第195話 街つくり

 翌朝になって俺は中隊全員を中央広場前に集めた。

「昨日帰ったばかりの者も、この基地に残って仕事をしていた者もいるので疲れが残っていることだろう。なので手短に話をさせてくれ。既に聞いている者もいるかもしれないが、俺ら探索組は共和国の亡命希望者を18名保護してこの基地に帰ってきた。早速バラ連隊長から保護した亡命希望者の面倒を見て欲しいと依頼を受けている。なので、このあと直ぐに基地から出てすぐの場所に宿営地を造ることにした。我々にとってなれた作業だが、怪我のないように作業をしてくれ。後の指示は各々小隊長から聞いてくれ。俺からは以上だ」

「中尉、それだけでよろしいのでしょうか」

「なに、構わんよ。どうせいつも現場で指示を出しての作業だしな。今回も出たとこ勝負だ」

「場所はどこになります」

「それをこれから俺らが探すのさ。基本は整備中の連絡道路沿いだ。手間を省くには木の少ない場所を選ぶのだが、基地との関係もあり、木の少ない場所よりも基地から近い場所で平たいところを選ぶしかないな。開墾するくらいの時間はもらえるだろう」

「そうですね、彼女たちの健康のチェックもまだですし、それが済まないと宿営地での生活をさせるのにも不安が出ますしね」

「今後は基本アンリ外交官のお考え次第だな」

「では、彼女がこちらに到着するまでの午前中に最低でも宿営地を決めておきたいですね。でないと彼女からとんでもない場所を指定されても我々には反対できなくなりますからね」

「そういうことだ。俺らだけでもすぐに出るぞ。各小隊長は機材の準備を整えてから追いかけて来てくれ」

「「「は、了解しました」」」

「では解散」

 俺は毎度のようにアプリコットやメーリカ達を連れて基地を出て整備中の道路を走っている。

 ここはアンリ外交官の我儘?のせいで電話線の設置を行うために切り開かれたようなものだ。

 どうせなら補給路の整備を兼ねてしまえと俺が言い出し電話線の設置と一緒に整備を始めた道を、後になってバラ連隊のサカイ連隊長が受けて大々的に整備をしており、既にほとんど完成をしている。

 基地を出てから車で3分ばかりの場所でちょっとした資材置き場のような場所を見つけた。

 ここは一番最初に資材置き場として俺らが切り開いた場所だ。

 あまりに基地に近く休憩場所としての意味もなさないので現在は放置されていた。

 この場所の奥のジャングルも以前から村が近くにあったために色々と開墾が楽そうに見えた。

 平地としてもある程度の広さを見込めた。

 どうせ18名分の宿営地を作るのならいちいち開墾せずにこの資材置き場だけでも十分の広さはあったが、この先何があるかわからないし、俺らもここに駐屯するようであることから、付近の木を伐採してここに宿営地を造ることにした。

「あそこの資材置き場のような空き地に車を入れてくれ」

「あそこですか。あ、私覚えていますよ。確か最初に資材置き場としてあそこだけ広く木を切り出して整備したところですよね。あそこまでしなくてもいいのに隊長が張り切って駐車場のように整地までしていたのを呆れていましたから覚えています」

「呆れるのは余計だが、あそこにしよう。あそこから奥に開墾していき、そこにも訓練施設も作ろう。十分な広さも取れるだろう」

 車を止めて開けた場所の広さを確認したら、俺は数人を連れて奥のジャングルの中に入っていった。

「隊長、このあとどうするのですか」

 車のそばからジーナが大声で聞いてきた。

「とりあえず全員が揃うまでその場で待機な。揃ったら俺らの営舎作りから始めるよ」

 横で聞いていたメーリカさんが「その後は風呂ですかね」

「よ、わかっているんじゃないか。風呂と上下水道の整備、それから亡命希望者のための施設かな。そこまで準備しても今週中には終わるんじゃないかな」

「その後のご予定は」

「さ~俺にもわからないな。待機任務になっているようだけれども、実質謹慎処分のようなものらしい」

「は~~~、やはりそうですか。ではそのうちに帝都に呼び出しもありそうですね」

「それはわからん、どうせ俺らには選択権はないからね。うちのお偉いさんに任せるよ」

「で、隊長はここをどうしたいのですか」

「そうだな、とりあえず2km四方は木を切り倒して周りを壁で囲みたいかな。そうすればこの中で安心して農作業もできるしな。保護した彼女たちも、何もしないわけにはいかないだろう。とりあえずそれらしいことをさせておけば周りに言い訳もできるから、営舎まで準備できたら農地を作って真似事をさせておくよ。周りを囲んでおけば捕虜としても亡命者としてもどちらとも取れるから上としてもその方が扱いやすいだろう。それにまだ、彼女たちの扱いは決まっていないようだし、うちの政府ではイレギュラーの処理には本当に時間がかかるから、しばらくここに居ることになると思うからね。ならば、ここを少しでも過ごしやすい環境にしたいじゃないか。あ、俺らの扱いはわからんよ。すぐに転戦もありうるからあまり期待しないでね」

「わかっていますよ。それも隊長の呼び出しの後になるでしょうから、すぐというわけには行かないと思いますよ」

「ならば、一層過ごしやすいように造ろうか。あ~そうだ、テラスのカフェをまた造ろうよ。せっかく造ったのに一回も使えなかったしね。それに今度はサリーちゃんも呼んでいるからカフェは欲しいよね。ま~時間の許す範囲で造っていきましょ」

「隊長~~。全員が揃いましたよ」

「わかったすぐに行くから集めておいてね」

 ジャングル内を散策している俺らをアプリコットが旧資材置き場から大声で呼んできた。

「さ~戻ろうか。久しぶりに趣味に走っても怒られそうもないから、ここはおもいっきり楽しもうよ」

「「は~~~~」」

 俺に付いてジャングル内の散策に付き合ってくれたメーリカさんやドミニクさんが呆れていた。

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