中隊はジャングルに
第158話 あの時の尋問って
さんざん、すったもんだの挙句に俺らは1個小隊+αの規模でジャングルに向け出発した。
総勢40名弱の規模だ。
以前に俺が指揮をしていた規模からは若干縮小した規模なので俺にとっては使いやすい規模だ。
もっともアプリコットやジーナなどは基地に残してきた200名のことが気になっているらしい。
ここまで来たら心配してもどうしようもないのだが、出発の際にケート少尉が本当に泣きそうな顔をして見送っていたので、それもやむを得ないか。
基地を出発する際に見送りしてくれたアート少佐にサカイ少佐、それにあのドック少佐が『奴らのことは任せておけ』とありがたいお言葉を頂けたので俺は安心しきっているのだが、苦労性の人はどうしても心配するものだなとある意味変に感心していた。
ここはほぼ敵である共和国の中でも残酷で有名な部隊によって壊された形跡のある場所なので、少なくとも敵はここまで来ている場所だ。
呼び戻されてからしばらく時間が経っているので、敵の他の部隊が展開していないとも限らない場所だ。
接近には十分に気をつけなければならないが、少なくともそこまでのルートについては何ら問題がない。
移動の際の索敵に細心の注意が必要なのだが、以前の時と違って今回は連れてきている兵の連度が格段に違っているので俺は心配していない。
陸戦隊の人たちが俺らの索敵について慣れていなかったが、廃墟までは少なくとも1日以上かかるので、索敵の訓練をしながら近づいていくことになった。
例によって、バイクで先行して索敵とルートの確認を行って安全の確認が取れてから本隊を進めるやり方だ。
今回の規模はすでに触れているように40名弱なのだが装備、特に車両に関しては以前のままでバイク4台にトラック2台、それに指令車1台の構成だ。
兵器についてはトラックに余裕があるので少し贅沢をさせてもらい重火器である重機関銃を3丁も持ってこれた。
敵との遭遇が予想されるのでおやっさんが『持っていけ』といって渡してくれたものだ。
おやっさんに感謝。
しかしこんなのが使われる場所には居たくないので俺にとってはお守り以上の価値はない。
使用されるようならば
くだらないことを考えながら半日近く進んで休憩場所に到着。
付近を捜索しながらの移動なのでどうしても以前の帰りよりは時間がかかるのはしょうがないし、陸戦隊の哨戒移動の訓練も兼ねているから、俺の感覚からしても以前よりは2倍近く時間がかかっての移動だ。
それでも半日近く車両に閉じ込められての移動は慣れていても少々堪えるのだが、今回は全く不慣れの人間もひとり同乗している。
外交官のアンリさんだ。
基地で1週間ばかり訓練をしてもらい少しは体力をつけてもらったが、やはり初めてのジャングル移動は堪えている様だ。
みんなで昼を取りながら1時間ばかり休憩をすることにした。
歩哨を立てないで全員でお昼休憩をしようとしたら陸戦隊出身の全員に驚かれた。
全くの無警戒じゃないのだが、敵地近隣にての休憩で歩哨を立てないでの休憩は信じられないらしい。
でもこれは俺の部隊ではすでにスタンダードになっており、とにかく休憩中に全員に対して指示が一回で徹底できるのが魅力だ。
最もこんなことができるのもジャングルならではの特性だということは俺でも理解できる。
ジャングル内ではどんなに急いでも移動できる距離が非常に短いのだ。
バイクで移動を行い1時間以内に移動できる距離内の索敵を行いえば少なくとも1時間は安全が確保できるので、できる芸当だ。
また、見通しが悪いので俺らが発見される前に音で敵の存在も確認できるのでまず大丈夫だし、今までにも全く問題がないからそのままこの習慣を続けている。
アプリコットだけじゃないが軍隊ではありえない暴挙らしいが今では何も言ってこなくなっていたから、今回は少し新鮮に感じた。
休憩中に索敵に向かっていた兵士たちを交えて、ジャングル内の様子を聞いてみた。
「どこか変わったことないかな」
「隊長、これといったものは見つけられませんでした」
「あ、途中でクマのものと思われる形跡をいくつか見つけました」
「それなら私は、多分あれは鹿だと思いますが、その移動した形跡を見つけました」
「私は獣道をいくつかですね」
「鹿や獣道についてはちょっと気をつけてくれないか。軍馬での移動と見間違えたら大変だからな」
「へ?どういうことなのですか」
「だから軍馬も4つ足でしょ。4つ足の生き物と一緒の跡を残すから見間違えもありうるでしょ。今時騎兵隊でもないだろうけれども、ここはジャングル内だから下手をすると一番移動が楽な手段かも知れないから、気をつけておいてもいいじゃないかな。あと獣道は人がそこを使って移動しても跡がわかりにくいから要注意ね」
「「「分かりました」」」
「中尉、いつもジャングル内の移動はこんな感じなのですか」
「そうですね。こんな感じです。休憩中に全員を集めて、問題点などを相談しておきます。そうすると全員で状況などの情報が共有できますから、私はかえって安心ができるのですよ。交代で休憩しないなんて軍人として考えられないなんかと前にはよく言われていましたが、今では呆れたのか何も言ってこなかったのですが、今回は初めてご一緒した人たちも加わったので同じようなことを言われましたが……」
「え、そうなのアプリコット」
「そうよ、この部隊にいるといつも常識はずれなことばかりをやらされるわ。というか、中尉と一緒にいるといつも変なことに巻き込まれるわよ。あなたもできるだけ早くここを離れたほうがいいんじゃないかしら。今ならまだ間に合うわよ。あなたのキャリアに傷が付く前だからね」
「え~、だってあなたはキャリアに傷が付くどころか誰よりも早く勲章をもらっていたわよね。どういうことなの」
「勲章をもらったかもしれないけれども、情報部から尋問も受けたわよ。本当~~~~~に怖かったんだから。ジーナなんか泣きそうだったんだからね」
「あ~~、そう言うならアプリコットは泣いていたじゃないの。アプリコットは勲章をもらったからいいかもしれないけれども私なんか尋問だけだからね。とんだ貧乏くじだわ」
「え?尋問。だって仲間だよね。それとも敵に捕まったの」
「仲間のはずよね……レイラ大佐って。でも本当に怖かったのよ。今でも時々夢に出てくるからね」
「そう言えば、隊長はタフよね。部屋の外にいても声が聞こえて怖かったけれども、私たちの時よりもレイラ大佐の声が大きかったから。それに言葉使いも……あれ、完全に敵に対しての尋問だったわよね…」
「そうそう、あの時はレイラ大佐だけじゃなかったわよね。もう幾人かの怒鳴り声も聞こえたような……でも隊長部屋からケロッとした顔で出てきたわね。あの時は正直隊長を尊敬したわよ。外に漏れ出す声だけ聞いても本当に怖かったからね」
「え~~、中尉何をやったのですか?」
「え、あの時のことか、俺は何もやっていないぞ。何で色々と聞かれるのか分からなかったが、正直に答えただけだ。でも俺が答えていくと何故だか徐々にレイラ大佐の声が大きくなっていったな。ま~あの時な基地内が殺伐としていたからストレスが溜まっていたんじゃないかな。俺を使ってストレスの解消でも
「「「は~~~~」」」
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