モノクロの世界から色を見つけるまで

梅谷理花

羽化

あと五分 水銀の脳鉛の身 毛布の中でもどかしくおり


水銀の鉛の重さ抗えず 胸には「だめだ」このままいては


「無理するな」「怠惰はやめろ」矛盾する もう疲れたよ辞める、辞めるの



重なった命弱まる知らせまで 鞠がてんてんどこまでも落つ


根なし草どこにいたとて筋違い なら今だけはそばにいさせて


朝まだき静かな終わり駆け寄ると息なきあとも微笑んでいた


粛々と最後はなんて美しい ゆっくり休めと花をたむけた


埋めようか悲しみふたつ重ねてさ 亡くした│へこみ 根なし草│



揃う声いただきますと手を合わせ 亡き人の影椅子に重ねて


そこにいるただそれだけでいいという 本当ほんとにそれで許されるのか


振り捨てた 成すべきだったいやなこと そんなお前にヒト名乗れるか?


もやしより弱いちからで寝返りす 自責という名のいしをいだいて


雪の下くまか、かえるか こんこんとねむり続ける春など来ない



「共に行こ」断れず外、喉に春陽光に逢い歩き始める


イヤホンをバリアのように大音量 歩くだけなら造作もないわ


なんになる傷は深くて歩くだけ それで変わるの?到底無理だ



足元に白き野の花鍵開けて 川のせせらぎ届き始めた


何を見ていたのかと問う 何も見ていなかったのだ 今、目が開く


梅の花キジバトの声 あぜ道で祝福舞うはモンシロチョウだ


忘れない白き野の花あざやかに 心のくもり晴らす霹靂

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モノクロの世界から色を見つけるまで 梅谷理花 @UmeyaRika

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