第160話 中隊指揮所の設営

 俺らがジャングルで見つけた廃墟に着いてから1週間が経った。

 もうこの頃になると日々の生活はルーチンワークとなり、管理する側にとっては非常に楽である。

 ただでさえ今回のメンバーは全員が優秀なので、いちいち指示を出さなくとも日々の活動がきちんと回っている。

 ケート少尉率いる陸戦隊のメンバーも交代でバイクでの哨戒任務をこなしており今ではすっかりジャングルでの活動にも自信を持ってきていた。

 ここにいる40名弱のメンバーで交代しながら付近の探索及び哨戒、主に基地方面にだが地図の作成、それ以外は住環境の改善のためにログハウスの建築を行っていたが、すでに1軒が出来上がりとりあえず全員の寝床の確保はできている。

 しかし、さすがに外交官や士官も同じではまずいとの意見もあり今は2軒目を作っている。

 近い将来ここに中隊員全員を駐屯させながらジャングル内の探査を行っていくつもりなので、順次建家は作っていくつもりだ。

 そろそろ外交官のためのオフィススペースやサリーのための??(と言うよりサリーちゃんに入れてもらうお茶をゆっくり飲める場所の確保だよな)喫茶スペースを合わせたような本部建家も次に作ることになっている。

「隊長~~、出来ましたよ」

「お~~~出来たか。で、誰か確認はしたのか~」

「はい、今双眼鏡を使って使い勝手を見ていますが、これいいですね。もっとも木が邪魔で獣道くらいしか確認はできませんが、軍隊ならば発見はできそうです」

 ちょうど今しがた物見台も作り終えたので、物見スペースで哨戒の確認を行ってもらった。

 いずれ価値も出ようが、これでそれなりに基地スペースらしくなってきた。

 中隊全員を収容出来るだけの建家ができたら次に周りを壁で囲みたいが、それ以前に基地との間の補給ルートの整備が先だ。

 今は基地の方から基地に残してきた分隊を交代で道の整備に当たってもらっているが、慣れない連中なので遅々として進んでいないようだ。

 ま~彼女たちのジャングル訓練の一貫だと思っているので慌ててはいないが、そろそろ次の段階に来ている。

「そう言えば今日来るんだよな」

 俺はとなりに控えていたアプリコットに聞いてみた。

「はい、今朝早くに基地を出たと連絡を受けております。トラックですし運転は山猫さんたちなので、慣れていますから早ければ夕方にも到着されるかと思います」

 基地での新兵訓練でドック少佐の猛訓練のおかげで、あの使えなかった新兵たちも今では普通の新兵くらいにまでは使えそうだと連絡を受けていた。

 なので、交代で一個分隊づつここに詰めてもらい、ここから基地方面に補給用の道の整備に当たってもらうようにした。

 一昨日メリル少尉に連絡を入れて、こっちに回してもらうようにしていた分隊が今朝の定時連絡で既に基地を出てこちらに向かっていると報告を受けた。

「まずは自分たちの住処すみかだな。明日からケート少尉に預けて今作っているログハウスの手伝いをさせよう。道作りにかかるのは次の組からかな」

「そうですか、1週間交代なので週中から道作りに掛かれると思いますよ」

「ま~彼女たちにはあまり期待はしていないよ。まずはここでの生活に慣れてもらうことが重要だ」

「といっても、ここまで作りこんではあまり基地との生活と変わりないのでは」

「そう言うな。俺自身がジャングルでの野宿が嫌いなのだからな。ただでさえ不便なジャングル生活なんだ。

 少しでも環境を良くしてもバチは当たらんよ」

「では、本部ができましたら次は風呂ですね。確かにお風呂はありがたいのですが……本当にいいんですか。今の私たちはジャングル内の探索中のはずですよ。基地の設営なんかの命令は受けていませんよ。なのにここは既に立派な基地になっているような」

「いいんだよ。俺らは中隊の指揮所をジャングル内に設営しているだけだからな。どこの軍隊でも独立して動いている部隊では、ある程度のところで指揮所を置くだろ。俺もそれにならって指揮所を作っているだけだから問題はないはずだ。それに、どこからも資材を要求していないので、問題はないはずだ。司令部にも廃墟跡に指揮所をおいて活動することを連絡して、了解ももらっているから…多分大丈夫だよ」

「ホントですか~~~」

「大丈夫だ。司令部からこんな辺鄙へんぴなところの指揮所に査察なんか来ないから問題ない。きちんと仕事をしていれば多分ね」

「なんか査察が来たらアウトのような言い分ですね。でもそれもそうですね。誰も好き好んでこんな辺鄙なところに来たいとは思いませんよね。それに大体の場所は報告しておりますが、まだ地図もできていなかったので司令部にはこの場所は正確には分からないはずですしね」

「そういうことだよ。それに帝都から来ているお偉いさんにいつまでも野宿とはいかないだろう。俺も俺なりに色々と気を使っているんだよ」

「アンリのことですか?彼女ならほっておいてもいいんですよ。何も好き好んで付いてくる必要なんかなかったのだから。本当に突飛な行動をするお嬢さんなんですよ」

「あら~、アプリコットさん。突飛なお嬢さんって誰のことかしらね~」

「ほら出てきましたね。わかっているのに聞かないでください。こんなジャングルじゃ仕事なんか何もないでしょうしね」

「そ~なのよ、はっきり言って暇なの。中尉さん、何か私にも手伝わせてくださいな」

「いつものでいいですかね。これも重要な仕事なのですがなかなか手がまわらなくて、お願いできますか」

「あれですか、あれも正直言って暇には変わりませんがそうですね。アプリコットさんが付いてきて下さるのですか」

「な…」

「そういうことだ。ジーナと一緒に地図の補完を頼むよ。検証も兼ねているから気がついたことはなんでもいいからメモを忘れないでね。3時には帰投すること、いいね」

「はい、わかりました。行きますわよ、アンリ2等外交官殿」

 アプリコットにアンリさんを連れて地図の検証を兼ねて基地周辺の探索に出てもらった。

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