深雪さんはクール系?
それは、学校での彼女のことだ。
私の家に来てからも、学校で彼女はずっと1人。
一緒に住んでわかったのは、深雪さんは静かだけど、1人が好きなタイプってわけでもなさそう。
「そういえば、どうして一人ぼっちだったの?やっぱり…お家のことで悩んでた?」
「い、いえ家のことではないです。ただその話が合わないと言うか波長が合わないと言うかその、やっぱあれですよ。IQが10違うと話噛み合わないって言うじゃないですか。だからやっぱり私はIQが高すぎるのかなって」
めっっちゃ早口な上に顔真っ赤にしてる…わかりやすすぎる。
「ただのコミュ障…」
「違いますから!」
「なんで私とは話せるの?」
大人とは話せるタイプのコミュ障なのかな。私もちょっとそういうとこあるし。
「先生は優しいし、かわいいし、話しやすいです。」
それはずるいでしょ!
「か、かわ、かわわわないでください!」
「言えてないよ。」
すっごい腹立つけど、深雪さんはなにも悪いことをしていない。私が勝手に自爆しただけなので、何も言えない。
大人の私に対しては生意気を言うくせに、なんで同級生となかよくなれないのかな。
「ねえ、優しくてかわいい人なら、クラスにいっぱいいると思うよ?例えば月代さんとか。」
先生的には、同じクラスの子ともう少し仲良くしてくれたらうれしいなって思います。かわいい女の子同士が仲良くしてるのは眼福だしね!
月代さんは本当に誰とでも話せるタイプだし、あと私に敬語を使ってくれる!きっと深雪さんにも優しくしてくれるはず。ああいうタイプの女の子と学生時代に出会っていたい人生だった。
深雪さんにチャンスを逃してほしくない。
「月代さん…?確かに優しくて、か、かわいいけど…友達多いし、」
ごにょごにょ。
なんか小さな声でぶつぶつ言っている。こりゃ厳しいな。これから行事とかいっぱいあるし、深雪さんが辛くならなければいいんだけど。
一緒に暮らしている生徒が不登校って、いやだな。
そもそも生徒と一緒に暮らしてるっていうのがおかしいけど。
まあ、深雪さんにもいろいろあるんだろうし、深入りもよくないよね。
「先生、今日は一緒に帰れる?」
深雪さんは私をアッシーくんだと思っているらしい。たぶん伝わらないので突っ込まないけど。
一緒に帰っているのがばれたら危ないので本当はご遠慮いただきたい。そして今日は残念ながら私の帰りが遅い。
「ごめんねー、今日遅くなっちゃいそうだから、先帰ってて?」
目論見が外れた深雪さんはちょっと残念な顔をする。そんな顔をしたってだめなものはだめなんです。
「うーん、まあ、しょうがないか。先生、お仕事がんばって。」
「うん!ありがとう!じゃあ、行ってくるね。」
今日は電車で行くので、早めに出る。
学校には8時くらいに到着した。
今日は少し曇っているせいか、空席が目立つ。深雪さんはちゃんと来るかな。
始業のチャイムが鳴る30秒前、汗だくの深雪さんが教室に滑り込んできた。
ギリギリだけどちゃんと登校してえらい。
お、隣にいる月代さんに話しかけられた。
やっぱりきょどってしまっている。どうにかして月代さんと仲良くなってほしい。
とくに変わったことはなく、一日が終わる。私はテストを作成するために学校に残る。夕暮れは通り過ぎて、もう外はまっくら。
今日やる分はおしまい。
あー、肩が痛い。明らかに10代のときよりも体がもろくなっている。
肩を回すと不穏な音がする。
職員室を出て廊下を歩くと、2年1組の教室から光が漏れていた。
気になったので覗いてみると、月代さんが勉強してた。
「お、えらい。おつかれさま!」
私の声に気づいた月代さんは顔を上げる。
「先生、ありがとうございます!」
「もうすぐ学校しまっちゃうから、出るとき戸締りと電気よろしくね!」
「いや、もう帰ります!先生、電車ですか?」
「うん。電車です!」
月代さんと一緒に帰ることになった。もう暗いし、この周辺は少し治安が悪いから、女子高生を1人で歩かせるのはちょっと心配だ。月代さんかわいいし。深雪さんとは違うタイプの美人さん。どちらかというとカワイイ系…何考えてんだ私。
「せんせ、どうしました?」
思考に耽っていると、月代さんのにこやかな笑顔に襲われた。
「わ、いや、なんでもないよ。月代さんかわいいし、ここら辺を一人で歩かせるのは危ないよなーって思っただけ。」
「え?かわいい…って言いました?えへへ、照れちゃいます…」
月代さんは恥ずかしそうに下を向きながらも、上目遣いで私を見つめる。
か、かわいい。この子、リアクションまで100点満点美少女だった。男子みんなこの子好きでしょ。
深雪さんに同じことをしたらどんな反応するのか気になるな。
さっきからなんとなく、深雪さんと月代さんを対照的に考えてしまう。なんとなく、そういう感じがある。
同じ方面の電車に乗る。
「あれ、月代さん、駅どこ?」
なんと、月代さんと私の最寄りは同じだった。ということは、もしかしたら深雪さんと幼馴染だったりして?そこまではないか。最寄り、中学校めっちゃあるし。○○第六中学校まである。結構多いほうだよね?これ。
「じゃあ、先生、私自転車なので!お気を付けて、さよならー!」
「うん!またねー!」
月代さんは自転車で駆けていった。結構飛ばしてるな。危ない。
煌びやかな駅前を過ぎると、一気に雰囲気が変わる。おばあちゃんちみたいな家がたくさん並んでる住宅街、野良猫が出没する小さい公園。私の家の周りはめっちゃ静かで、人がいない。
夜ごはんの匂いがする。
なんだろう。カレー?
静かなんだけど、すこし違和感。猫かな?
ここら辺本当に人いないんだよなあ。
…セーラー服のおじさんはみたことあるけど。
…なんか付けられてる気がする。でも、後ろを振り向いても誰もいない。
普通に怖い。ちょっと早歩きで家に向かう。
「あ、深雪さん?」
家の近くでビニール袋を持った深雪さんに遭遇した。
わあ、すごい安心感。深雪さんなら、何かあっても守ってくれそう。
いやいや、逆でしょ逆。大人なんだから私が守らなきゃじゃん。
「あ、先生、おかえり。なんでそんな息切れてんの?」
「いやその、なんか付けられてる気がして。」
深雪さんは私の手をぎゅっと握って、目を見て言った。
「私がいるから安心して。変な人が来ても倒してあげる。」
あまりにも急だったので、ちょっとドキッとしてしまった…深雪さん背高いし頼もしい。
年下にこんなこと言われるなんて、私どんだけ弱そうなんだ…
特に何も起きずに、無事に家に着いた。
「深雪さん、今日のご飯はなんですか??」
「今日は肉じゃがだよ。」
「わーい!」
教え子に胃袋をつかまれた。
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