第4話 まさかの告白
放課後。
「ごめんね拓真、今日僕バイトで」
「俺たちも部活だから」
「また明日ねたくまん、」
「おうじゃあな」
「また明日。」
そう言って俺は友人達と別れた。
涼はバスケ部、由美は吹奏楽部に所属していて二人とも活躍しているらしい。 結絆はバイトをしているらしいが、何処でしているのか教えてくれないので謎だ。
ちなみに俺は安定の帰宅部である。
「さて、帰るか」
俺は廊下を進み、玄関へと向かうために階段を降りた。曲がろうとした瞬間見覚えのある姿を見かけた。
俺は反射的に角に隠れた。
(あれは雫と……天野?)
天野佳、一年の中でもかなりの人気を誇る美少女で既に何人もの男子が告白したものの全て「興味ない」のひとことであしらったという伝説を持つ。
雫と話しているところは見たことがないが……案外仲がいいのか?
そうしていると、二人の会話が聞こえてきた。
「どうしたの天野さん、私に何か用?」
「う、うん。 用というか……聞いてほしいことがあるというか……」
「いいよ、いってみて!」
「じゃ、じゃあ……」
次の瞬間天野が衝撃的なことを言った。
「し、雫ちゃん! 私とお付き合いしてくれない!」
雫は一瞬何を言われたのか分からず唖然と立ち尽くしていた。
まさかの告白。
予想もしなかった展開に俺も雫も数秒固まってしまった。
そしてようやく理解したのか雫は困惑しながらも答えを出した。
「え、えっと……ごめんなさい」
その答えは天野にとって非常に残念なものだった。
「な、な、何で……!」
「だ、だって私と天野さんって女同士だし……。 それに私には好きな人がいるから!」
その言葉を聞いた瞬間、天野は絶望的な表情になり、膝から崩れ落ちた。
そして俺も激しく動揺している自分がいることに驚いた。
いや、ない。そんなことは決してないはずだ。思い上がるな。いまだに自分を好きでいてくれるはずないだろ。
そう自分に言い聞かせて動揺を落ち着かせた。
「そ、そんな……! 姫宮さんに好きな人がいたなんて……。」
「だから、ごめんね」
雫はそう言って頭を下げた。
だがしかし、天野はまだ引き下がらなかった。
「それって誰?」
「え?」
「私から雫ちゃんをうばうなんて!! どこのどいつなの!!」
そう言い、天野は雫の顔の間近まで迫った。
「流石にこれは度を超えているな。」
俺は迷わず角から出て二人の間に割って入った。
「た、たっくん!?」
雫が驚いた表情で俺を見つめる。
そして天野さんも乱入者に対し、鋭い視線を向ける。
「たっくん? ま、まさか! あんたが雫さんの好きな人か!」
「違うよ、俺はただこの人と知り合いなだけ。ただ度がすぎてるかなと思ったんだよ。彼女も困っているようだし、今日はもう帰った方がいい。まだ彼女に迷惑をかけるつもりなら職員室まで一緒に行こうか?」
「くぅ……! わ、わかった……。」
「わかってくれてよかったよ、この事は誰にも言わないから。」
「……」
天野さんはこちらを睨みながら帰って行った。
あんな様子だが好きな人に迷惑をかけたことをかなり反省しているようだったから、今後こういう荒っぽい事はやめるだろう。
そして俺も帰ろうと歩こうとしたがやはりそうもいかなかった。
「ま、待って!!」
「……何かな?」
俺は振り返り雫の顔を見つめる。
思えば雫と向かい合うのは入学式の日以来だったか。 小さい頃俺が惚れた時より成長した美しい顔が俺を見つめて何かを伝えたそうに訴えている。
「あ、あの……さっきはありがと。」
「いいよ、お礼をもらうような事じゃないし。じゃ俺は帰るからまたね、姫宮さん。」
「え……?」
俺がそう声をかけると、雫は目を見開き、口をポカンと開けた。
俺は気にする事なく、そのまま背を向ける。
「待って!!」
再び彼女が俺を呼び止める。
「まだ何かようかな? 姫宮さん。」
「っ……!! ごめんなんでもない。 じゃあね霧海くん。」
「……そっか。 じゃまたね。」
これでいいんだ。俺は彼女と関わるべきじゃない。
そして俺たちはそれぞれ逆の方向へ帰路についた。
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