第14話 捜索
先程人を助けた特殊車両の調査のため、今度は、アプリコット准尉とメーリカ軍曹の3人で車の下に来た。
三人が車に近づいた時には、既に兵士たちが中から、めぼしいものを外に出しており、今は、空になってきた車の中を詳細に調査している。
車の中を既に兵士があたっているので、我々三人は外に出ている物品の鑑定を一つ一つ丁寧に始めた。
「マーリンさん、どうかな?
何かめぼしいものは見つかったか?」
「少尉、今のところこれといった物は見つかりませんし、ここにある書類等は水を被り、ここでの判別はできそうにありません。軍曹の方では何かありましたか?」
「こっちにあるのは、このヘルメットくらいですかね。でも、このヘルメットの階級章は先程見つけた二人とは違い偉そうではありますが」
「マーリンさん、このヘルメットの持ち主の階級分かりますか?」
とアプリコット准尉がメーリカ軍曹からヘルメットを受け取り、階級章を確認した。
すると急に大声で
「このヘルメットは少将のものです。少なくとも私が知る限りですが。共和国の階級章が変わってなければ、ですけれど」
メーリカ軍曹がアプリコット准尉の返答を聞き、途端に渋い顔を作った。
「少尉殿、私が昨夜言ったこと覚えていますか?
将官クラスが被災したら、普通、付近の軍に総動員かけて救助に向かいますよ。被災箇所がここからどれくらい距離あるかによりますが、直にここまで救助の軍が来ますね」
「それはどうかしら?
確かに通常の場合救助隊が編成されるでしょうが、ここから100km以内に帝国の基地があることは、敵も知っているはずですので、下手に近づいて戦闘の端緒を開くようなことをするとは思えませんが、少尉はどのように考えますか?」
いきなり難しいことを聞いてきたぞと、内心かなり焦ったが、カスタマー・サービスで培った経験で、話しの論点をずらした。
「これだけの被害が敵に生じているのだし、多分、敵の見える範囲にも相当な被害の爪痕があるに違いない。生きている人の救助で手一杯、直ぐに敵がここまでは来れないだろう。 上流方面の哨戒を強化するが、多分、大丈夫だ。それよりも、被害にあった敵さんに将官がいたことは間違いなさそうだし、今まで見つけた人の階級が頭でっかちなのが気になるが」
「そうですね、上流に展開していた敵の規模ですが、将官も確認できたし、少なくとも師団規模以上ではありそうですね。それに、発見された人の内訳から、展開軍の司令部が鉄砲水に襲われたと考えるのが妥当だと思います。今は、これ以上のことは分かりそうにもありませんね。もう少ししたら、捕虜の二名に確認はしましょう」
「でも、捕虜が素直に答えてくれるか、甚だ疑問だが……どちらにしても、聞かないわけにはいかないので、聞くことはしますよ」
横で一緒に搬出された物を整理してくれていた輸送機クルーの一人である副操縦士がほとんど真っ白な地図を見つけた。
「少尉殿、敵は上流に基地でも作ろうとしていたのかもしれません。少なくとも、上流の広範囲な地図を作ろうとしていたのは間違いないと思われます」
「物騒な物が出てきたね。
どちらにしても、ここから早く遠くに逃げないといけないことはわかった。機長、使えそうな車があった?」
「少尉、ダメです。こちらの車はクランクケースが割れ、中のシャフトも折れています」
一緒に車を確認していた機関士も「こちらは、運転席が完全に潰され全く使えません。 唯一、使えそうだったのが今少尉が見ている、特殊車両ですが、発電機が飛ばされて、バッテリーも使えません」
「使えそうな部品を集めて、この車の修理できないかな?」
「機長、そちらの発電機は使えそうですか?」
「発電機は使えそうだが、バッテリーがダメダメ。
バッテリー無しでは動かせないから、車は使えそうにないかも」
今まで話を聞いていた航法士が、「あのー、バッテリーですが、輸送機のは使えませんか?」
「「「その手があったー」」」
「機長、悪いけど、そちらのクルーで協力してこの車の修理をお願いできないかな」
「すぐにかかります。でも、今日の出発は難しいですが」
「構わない、急いで遠くに逃げたいが、出発は明日の朝にしよう。
車がそれまでに修理できれば、車を使って、修理できなければ歩いてここを離れよう。 それまでは、今までの作業を継続してくれ」
みんなに指示?を出したあと、こちらでの捜索を打ち切り、ドラム缶に浸かっている捕虜に向かって、歩いて行った。
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