第121話 面倒な命令
鎮守府での会議を終え、外に出た我々は、海軍さんのご厚意?により、帰りは鎮守府に詰めている最新の駆逐艦で基地建設現場まで送ってもらった。
乗ってきた緊急連絡艇は駆逐艦に搭載され運ばれているとのことだったが、我々からどこに搭載されているか全くわからなかった。
海軍で艦隊を構成する船の中で最少の駆逐艦は実施に乗ってみるとかなり大きく、来る時に乗ってきた緊急連絡艇もそこそこの大きさはあったが、簡単に駆逐艦の中に搭載されてしまった。
なので、帰りは2時間くらいの船旅だったが快適に過ごせた。
建設現場に帰ってきたら、すでに、営舎等の建設工事は中断されていた。
応援組の我々は待機状態になっており、シノブ大尉率いる工兵隊などは撤収の準備に入っていた。
現場に残っている海軍さん達は水回りの工事に入るための資材等の手配に持てるリソースすべてを充てていた。
なので、我々は帰ってきたが置いてけぼりの状態で仮設の埠頭に降りた。
後から降りてきた海軍の担当仕官が申し訳なさそうに、
「すみません、上からの指示で、ここでの工事は一時中断されることになりました。他の皆様にはすでに通達は出されているそうですが、こちらから協力を申し出ているのことで大変恐縮ですが、申し訳ありません、皆様には一時的に撤収をお願いします。資材等がそろいましたら、再度協力をお願いすることになります。本当に身勝手な言い訳なのは重々承知しておりますが、その際には再度ご協力をお願いします」
本当に、これでもかというくらいに平身低頭に詫びてきたので、気の毒になってきた。
「大丈夫です。経緯は理解しておりますので、我々は一時的に基地に戻ります。連絡をお待ちしております」とシノブ大尉が担当者に声をかけ、ここで別れた。
「帰ったら、基地にあるオンボロ社のポンコツをメンテしないといけませんね」と俺がシバ中尉に声を掛けたら、中尉はニヤッとして、「その心配には及びませんよ。以前に少尉から手ほどきを受けましたから、練習のために全部メンテし終わっています。せいぜい埃を払うくらいしか仕事はありません。次の指示があるまで基地でゆっくりしていましょ」と俺の予想を超えた返事が返ってきた。
さすがに優秀な技術者を多く抱えるサカキ中佐の部隊だ。
要点を伝えただけでもう技術を習得していたのだった。
俺が一人で驚いていると、シノブ大尉が、「さ~帰りますよ。部下たちに撤収の準備をさせてください。準備ができた部隊から順次帰還するように」と現場指揮官の帰還命令が発せられた。
そこに留守番をしていたジーナが俺のところまでやってきて、「少尉、撤収の準備は済んでおります。シノブ大尉から、現場が混雑するので早急に撤収してくださいと命じられております」
「分かった、俺らは帰ろう」とアプリコットに顔を向けて命じた。
「はい、では、車に戻ったらすぐに発進させます」と言って、俺らは誰よりも早く現場を離れた。
旅団基地に戻ると、すでに情報は司令部に届いており、我々には別命があるまで通常業務に戻れと指示があった。
資材等の片づけを終えたのち、今日はみんなを解散させ、明日以降は各分隊長に従うようにと指示をしておいた。
それから幾日かは穏やかに過ぎたある日、俺は詰め
「ここから引いた水を利用する人間が急に増えますね。そろそろ、簡易水道の整備でもしませんか」
「そうだな、川の水をそのままというのもどうかと思っていたんだ。この基地だけならば今あるフィルターを通せば済むが、ほかに水を回すとなると考えなければな」
「ですよね、なので、簡単な装置を作り、簡易水道にしませんか。原理は下水処理と全く同じなので、すぐにでも工事に取り掛かれます」
「今ある資材で取り掛かれるのなら、始めるか。あんちゃん、この件頼めるか」
「判りました、すぐに工事に入りますが、申請書類などどうしましょうか」
「なに、それなら俺の方で作っておくから、すぐに工事に入ってくれ。ちょっと嫌な予感がする。早いに越したことはないから。必要ならシバの連中を使ってもらってもいいからできるだけ早くに完成させておいてくれ」
「判りました。すぐに工事に入ります。サリー悪いけどメーリカさんを呼んできてくれ」と言ってサリーにメーリカさんを呼んでもらった。
「で、アプリコットとジーナ。聞いての通りだ。小隊を上げて工事に掛かることになったので協力してくれ」
「判りました」
それから、もうすでに工兵隊と言っていいくらいの技量を備えた我が小隊が全力で簡易水道のろ過装置をこさえた。
完成までに3日で作り上げた。
かなりの大掛かりの装置だったが、下水処理装置でおおよその工事を経験していたので、驚く様な速さで完成させたのだった。
結果から言うと、これで完成できたのだから良かったが、完成させたその日に第27場外発着場に着陸した輸送機『北斗』から降りた人からとんでもない命令が司令部にもたらされた。
もたらされた命令は『この辺りに皇太子府の出先機関を作るので、できうる限り早急に付近の調査と、現地勢力の発見及びファーストコンタクトをとれ』というものだった。
そういえば、このあたりの地上からの広域調査はまだ実施されていなかった。
司令部としても広域調査の必要性は十分に認識していたが、それらを実施するだけの余裕がなかったのだ。
しかし、殿下からの要請という名の絶対命令である。
無視などできるものではない。
なので、こういっためんどくさい仕事は当然のように迷わず俺のところまで降りてきた。
今日中に出発するようにと云う厳命付きで。
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