時忘れ 抱きしめあって 薔薇の陰

クララ

それはあなたか花か、想い咲く庭にて

薔薇の庭 震えるまぶたの その裏で 見る夢や君 今かきいだ


振り返り はたと見据えた その笑顔 こぼれる花に 気づくまもなく


花揺れて こだまするのは はしゃぐ声 満たされた午後 遠いあの日の


緩やかに 白きフリルの ドレスかな あなたか薔薇か 笑っているのは


甘いのは 花だけなのか 薔薇の庭 溺れてごらんと 囁くあなた


はらはらと 花びらは散る 君の胸 唇添わす 地上の楽園


気だるげに 俯く姿 愛しくて 棘もろともに 胸に閉じ込め


その香り 心の底が 溶け出して 君であふれる 花の頃かな


たおやかな 白きうなじに 食らいつく 香り立つ肌 指でなぞって


咲き乱れ 世界をべる きみの熱 あらがえるわけ あるはずもなく 


濡れた頬 朝露だよと 微笑んだ 幾千の花 静かに揺れて


何もかも とどまることなく 変わりゆく この胸の中 きみを除いて


耳鳴りの ように響くは 誰の息 朽ちゆく花か 焦がれる僕か


色褪せた 想いも花も 悩ましく ただきみ想い 日々は過ぎ行く


夢の中 忍び込むのは 甘き残り香 あなたを想う 春の明け方


花園の 微睡まどろみの中 見たものは 夢か未来か でもすべて君


靴音は 心の真ん中 貫いて 花こぼれる向こう 待ち人の笑み


ようやっと 温もりもどる 腕の中 ほころぶ花に 吐息こぼれて


時忘れ 抱きしめあって 薔薇の陰 その一輪に 僕らもなろう 


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