第3話 学園のアイドル姫宮さん

 入学しから、半年の月日が経った。最初はなんでこんな高校に来てしまったんだと思っていたが慣れると案外心地良く以外にも俺は充実した学園生活を送れていた。


「おはようー、拓真ー!」


「おう、おはよう結絆。」


 この可愛らしい男の娘は中野結絆、高校でできた俺の新しい親友だ。外見も女っぽいが口調も非常に可愛らしいく、それでいて距離が近いのでコイツと接していると新たな性壁に目覚めそうで怖い。


 そして挨拶をするなり、いきなり俺の膝のうえに乗っかってきた。


「ちょ! お前なぁ」


「ふふ〜ん! ここは僕の特等席だもん!」


「はぁ……まぁ良いけど、俺が周りにそういう趣味があると思われるだろ」


 最近は毎朝コイツが俺に過度なスキンシップを取る様になったのでクラスメイトからはそっち系の人間だと思われ始めている。


 今もクラスメイトたちがジロジロこちらを見てきて居心地が悪い。


「別に良いじゃん! これが僕と拓真の友情の証なんだから」


「良くなーい」



 そんな風に結絆と楽しげに話していると、登校してきた涼と由紀が腕を組みながら近寄って来た。


「はよー、結絆、拓真……って相変わらず仲良いなお前ら」


「はよ、そういうお前らも朝からお熱いこって」


「そりゃそうよ、恋人同士は朝腕を組んで登校するのは当然じゃない。」


「お前ら学年でバカップル認定されてるからなー」


「ほんとね! 姫宮さんにも負けないくらい有名だよ?」


 その名前を聞いて一瞬動揺しかけたが悟られない様に上手く隠した。


 あれから雫とは話していない。向こうも心なしか俺を避けている様な気がしたのでこちらも下手に関わらない方が良いと判断した。


「いやいや、姫宮さんは凄すぎるだろ。もうすっかり学年のマドンナだぜ?」


 姫宮雫は容姿端麗、スタイ抜群、成績優秀と非の打ち所がない完璧清楚系美少女として学年の男女共に好かれていて、恐らく彼女の名前を知らない者はいないだろう。


 今もクラスメイトに囲まれ、彼らと楽しそうに話している。


「ほんと姫宮さん人気だよなー、俺も一度話したことあるけどとんでもなくいい人だったぞ」


「私も少しだけ話したことあるわ」

 

「いいなー……僕まだ話したことないよー、拓真は?」


「ないな」


 コイツらには俺と雫が幼馴染だったことは伝えていない。伝えれば弄られそうだし、何より彼女に迷惑だと思ったからだ。


 すると一瞬ボソッと声がきこえた。


『うそつき……」


 声がした方向に振り向くとそこにいたのは友達と楽しそうに団欒する雫だった。


「……まさかな」


「ん? どうしたの拓真?」


「いやなんでもない」


 そうだ、そんなはずない。 


 

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