第7話 大事な存在

「くそ、俺の金が……。」


 あの後会計を全額支払う羽目になった俺は雫達と別れ、現在午後7時ようやく家に帰ってきた。


 玄関で靴を脱ぎリビングのドアを開けると母さんが料理を作っていた。


「おかえり拓真、遅かったじゃない。」


「ただいま母さん、今日は友達と遊んできたんだ」


「ふふ、拓真もいい友達ができたみたいで母さん安心。」


「まぁね。」


 雫のことは伝えなくてもいいだろう。何せ母さんは昔から雫のことが大好きで絶対にお嫁にもらいなさいと何度言われたか覚えていない。


 俺は階段を上がり、自分の部屋へと向かう。


 そして大きなクッションにそのまま倒れるように寝転がった。


「はぁ、なんか今日はやけに濃い1日だったな……。」


 昼に屋上に行ったらまさかの雫とエンカウントし、そこから一緒に昼飯を食べてなんだかんだで友達になり連絡先も交換した。


 そしてその後涼達を紹介し、無事雫にも女友達ができた。


「でも楽しかったな」


そんなふうに思いにふけっているとスマホがブブという音を立てて振動した。


 確認すると雫からメッセージが来ていた。


『今日はありがとうございます。お陰でいい友達がたくさんできました!』


『こちらこそ、あいつら騒がしかっただろ』


『いえいえ、とても楽しい方々でしたよ。流石、拓真くんの友人ですね。』


『まぁな、本当いい奴らだよ。」


 俺にとってあいつらは本当に心から親友だと思っている。あいつらがいなかったら俺はぼっちで高校生活を送る羽目になっただろう。


 だからこそ雫とも仲良くなれると確信していた。あいつらならすぐに打ち解けてくれるだろうと。


『ええ、本当にいい方々です。あと拓真くんもこれからもよろしくお願いしますね? 拓真くんも私にとって大事な存在ですから。』


「大事な存在かぁ」


 それが友人としてなのか、いせいとしてなのかはわからない。わかる必要もない。だが俺にとっても雫はあいつらと同じようにいなくてはならない存在だ。


『ああ、もちろん。これからもよろしく雫。』


 俺はこれからも、雫と関わっていこう。友人として末長く。


 雫とのメッセージを終え、ゲームでもしようかと思っていた時、俺の部屋のドアが勢いよく開け放たれた。


「お兄ちゃん、ご飯。」


「人の部屋の扉を足で蹴るのやめろ、佳奈。」


 この生意気そうなポニーテールの少女は霧海佳奈、俺の妹だ。


 小学生の頃はお兄ちゃん! お兄ちゃん! と寄ってきて可愛かったが今ではこの有様だ。だがしかし俺は信じている。心ではまだお兄ちゃんのことが大好きなのだと!


「何ニヤニヤしてんのマジできもいんだけど……早く来て」


 そう冷たく言うと佳奈は足早に下へと降りていった。


 いや、やっぱり嫌われているな。


「だがしかし俺そんなにニヤニヤしてたのか?」


 鏡を見てみると確かにちょっと笑っている。


「いやいや、勘違いはやめよう。 俺と雫は親友なんだ。」


 俺は頬をパンと叩き表情を整えてから下へと向かった。






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