高校時代

@Nagasuka

第1話

どうしようもない時は缶ビール開けよう。ぐびぐび飲めるわけじゃないけど時間をかけて。ちょうど友達が置いてってくれたのが2本ある。ほんとは1人で飲むつもりじゃなかったけど。


若苗とは高校からの仲だった。

初対面はまだ幼くて、何と言うか、地味な子だなって思った。クラスは違ったけど、部活が一緒で出会った。一緒にデッサンしたり絵具を貸しあったりしたっけなぁ。

黒髪のおさげ。そばかすとニキビが頬にあって、本来コンプレックスになるものなんだろうけど若苗には可愛く見えた。

高校に入学してから半年、窓越しに運動部を眺めながら運動部を筆を洗ってた時だった。若苗が「親友でしょ?」って言ってきた。文脈は忘れちゃったけど、その時心がほの暖かくなったんだ。


凛とは高校からの仲。一眼であ、いい子だなって思った。直感?

色白で垂れ目で、ショートカット。まだ15さいなのに大人っぽく見えた。

あ、姿勢が良かったんだ。入学式の喧騒の中、背筋がしゃんとしてて他の子から目立って見えた。それこそ凛とした雰囲気で、惹かれた。

部活見学に行ったらいて、嬉しかった。

半年後、夏休みに親友でしょって突拍子もなく言ってみたら一瞬固まった。そのまま会話は流れたけど、凛が喜んでたのはちゃんと私、分かってた。


高校3年間の半分は若苗との思い出かもしれない。クラスは1回も同じじゃなかったのに、楽しいことの大半は若苗とだった。

2人だけでも世界が広がる。コンビニ、体育の先生、ファミレス、宿題、男子の話、クラスの嫌な女子の話、修学旅行、若苗となら何でも面白かった。

夕方に学校から駅までの商店街を若苗と歩く。空は水色と紫とピンク色。きれいだなぁって言って帰る。街灯のオレンジの明かりが影を伸ばす。爆笑しながら闊歩する。2人なら怖いものはなかったんだ。


凛とは違うクラスだったけど修学旅行の夜、こっそり部屋に招いた。自由時間だったから悪いことはしてない、はず。

凛はクラスで浮いていた。あからさまなものじゃなかったけど、凛だけ苗字+さんで呼ばれたり、体育で2ペアの相手を避けられたり。

凛はそれも笑いにしてくれてたけど、ちょっと痛々しさがあった。みんな自分とは違うものを避けるんだ。凛はみんなより大人っぽかったもんね。

ベランダに出て、海と夕日が交わるのを見る。青とオレンジが溶けていく。空はもう暗くて、それが余計に夕日を目立たせていた

私の隣で凛はそれをじっと見つめる。白い肌に桃色の頬、繊細な鼻筋がスッと通って、美しい。瞳はオレンジ色に輝いて茶色いまつ毛がくるんとカールする。

私はその情景をずっと忘れない。

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