第54話 問題解決??


「おじ様とレイラの見立てでは、少なくとも2個師団、普通に考えれば1個軍団規模が上流で活動していたようなのね」

「その司令部か、それに準ずる部隊が鉄砲水の被害にあったと考えるのが妥当よ。見つけた遺体や装備などから考えても、一般兵士の数が圧倒的に少なく、士官それも佐官以上の者が多かったわ。捕虜にも佐官がいたし、将官クラスの備品もいくつか見つけたわ。その考えで間違いないと思うわ」

「先の鉄砲水で、どれだけ共和国側が被害を出したか分からないが、頭を潰されればそう簡単に動けない。しばらくは共和国も大人しくしているだろうが、一般兵士の被害が少ないこともあり、油断はできないと考える方が良いと思う」

「分かったわ、その方向で報告書を上に回しとくわ。どちらにしても、皇太子府では、共和国の動向調査は済んだことになっているし、あちらはすでに次の段階に進めているわ。それすらも、済んだことにされそうなのだけれど。そ~そ~、話は次の段階に関することなのだけれど、本当にローカルの人と接触できたの?」

「接触もなにもないわ。現地の少女を保護してきたわよ、あいつらは。衰弱が激しかったので、衛生小隊に預けているから、後で会ってきなさいな」

「分かったわ、その件も無線で連絡を受けた際に殿下に報告をしてあるから、あちらではすでに処理済の扱いになりそうなの。いずれ、厄介な指示が来ると思うから、覚悟しておいてね。それより、おじ様、先ほどの件ですが、あのポンプ本当に直せるの?」

「あいつの作業を少し見ていたが、明らかに慣れていたな。あいつが直せるというのなら直せるのだろう。どれくらい時間がかかるか聞いてなかったが、1両日中には直せると思う」

「ポンプが直れば、ここの水道の問題はとりあえず解決するわね。購入依頼をかける予定だったポンプは削除できるわ。結果が分かれば教えてください」

「分かった、テストまでやっても明日には結果がわかるだろう。わかり次第連絡する」

「最後に、明日、今回調査した墜落機の報告書と共和国関連の報告書を持って、誰か帝都まで飛んでいってもらわないと。おじ様の方で誰か出してくれないかしら?」

「シバは出せないから、シノブを帝都まで使いに出そう。あいつなら、調査報告をしてもらっても問題ないだろう」

「分かりました、シノブ・サウスクラウド大尉を帝都まで出張させ、一連の報告をしてもらいます。あとで、ここまで呼んできてもらうわ。ついでに、帰りの便でマーガレットにお願いしている士官をこちらに連れてきてもらおうかしら」

「分かりました、早速シノブ・サウスクラウド大尉を呼んできます」と言って、クリリンは部屋を出て行った。

 サウスクラウド大尉は、シバ中尉とともに倉庫前でポンプの修理を見ていた。

「これ、絶対に無理だわ、おやっさんが触るなといった意味がわかった。これいじっていたら、絶対に自信を無くしているわね」

「これ、知っていれば何にも問題ないけれど、下手な技術者がこの修理を知ったら、逆に他をいじれなくなります。これは特別で、この修理法は他では逆にNGですから。シバ中尉たちならば切り分けて考えられるでしょうけれど、新人にはきちんと注意してください。でないと使い物にならなくなりますから。マキアさんもわかったかな?このポンプだけの修理法だから、他のではやってはダメなやつだと、きちんと理解してね」

「分かりました、このポンプは変わり者だと理解しました。他では絶対にやりません。それこそ中尉にげんこつ貰いますから」

「「「ワハハハ」」」

 マキアの素直な感想に、居合わせたみんなから笑い声が漏れた。

「ここに居ましたか、サウスクラウド大尉」

「あなたは?」

「申し遅れました、私はクリリン・レッドベリー大尉、先日海軍陸戦隊からサクラ旅団長の秘書官として赴任したばかりです。よろしくお願いします。それで、旅団長がサウスクラウド大尉をお呼びです。お手数ですが、付いてきてください」

「分かりました、ここの指揮権をシバ中尉に預けます」と言って、ふたりは司令部の方へ歩いて行った。

「海軍から出向だって、驚いたな」

「この基地、なんでもありね」

「さ~、それより、修理の上がったポンプのテストをしよう。みんなで運ぶよ」

「「「分かりました」」」と言って、シバ中尉はみんなを使ってポンプのテストを始めた。

 テストを始めて1時間ばかり過ぎた頃に、サカキ中佐が戻ってきた。

「ほ~、もう修理は済んだか」

「え~、このポンプはめんどくさいだけで、修理方法さえ理解していれば簡単です。壊れる場所はほとんど一緒で、それ以外はまず壊れない。それに壊れ方も同じで、殆どの場合に部品の組み直しによる調整だけで済みます。本当によくできたポンプです。知っている者からしたら、帝国一の名器です」

「出力が大きすぎないか?」

「カタログスペックで運転したら簡単に壊れます。このポンプは逆にリミッターを外し2~3倍の出力で運転したほうが調子がいいんです。今帝国で使用されている同型機は、みな2~3倍で運転しています。私は、2倍で調整しますが、技術者によっては3倍で調整される方もいます。調整される方の好き好きで変えますね。私の経験だと2倍運転の方が故障が少ないような気がするので、2倍にしてあります。短時間なら5倍までは出力は出せますが、常用では3倍までですね」

「このままで構わない。シバ、テストが終わり次第、きちんと据え付けるぞ。あんちゃん、悪いが据付まで付き合ってくれ。かなり癖のあるポンプなもんで、我々だけでは心もとない」

「構いません。待機任務中なもんで、問題はありません。お付き合いします。メーリカさんはどうする?このあと何かある?なければ付き合ってくれないかな。一応人足は足りているようだが、据付には多くの人手が必要なので」

「別にかまわないが、みんなも大丈夫だな」

「「「大丈夫です。分かりました」」」

「どうせ、俺らも使うものだし、チャッチャとやっちゃうか」

「「「おう~」」」

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