天、還る

砂糖醤油

天、還る

 私には特等席がある。

無論、それにずっと浸り続けているほど暇というわけではないのだが。

どの生物にだって癒しの時間があってもいいだろう。


 夕陽が照らされる頃合いを見計らって私は駆け出す。

空にはまだ雲があるが、昨日と違って雨は降っていない。

良く見えないが夕陽に照らされる鉄橋の中を人の影が行き来している。


「~~~」


 何かを楽しそうに話しながら子供たちが走っている。

元よりそれを聞き取るような聴力も頭もないが、別にそれでいい。

人がどんな会話をしていようが、私には関係ないからだ。


 私は元より人間というものが嫌いだ。

全て自分たちのいいように世界を作りかえ、気に入らなければ何でもかんでも壊す。

それが幾つもの犠牲の上に成り立っているのかなど考えもしない。

子供だってそうだ。

いや子供に至ってはもっと酷い。

彼らは何も知らないから無邪気に命を、自由を奪える。


 けれど私は同時に、人間に感謝している。

風景を作る事ができるのは自然と人間しかいないからだ。


 空が、人が、橋が、オレンジ色に染まっている。

そこには個性も種族も存在せず、いろだけが残る。


 ―――ここが私にとっての特等席。

草場に自分の体の色を溶かして、私は喉を鳴らしてみせた。

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天、還る 砂糖醤油 @nekozuki4120

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