第9話 幼馴染の勉強会


「おー、久しぶりの拓真の部屋だー」


「相変わらず汚ねーな」


「うっさい。会場用意しただけでもありがたいと思え」


 俺の部屋にきた4人はそれぞれが興味深くそうに俺の部屋を見渡している。


 やましいものは特にないがあまり物色するのはやめていただきたい。


「あ、これ新しいソフトじゃん! みんなでやろうよ」


「俺この漫画の続き気になってたんだよなー」


「このクッションいいわね。 拓真。これどこで買ったの?」


「お前らなぁ……きた目的を忘れちゃいないか?」


「おっとそうだった」


「ごめんごめん」


「確かに」


 全く、こうなることはわかっていたがここまでとはな。是非とも雫を見習ってもらいたいものだ。


 そう思い雫の方を見ると何やら鉄の箱の中身を喰らいつくようにガン見していた。


 ん? あれはなんだったか?


 そう思い思い出そうとしてみても思い出せない。


 まぁ、どうせ大したことないことだろうが一様言っておくか。


「雫」


「う、うわぁっ?!」


 すると雫は恥ずかしそうにしながらも驚いた顔で振り向いた。


「たっ……くまくん」


「すまんがあまり見ないでもらえるか? 恥ずい。」


「ご、ごめん! べ、勉強始めようか」


 その後始まった勉強会は雫のいい指導のおかげか皆のやる気も高まってすごく雰囲気がいい。


「姫宮さん、ここってどうすればいいのかな?」


「それでしたら公式を当てはめてーー」


「姫宮さーん、ここってなんだっけ?」


「それはこういう答えで覚えやすいのはわーー」


「雫、ここなんだけど」


「おお、結構難しいですね。 恐らくこのーー」


 一人一人に的確に教える様はまるで塾の講師のようだった。


 流石学年一位。教えるのも上手いな。


 そう感心していると俺のところにも姫宮塾講師がおみえになった。


「拓真くん、わからないところはありますか?」


 そう言い横に座った雫からはとてもいい匂いがした。


「あ、ああ。特にないかな」


「遠慮しないでくださいね。」


「……ここわかんない。」


「ふふ、ここはですねーー」





 勉強会が終わり、雫達が帰ったところで俺は部屋でくつろいでいた。


「ふぅー。 ん? あれは?」


 ふと視界に鉄の箱が見えた。


「これは……雫が見ていた箱か……何を入れてあったかな。

 

 そう思い箱を開けると、そこには一枚の手紙が入っていた。


 手紙を広げ、中身を読んだ俺は絶句した。


 手紙にはこう書いてあった。


【しずくちゃんへ、きみは僕がであったなかでいちばんすてきなじょせいです。きみのやさしさや、えがおはぼくがいっしょうまもります! ですのでぼくとけっこんしてください!】


 そこにはかつての自分が書いたまだ未熟な文でも心を込めて書いたことが伝わるラブレターがあった。


 ようやく思い出した。これは俺が雫に渡すつもりで書いたがいざ渡そうと思った時にひよって渡さなかったやつだ。


 それ以来このラブレターはこの箱に封印したのだ。


 だがそれを本人に見られた。自分の黒歴史の塊のようなものを。


「うううぅぅぅ……うぁぁぁーー!!」


 俺は恥ずかしさに悶え叫んだ。



 

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