のところと同じに扱って欲しいな。半数はお前についてジャングルに連れて行っても欲しい。残りはここで作業させるから」
「え、それでいいのですか。あまり大したことはできそうにないのですが」
「お前ばかりに教育の手間をかけさせて申し訳ない。そこで、ジャングルにはうちから前にお前たちに同行したサーシャを始め、あの小隊もつけるからよろしく頼むわ」
「え、いいんですか。サーシャ少尉だけじゃなく、あの皆さんもですか。皆さんお忙しいのに、本当にいいのですか。うちとしては助かりますが」
「それでいい。それを入れての計画にしておいてくれ。それ以外でも資材とか車とかでうちでできる協力はなんでもするから」
「は、ありがとうございます。では、明日からということで計画も出しておきます」
「よろしく頼むよ」
そう言うとサカイ中佐は嬉しそうに戻っていった。
横で聞いていたジーナが心配そうに、
「隊長、いいんでしょうか。また、バラ連隊と合同の作戦で」
「ジーナ、なにか心配でもあるのか」
「いえ、ただ、あの精鋭とうちに新兵たちとの合同の作戦って、なんだか非常に贅沢なような気がして」
「向こうの新兵も預かるんだ。一緒だよ。それに近場の地勢調査だ。この前のようなことにはならないよ。多分」
「隊長。最後に『多分』を付けるのを止めてもらえないでしょうか。かえって心配になってきます」と言いながら、ジーナは司令部に出す計画書を作りこんでいた。
翌日は、サカイ中佐のところの新兵はいつものように集まってきたが、今日だけはそれ以外にもサーシャ少尉が率いるスペシャルチームも同行してきた。
グラスはサーシャ少尉にサカイ中佐のところの新兵を2つに分けてもらい、半数を今日一日はここの敷地内で教練させた。
幸い無駄に広い敷地の中央付近は手つかずのジャングルが残ってる。
教練にはもってこいの場所だ。
グラスとサーシャは名簿が出来次第、それを持って連隊司令部に向かった。
「グラス中尉、ここのジャングルって教練にはもってこいじゃないですか。半分位は残しておきませんか」
「すぐに全部の開墾は無理だから、しばらくは残るよ。もしかして、俺のここでの任期中には開墾は終わらないかも。多分、終わらないだろうな」
「それもそうですね」
などと軽口を叩きながら司令部に向かった。
連隊本部では、サカイ中佐の承認をもらって、連隊としての計画書も作りあげた。
グラスとしては、面倒な書類仕事を終えたつもりで居留地の自分の場所に戻ろうかとしたところでサカイ中佐に捕まった。
「アプリコットも連れて師団本部に向かうぞ」
「アプリコットなら師団本部に居るはずですよ」
「それは良かった」とサカイ中佐が言うとすぐに電話の受話器を取り上げて電話をかけていた。
アプリコットと行き違いにならないように足止めを頼んだようだ。
グラスはサーシャと一緒にサカイ中佐に連れられ、師団本部に向かった。
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