第118話 補給基地建設プロジェクト
基地建設応援の打ち合わせは進まず、旅団長やレイラ中佐からは、色々つつかれ、後ろで報告書を作っているアプリコットやジーナからは涙目で睨まれ、散々だった。
結局、サカキ中佐がコーヒーを飲み終えた後に、
この後、シノブ大尉が港湾建設土木部長を鎮守府まで、お連れすることになった。
その際に、彼女の工兵小隊1個を同行させ、そのまま鎮守府から海軍の駆逐艦で、問題の基地建設現場まで連れて行ってもらい、そこで、ここと同様に付近に生えている木を使い営舎などを作っていくことになった。
で、俺は、俺の小隊を連れて、第27場外発着場から、建設中の基地までのルート探索を仰せつかった。
我々サクラ旅団は基地を挙げて基地建設に協力する見返りに補給の面倒を建設中の基地が見ることで海軍と合意している。
これは、先に来た特使の方々とも同意見で、この辺りに外交執行部の拠点というか皇太子府の出先機関の建設のための補給もこの建設中の基地が受け持つことになる。
なので、是が非でも第27場外発着場から建設中の基地までの地上ルートの確保が最優先案件となった。
ジャングル内のルート探査においてこの基地一番の実績を有する俺の小隊が当然のごとくこの任務に回された。
ルート探索が済み次第、俺の小隊は現地で先行して応援に入っているシノブ大尉の指揮下に入ることになっている。
旅団としては、サカキ中佐の率いる特殊大隊は新司令部建設要員を残し、全員でこのプロジェクトに当たることになっており、俺らが見つけたルートを旅団本部に知らせれば、すぐさまルートに沿って道の整備に当たるそうだ。
それまでは、第27場外発着場付近のジャングルを切り開き、飛行場への格上げのための施設建設の準備だけでも行うことにもなっている。
早速、行動に移り、シノブ大尉は、連れて行く工兵小隊の選定に当たっており、サカキ中佐はそれ以外の特殊大隊のメンバーを集め、段取りの確認に入っていった。
俺は、まだ涙目のアプリコットとジーナに、出発の準備に掛かることを平身低頭でお願いをした。
サリーに至っては、ここまでの話を聞いて、喫茶の閉店作業を始め、携帯する食料などの確保に走っていった。
本当によくできたお嬢さんだ。
俺は、またかといった雰囲気でヤレヤレとメーリカさんのところに発令された命令を伝えに外の訓練施設のところまで向かった。
日に日に基地の物資も欠乏していく中、今回のプロジェクトは是が非でも早急に完了させる必要がある。
そのための要になりうるルート探索も今までとは違い、早ければ早いほど良いと、旅団長以下幕僚たちからかなり急かされている。
なので、同行させる車などの準備はサカキ中佐が気を利かせてくれ、シバ中尉に先行して準備させていた。
なので、小隊員が格納倉庫まで向かうと、既に出発できる状態でエンジンまで駆けて待機していた。
準備をしてくれたシバ中尉に丁寧にお礼を言って、全員が待機している車列に乗車した。
「少尉、では、行きましょう」
「うん、準備も出来ているようだし、出発しますか。これより、我々はルート探索に出発します」と無線に一言入れて、出発させた。
車列はそのまま第27場外発着場まで向かい、そこから、海軍が建設を進めている基地の方角に向かってジャングルの中に入っていった。
今回ばかりは今までと勝手が違って、少々のアップダウンが問題になってきている。
俺は判断を迫られたが、目的が補給路の確保なので、アップダウンを避ける回り道ルートは取らずに、多少時間がかかってもできるだけ基地のある方角に沿って真っ直ぐに進んでいった。
なので、今回はやたらと橋やらスロープやらの建設が多かったが、海軍で仕入れたウインチを使って、こまめに作りながらの探索となった。
たかが60km位の距離だったが、目的の基地までに到着するのに5日を要した。
直ぐに同行していたバイクを2台、簡単な地図を持たせて旅団司令部に向かわせた。
ここから旅団司令部まではルートも開拓済なので2時間もあれば司令部に着く予定だ。
一応無線で司令部に連絡を入れておいた。
「で、司令部からは何か言ってきたのか」
「いえ、向こうでもまだ、なにかかなりゴタゴタしているようで、判ったとしかありませんでした」
「それじゃ~、向かった連中は今日中に帰って来れるか分ったもんじゃないな。司令部に、連中がこちらに向かう時に一報を入れさせてくれ」
「分かりました」
「隊長、この後はどうします」
「命令通り、基地の建設のお手伝いだ。シノブ大尉を探すぞ」
「では、基地の仮司令部辺りに行きますか」
「そうだな、そこに向かってくれ」
平地の少ない建設中の基地の中の斜面をノロノロと桟橋付近にある建家に向かった。
俺はアプリコットを連れて、建家の中に入って行った。
中の雰囲気が旅団にある喫茶サリーのおうち…もとい、俺の小隊詰所のようだった。
建設図面を描く図版がいくつもあり、黒板に色々と書き込みがあり、活気のある部屋だった。
シノブ大尉も海軍の士官を捕まえて色々と話し込んでいた。
俺がシノブ大尉の傍まで行き、到着と、指揮下に入る旨を報告した。
『今着いたけれど何をすればいいですか。』なんて聞いたものだから、周りに居た海軍さんたちは驚いていた。
すぐさま、アプリコットが、軍の形式に則って、到着と指揮下に入る旨をきちんと伝えていたが、シノブ大尉は苦笑いを浮かべていた。
詰所での彼女との関係がここでは違ったのだが(旅団基地では、俺らはシノブ大尉の基地設営のボランティアであるが、ここでは、きちんと命令を出され、シノブ大尉の指揮下に入ったので、立場が大きく異なっていた)、やることは一緒で、今まで彼女たちとの付き合いも軍の枠からはみ出していたから、何を今更といった感じか、シノブ大尉は早速、相談してきた。
ここでの問題は、作るべき建家の多さに反して少なすぎる平地で、建設が進んでいないことだった。
重機を入れて階段状に平地に均すには、重機がまだここに届いてなく、人力ではとてもじゃないが間に合わないことだった。
俺は、その問題を聞いて、直ぐに斜面を均すのをやめさせ、俺は、斜度が大きく変わるすぐ手前のここから少し登ったあたりから、兵士の営舎を斜面を均さずに建設することを勧めた。
桟橋付近はできる限り広めに開けておき、いずれきちんと均していくことで、今は近々の課題の営舎建設は将来的に邪魔にならないように山の中腹辺りから作っていくことを提案した。
造りとしては、山岳別荘地によくあるような斜面に建つ別荘をイメージした。
その為に、旅団基地で行った量産化は難しい。
土台になる部分だけが斜面に合わせる必要がある。
しかし、土台とバルコニーにあたる部分さえ作ってしまえば後は旅団基地と同じである。
俺は、小隊員を連れて、かなり上のあたりに最初の一棟を建て始めた。
それを見ていたシノブ大尉の所の工兵達と海軍さん達はしきりに感心していた。
後は、以前と同じ作業の為、俺らが土台だけを作っていき、最低限必要となる営舎の建設を始めた。
上モノは海軍さんと工兵さんが協力して作り上げていくので、土台さえ作れればあとは早かった。
なんか最近の俺は、工兵の隊長か、それよりもむしろ大工の棟梁といった感じの事ばかりしているな。
でも、鎮守府での作戦会議に駆り出されるよりも遥かにマシなので、今の状況に満足している。
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