不審者情報
「先生、ごめん。今日は学校行けない。」
深雪さんが、熱を出した。
ここ数日、月代さんと私と深雪さんの3人で一緒に帰っているのだけど、コミュ障の深雪さんは、元気な月代さんと一緒にいると疲れてしまうようだ。
「大丈夫?ごはんとか用意しておくね。病院いけたらちゃんと行くんだよ?」
「ありがとう。病院くらいならいけると思うから、行ってくる。先生、今日は早めに帰ってきてね。月代さんだけじゃ不安だから。」
正直今日は自分の心配よりも深雪さんのことが心配だ。
「うん。急いで帰ってくるからね。何かあったらすぐ教えてね。」
深雪さんに朝ごはんを食べさせて、学校に向かう。車は使えないので、電車で行く。
今日は担任の先生が通院で遅れるとのことだったので、代わりに出欠をとる。
深雪さんがいないのはもう知ってる。お母さんのフリをして深雪さんの携帯から事務室に電話をかけた。すっごく申し訳ない気持ちと気まずさでいっぱいだった…
何人か欠席がいるなあ。そういえば隣のクラスの先生も休みらしいし、風邪でも流行ってるのかな。深雪さんにはちゃんと病院に行ってもらおう。
あれ、月代さんもいない。
月代さんは連絡がないから、多分遅刻だ。あの子は意外と頻繁に遅刻をする。朝が苦手らしい。
今日も変わらず、平和に授業が終わった。特にお仕事もないので、日が沈まないうちに帰ろう。
発車前の電車の中でスマホをいじっているいると、ラインの通知がなんかすごい溜まっていることに気がついた。友達20人くらいしかいないし、グループに入ってないので不思議に思って確認したら、送り主は全部深雪さんだった。
なんかあったら連絡してって、私が言ったにもかかわらず確認しなくて申し訳ない。
何か食べたいものとかあったのかな。そう思ってラインを開いたら、想像の斜め上の内容だった。何回も不在着信があって、その後で恐ろしいことが書かれていた。
変な人が家の近くでうろついてる…って。
服装は全身黒で、顔はよく見えなかったらしい。
マジで怖過ぎる。警察に相談するべきなんだけど、まずは一旦家に帰ろう。
アナウンスと共に電車の扉が閉まる。
ギリギリで見覚えのある女子高生。月代さんが駆け込み乗車だ。先生としては注意しないといけないんだけど、知り合いがいた安心感でホッとしたので見逃してあげよう。
彼女は私に気付いて、目の前に来た。
「先生、こんにちは!今日は早いですね!」
「うん!こんにちは!今日はね、み…」
「み?」
うわ!いけない。深雪さんが風邪をひいちゃったから早めに帰るんだ〜って言おうとしてしまった。
「みってなんですか?」
「み、み、ミミズク!そう!ミミズクが具合悪いから!」
なんだよミミズクって!でも思いつかなかったからしょうがない!
「へえー!先生のお家ミミズク飼ってるんですね!今度行ってみたいです!私鳥好きなんです!」
「あ、あはは…卒業したらね。」
そんな簡単に大人の家に入ろうとしてはいけません!可愛いから心配になっちゃう。深雪さんといい、どうして私の周りのJKは私の家に来たがるのかな。
気がつけばもう最寄り駅。月代さんと別れて、早足で家に帰る。
「ただいまー。深雪さん具合どう?」
「おかえり、先生。体調はまあ一旦平気。それより、ストーカー…」
「あー…大丈夫?家入ってきたりしてない?」
「うん。それは大丈夫。私が近づいたらすごい速さで逃げてったから。」
「え!?危ないよ!」
「大丈夫。」
結構危ないなあ。本当に早く警察に行かないと。
「明日警察に相談しに行くから、ちゃんと鍵かけて、なんかあったらすぐ110番ね。」
「はーい。」
深雪さんはリビングでソファに座っているけど、少しぐったりしている。
ご飯を作ったけど、食べれるかな。
「お粥あるけど、食べれそう?」
「うん。ありがとう。」
2人でご飯を食べる。
深雪さんが思い出したかのように突然手を止めて話し始めた。
「ねえ、先生、本当にストーカーに心当たりない?」
「な、ないなあ。」
「男の人じゃなくて、女の人…かも。」
女の人のストーカー!?尚更信じられないなあ。友達少ないし、ちんちくりんだし同性に嫌われるタイプじゃないと思うけどなあ。いや、むしろ逆か?好かれてる??もっとありえないな。
「今日見たストーカー、女の人っぽかった。細いし、身長私より低かった。」
深雪さんは何センチくらいかわからないけど、結構高い。だから、男の人でも深雪さんより低い人はいると思う。
でも、本当に女の人って可能性もあるかも。
「心当たりがあるなら、とっ捕まえて直接警察に突き出せばいい。」
割と過激なことを言うなあ。
「あ、今日、月代さん学校きた?」
遅刻はしたけど帰りに遭遇したのできてはいると思う。まさか、月代さんを疑うことはしないだろう。
「先生これ言ったら怒りそうだけど…
ストーカー…月代さんかも。」
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