親方たちが垣間見た世界

工務店さん

第01話 鍵交換

先日から同行している親方の話

彼は建物のサッシュ(窓やドア)を扱う業者、

カーポート等のエクステリアもやっている。


今回聞いたのは、ある不動産会社からの依頼話。


そこの会社との取引は長く、親方の若い頃からだとか。

網戸の張替えやら、物件のアルミ工事、ベランダや庇やらも取り替えたりしている。


久しぶりに社長以外から電話を貰い、事務所に行くと、若い営業が待っていた。

余り面識は無かったが、普段打合せする担当も居たので、話しを聞くことにした。


リフォーム済の物件の鍵の交換だった、防犯上以前の住人に凸されるのを防ぐ為にも、必須の事なのだ。

たまにだが、交換を契約者判断にする時もある。

当然、料金は別途になる。

事前に危険性を問うが、引っ越しで物入りの時だから、出費を押さえたいからと拒み、後に厄介なことに巻き込まれるケースもあるので、記憶の隅に止めて置くことをオススメする。


指定のマンションに到着、部屋番号を確認、預かった鍵でドアを開ける。

ノブを外し、中のシリンダー毎交換する。

手慣れたもので、正味15分程度だったという。

持ち込んだ道具を片付けていた、その時は鍵交換したドアに背を向けて。

『ガチッ』

突然大きな音がした。

振り返るも変化は無い、が習慣で握り玉を掴み回す。

ガキっと硬い反応、つまりロックが掛かっている。

内鍵は動いていない、初期時「I」縦向きだったからだ。

室内から、掛けると「-」と横向きになる様にしてあるからだ。

だとすれば、外部からになるが、助手は来ていないし、

不動産屋に提出する関係で、鍵は袋の中だから、あり得ないんだよ。

不気味に思ってみていると、再度『ガチッ』と聞こえた。

さすがにね、怖くてね。

でも、このままにしてはいけないと思って、

念の為に、ノブを分解してみた。

するとね、有り得ないモノが出てきたんだ。

問屋から今日持ってきた新品だ、決して中古や開封済みの品では無いんだ。

そもそも、先程は無かったのだから。

握り玉と一緒に引き抜いたシリンダー、そこにね、白と黒の長い髪が絡まっていた。

程よい潤滑油が染み込んで、滑りテカっていて、思わず玄関に投げてしまった。

有り得ないんだよ。

そうも言ってられないからね、恐々ビニール袋に全部を入れて、旧の鍵に付け直して鍵を締めて引き上げた。

不動産屋で事情を説明し、実物を見せたら納得してくれた。

親方も、不動産屋も仕事を邪魔されたからね、両者で問屋に行くことにした。


問屋

閉店間際だったが乗り込んだ。

親方は馴染みだったので、いつもの調子で店主が出てきた。

その時、親方は何かおかしいと思った。

今朝方、寄った時には、店主の姿が無く、従業員がいて対応してくれた。

見回すも店内に、従業員の姿は無い。

「店主、今朝方ここで玄関のドアの鍵一式を購入したんだが、あれは何だい」

怒り気味に言う

「あれ、親方来てくれたんですか、朝からいたけど会わなかったね」

え?何か食い違っている

「いや、あんた不在だってんで従業員が対応してくれたんだ」

「まって、うちは従業員いないぞ、俺と女房とでやってんだ、たまに先代が対応するだろ」

確かに、高価な品も多いから、他人を入れることはしない。

「俺は誰と取引しちまったんだよ」

「何を持って行った?伝票あるだろ出してみな、こっちと照会するからよ」

カバンから出し渡す

店主が「あれ?」と漏らす

「この伝票、今のじゃねぇな、おかしい、ちょっと待っててくれ」

と奥へ戻る

先代と一緒に、過去の伝票を持ってきた。

調べる中、先代が代替わり時期の伝票の最後の営業、そこに今日の日付の伝票があった。

昔ながらのカーボン仕様だから、青い文字で重ねたら同じ。

店主も先代も、「なんでこんな」と漏らすが、先代が何か気づいた。

「この文字、婆さんの字だ」

「確かにおふくろの字だな」

二人して親方へ振り返る

「その従業員て女性だったか?」と先代

「いや、若い20代後半の男性だったよ、元気に挨拶する好青年だった」と親方

先代も店主も「心当たりねぇな」と

思い出した様に先代が「持ち帰った品みせてくれ」と言われ

カウンターに置き、開封する。

髪の毛の絡まったシリンダーをみて、顔を顰めるが、何かに気づいた先代。

「親方悪かったな、新しいのを出すから、今日はこの辺にしてくれ、後日説明するからよ」

と先代から言われた。


ここまで話してから、「でな、結構経つんだが、まだ説明貰えてないんだわ、気長に待つことにしたよ」


今はここまで、進展がありましたら追加を書きます。

この親方の変な話、他にも数点あるので、聞き取りしたらまとめる予定です。




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