第2話
「グスン、可愛いって、初めて言われたのです」
「いや、可愛って、猫ちゃんのお家の籠を抱えて、リックを背負って・・・その茶色かかった金髪を三つ編みにしてるのもポイント高いよ。目は薄い水色ね。綺麗よ。ロザリー様はおいくつ?」
「13歳なのです」
「まあ、妹と同じだわ。皆、大事に運ぶわよ。馬車が通れる道に出るまで、この輿に乗って下さい」
「ヒィ、畏れ多いのです」
「「「「可愛い!!」」」
冒険者グループ「令嬢護衛隊」、女性だけで構成された8名のグループである。
令嬢の護衛に特化した仕事を請け負うことで、冒険者業界を生き残ろうとしている。
「名前、分かりやすいでしょう」
「はい!」
「ニャン!」
☆一方、その頃、大サンガ王国女神教会
俺は大サンガ王国のロメオ・ダイサンガだ。
数百年前に、この地域の国々数十か国を統一した栄えある大王国の王太子だ。
以降、魔王軍を寄せ付けず。
繁栄を誇っている。
これからもだ。
ロザリーを追放し、幼馴染みの公爵令嬢ナタリーと婚約をした。
ナタリーが女神教会を掌握し、ますます王権が強くなったぜ。
女神教会を王家で接収したが、結構、お金を貯め込んでやがった。
全く、ロザリーを追放して良かったぜ。
教会の業務は大丈夫かって?
孤児のロザリーでも出来たのだから、公爵令嬢のナタリーなら、簡単だろう。
「ナタリー、頼むぞ」
「ええ、真の聖女の実力を見せて差し上げますわ」
しかし、初日から、躓くことになる。
「あの、聖女様、娘が生まれたので、届け出に参りました」
「届け出?何」
「聖女様が、戸籍係をやっておりましたが・・」
「あ、そこにおいておきなさい」
「あの、この子に祝福を」
「まあ、可愛い子ね。おめでとう」
「いや、そうじゃございません。聖魔法の祝福をして頂きたくて・・病気になりにくいと評判です」
「・・・病気になったら、来なさい。私は治癒魔法よ!」
☆数日後
女神教本部と支部の連絡手段である怪鳥が空から来庁した。
しかし、ナタリーは、怪鳥を見たことがない。
申し送りも何もしないで、ロザリーを追い出したので、魔物としか捉えられなかった。
バタバタバタ!
「ヒィ、魔物が来たわ!」
「グル、ゲゲゲゲゲ!」(書簡持って来たぞ。寝床の提供とご飯を頼むぜ!)
「化け物!ロメオ、助けて!」
「エイ!あっちにいけ!魔物よ!」
「グル、グルグルグル、ゲゲゲゲ」(あの三つ編みの聖女いないのか?二度と来るものか!)
ポイ!と書簡を投げ捨てて、怪鳥は去って行った。
「ロザリーめ。魔物と通じていたな。ナタリーもう大丈夫だ」
「書簡を落していったわ。何、この文字」
「大陸共通文字だ。陛下が読めるから、渡しておこう。ロザリーめ。黒猫だけではなく、魔物で連絡を取り合っていたな」
・・・この書簡は、魔族との大戦が終了したことを通達する大事な内容が記されていた。
「陛下、怪鳥が落していった書簡でございます。大陸共通文字で書かれております」
「ロザンナを呼べ・・・いや、追い出したのだな」
(・・・ワシも少ししか読めないが、何、大したことは書いていないだろう)
陛下は、いつも、ロザリーに読ませていたのだ。しかし、もう、いない。
「フム、大したことない内容じゃ」
「さすが、陛下、これで安心です」
聖女ロザリーは、大サンガ王国の統治システムそのものだったのだ。
少しづつ、王国の歯車が狂っていくことになる。
しかし、如何に、ロザリーが有能だったとしても、一人で国を回せるであろうか?
これには事情があった。
☆ロザリー視点、宿屋
コンコン!
「聖女様、お食事をお持ちしました」
ロザリーは、思わず女将にたずねた。
「ヒィ、ここは、聖王国の宮殿なのですか?」
「いや、宿場町の宿屋、中級ですよ」
「ヒィ、お食事、豪華なのです。これはお肉ですか?もしかして・・・最後の晩餐?」
「あんた。どこの田舎者だね。え、大サンガ王国?聞かないね」
「グスン、グスン」
「あ~、泣かないで、もう」
「ニャー、ニャー」
「おや、猫ちゃんにはミルク持って来たよ」
「ニャン!」
大サンガ王国は、数百年前に谷間の国々の間で、大乱がおき。サンガ国が統一し、以後大サンガ王国と称した。
しかし、サンガ王国が統一した国々とは、実は村邑国家であったのだ。
公称、人口1万人、しかし、実数は数千人の国家である。
☆ロザリー道中
「ヒヒヒヒ、女だらけの冒険者グループだ!おじさんたちと遊ぼうぜ!」
「ロザリー様とクロちゃんを逃がすよ!」
「「「はい、リーダ!」」」
・・・しまった!昼間の街道で、傭兵崩れに出会うとは、まだまだ、大戦が終了したばかりで、治安が悪い。
ロザリー様とクロちゃんを逃がす。
私たちが乱暴される標的になってでも、令嬢を守る。
だから、高い依頼料をもらっているのよ。
グスン、だけど、
「皆、抵抗するわよ!リリーは馬車でお客様を逃がすのよ」
「「「はい、リーダ!」」
「ヒヒヒヒ、こちらには、魔法士がいるぞ。無駄な抵抗をやめて、おじさん達と遊ぼうぜ」
「「「ヒヒヒヒヒヒヒヒ」」」
下品な傭兵崩れ数十名に囲まれた。街道には人がちらほらいるが、中には、衛兵隊に連絡しようとする者もいたが、
近場の衛兵隊が到着するまで、数時間かかるだろう。
騒ぎを聞きつけ。ひょっこりと、ロザリーは呑気に馬車から顔を出した。
「遊ぶって、お手玉なのですか?旅を急いでいるから、ご遠慮願うのです!」
「「「「ヒヒヒヒヒヒ」」」
「お嬢ちゃんも大人の階段を登ろうか?」
「ヒィ、悪者さんなのですか?対人聖魔法!指向性ホーリーフラッシュ!」
ロザリーが、手を掲げると、空から、レーザービームのように、数十本、青い光が発せられ、ゴロツキたちの目に直撃をした。
「「「ウワー」」
「目が!」
「今のうちです!行くのです!」
「ええ、分かったわ!皆、行くわよ!」
「「「はい!」」」
・・・・
☆
「貴女、何者?普通、聖魔法は、対人には使わないわよ・・・」
「お師匠様から引き継いだ技なのです。数時間、目が見えなくなるのです。死なないのです!」
「そう・・・」
・・・もしかしなくても、この子はすごい。
その時、見張りから、悲痛な叫び声が聞こえた。
「リーダ、先の村が、アンデットの大群に襲われています!」
大戦中に、亡くなった兵士達ね。迂回するわ。ロザリー様!あら、もう、村に向かっている。
「アンデットさんですね。ホーリダスト!」
「「「「ウゴオオオオオオーーーー」」」
「皆様、良く戦ったのです!女神様の御許に行くのです!」
「「「聖女様!!」」」
傅く村人たちに、ロザリーは首をかしげる。
「フニャ、いつも、国では当たり前だったのです」
「いや、数百はいたアンデットを瞬殺なんて、貴方様は高名な聖女様に違いありません」
☆大サンガ王国国境付近
「王太子殿下!大変です。国境に、アンデット化した人族の群が・・・数十です」
「ええい。ロザリーめ。呪いをかけていったな!大サンガ王国騎士団出動だ!」
大サンガ王国騎士団、200名でアンデットを撃退したが、
負傷者が続出した。
大戦中、長いこと。魔王軍は、ロザリーたち、聖女が毎日放出している聖魔法を「何かヤダ!」と侵攻ルートから外していたのだ。
騎士達は戦いなれてはいなかった。
たまに来る意思のないアンデットは、ロザリーが浄化をしていた。
・・・はあ、はあ、おかしい。
ロザリーを追放してから、魔物が来るし、アンデットまで来るようになった。
「きっと、ロザリーが、何かをしていたに、違いない。聖魔法を使える者はいないか?探せ!」
王太子は、ロザリーが呪いをかけていったと判断した。
この判断ミスが、王国の凋落の原因になる。
黒猫と会話したとして婚約破棄&追放された聖女の話 山田 勝 @victory_yamada
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