第02話 カーポート

鍵交換の親方のエピソード その2


前に書いたけど、エクステリアもやっている。

アルミ工事関係だね。


とある農家を営む家から頼まれて、屋根付きカーポートの依頼を請けたときの話。


親方の同業者からの依頼で、近県の仕事が回ってきた。

同業者は、ほぼ逆方面の仕事に行くために対処出来ない為らしい。


親方が先方へ訪れた最初の印象。

(ここに必要か?)だった

土地も広く開放的、農家さんの袋詰したりの建物のが並ぶ。

車は大体そちらに入れていたりするからね。

挨拶をして話しを聞くと、息子に土地を与えて家を建てたが、車庫だけは青空駐車だからと言われたので、息子を伴い伺う。


ゆったり目の土地に、広めの平屋建て、敷地の左奥が駐車場になっていた。

その奥は藪か森が広がっている。


どんなタイプが良いかと、多種のメーカーカタログを持参した。

普通に、屋根だけのや箱型のやら色々ね。

一般の住宅規格には合わないから、一台で柵が上に上がるのとかは、パスで。

結果的には箱型で、シャッターは自動で4台入る大型なモノを選ばれた。


後日見積を提出、直ぐに契約となった。

設置場所は、家の方と息子さん立会で決めた。

裏側が藪っぽいけど、見えなくなるので関係無いだろと。


材料を調達し工事を開始したのだが、

スコップで掘るじゃろ、確実に硬いのに当たる。

最初の作業は大変なので、3人で掛かったが、

全員のスコップに何か硬いものが当たる。

少しづつ鋤取りしていくと、かなり難解なモノが出てきた。

石の大きな一枚板、それも加工をされているような感じ、何か謂れでもあるものかと家人を呼びに行く。

「こんなの出ましたが、何か謂れとかありますかね?」と聞く。

家人の顔を見るが青から白け始めている。

つまり、面倒な事有りきだと無言で言っている。


土地の曰くやら年配層は信じるが、若いのは痛みを覚えていないから暴走するんだよね。

息子さんがね、「石なんて壊せば良いじゃないか」とね。

親方は「契約にもない事は出来ません」とやんわり躱すが、屁理屈を言い出す始末。

黙っていた家人も、息子を諫めるが更にヒートアップ。

「俺がやってやる!」と

眼の前で、親方の持ってきた削岩機を手に、勝手に岩を割り始める。

岩自体は、大きめで天板みたいに平らに加工されていた。

ただ、上を歩くと真ん中が薄いのか、音が反響していたと。

息子は真ん中に狙いを定め、削岩機を起動する、親の止めるのも聞かずにだ。

ダダダと激しい音の後、突然落ちていく音がした。

岩が割れて穴が空いていたよ。

音の響きからいって、かなり深い、多分だけど、昔の井戸かな。

その時、ゾクッとした、職人も家人も一様に震えた。

開けちゃいけないものを開けた、そんな感じ。

割りと直ぐに気付いて、消防に電話してレスキューをお願いした。

仕事どころでは無いからね。

消防が到着し、中に降り、息子を引き上げた。

その段階で、意識不明、あちこち複雑骨折らしかったが、病院で詳しく検査しないとって事でした。

親方の削岩機は大破していた。

家人は削岩機は弁償しますし、今日の分もお出ししますとなり。

ある程度、息子が回復するまでは延期となった。


二週間後

家人より連絡があり、伺うことにした。

契約解除を言い渡される。

掛かった費用と、車庫は購入済みなので、それも買い取って貰い現品はお渡しした。

削岩機の代金と、お詫びに少し包んでくれた。


これで、精算完了。


息子の容態を聞いたが、話したがらない。

悪化したんだろうなと予想した。

意外にも家人から「どなたか霊能者を知りませんか」と聞かれた。

一瞬、私と先生の顔が浮かんだが、「心当たりありませんね、神社とかお寺に相談されたらどうでしょう」とだけ答えたとか。

絶対に面倒な事に巻き込まれると思ったらしい。


仕事行って契約したのに、流れた話なんだが、需要あるか?って聞かれたけど、大変有難く頂きましたよ。


惜しむらくは、その案件を持って来なかった事かな。

持ってきた場合、あの人は遠慮なく請求する姿が目に浮かぶ。


親方の話 その2 カーポート


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