黒猫と会話したとして婚約破棄&追放された聖女の話

山田 勝

第1話

「うんしょ、うんしょ!そりゃ!」


・・・私は、大サンガ王国の聖女なのです。この国、唯一の聖女になったのです。

昨日、お師匠様のお葬式が終わったのです。しかし、儀式はお休みしてはいけないのです。

女神教会は、私、一人だけになったのです。



この儀式は、我が教会の秘伝の儀式なのです。

手を上に上げ、「ナニカ」を掴むのです。

天窓を全て開けなければいけないのです。これは、お師匠様の厳しい教えなのです。


そして、

「ナニカ」と聖魔法を混ぜて、国中に、「そりゃ」バラ撒くのです。


これは、数百年続く、秘伝の儀式なのです。


「ナニカ」と混ざった聖魔法が、薄くならないように、休みながら、夕方から夜にかけて、定期的に、8時間、行うのです。


・・・


「ニャン、ニャー」


訂正なのです。教会には、私1人ではなく、もう1人いたのです。


「ふう~、儀式が一段落したのです。クロちゃん。お話するのです!」

「ニャー、ニャー」


「フウ、お師匠さんの後を継いでしっかりと国を守るのです!」


「ニャー、ニャン!」

「フフフフ、クロちゃん聞いて欲しいのです。新しいお魚が捕れる方法を考えているのです。

聖魔法を川にバン!とながして・・」


今日もクロちゃんとお話をしていたら、突然、ドアが蹴破られたのです。


ドン!


王族一家と、兵士達が入ってきたのです。


「ロザリー!見たぞ!黒猫と会話していたな。それで、魔王軍と通信していたな!」

「え、殿下、違うのです!お友達がいないので、クロちゃんとお話していただけなのです!」


「フゥゥゥウウーーー」


「言い訳をするな。現に、黒猫が威嚇をしているではないか?」


・・・王太子なのです。私の婚約者なのです!お師匠様が聖女の待遇改善をお願いしたら、王子と婚約させられたのです!

お師匠様が苦情を言っている最中に、お亡くなりになったのです・・グスン


「父上、いや、陛下、見ましたか?」

「うむ。ロザリナだったか。こやつの後釜の聖女はどうするかのう」

「陛下、公爵令嬢のナタリーがいます。先日、治癒魔法が、顕現しました。元々、孤児が聖女なんて、おかしかったのですよ」

「オホホホホ、伯父上、私にお任せ下さい」

「陛下、従姉妹のナタリーを聖女にすれば、この国の女神教会を王家の支配下に出来ますわ。ロメオの婚約者にいたしましょう」


そして、


「ロザリー、魔王軍と通謀していたことにより、婚約破棄を宣言する!お前は国外追放!その通信機と共に、国中、引き回しの後に、魔王軍に送り返す!

そこで、大サンガ王国はお見通しであると、伝えておけ!」


「ヒィ、違うのです!クロちゃんだけでも、この国に残してくれませんか?」

「フゥウウウ、シャアアアアア!」

「引っ立てろ!」


「「「御意!」」」


・・・こうして、私は、囚人用の馬車に乗せられ、国中を回った後に、この魔王軍が出没している森に、放り出されたのです。


そして、


今、目の前に、四本角(魔王)さんがいるのです!


「ほお、魔王軍は、黒猫で通信していると言っていたのか?」


「ヒィ、私が言ったのではないのです。食べないで下さい!」


【馬鹿野郎!ちゃんと、最新式の水晶通信魔道具があるわ!馬鹿にしているのか?それとも、馬鹿なのか?】


「ヒィ、ごめんなさいなのです!」

「ニャー、ニャー」


「いや、猫ちゃんやお前さんに怒っているのではないよ」


「フウ、クロちゃん・・・だけは、お許し下さいです!」


「ああ、お前さんにも、特に何もしないよ」


・・・安心できないのです。女神信仰諸国と、魔族は数百年戦争をしていたのです。


「私は、どうなるのですか?・・・まさか・・!」


「ああ、腹立つな。スカートの裾を踝まで、降ろして、胸元をしっかり、押さえるなよ。性的にも食べないよ!」


「本当ですか?」


「ああ、ちょっと、待っていろ。今、聖女ちゃんと通信するからな」

???意味不明なのです。聖女様と魔王が連絡を取り合うなんて、あり得ないのです。

女神圏の英雄である現聖女様が・・・「もしかして、魔族と通じている」


「あのな。先週、魔族と人族は講和条約を結んだぜ!」


「ヒィ、何ですって!」


「お前さんの国だっけ?女神圏ネットワークで情報は来ないのかよ?」


「いつも、半年に一度、怪鳥通信がやって来ます・・・」


「ニュース、いや、時事語りの吟遊詩人は?」


「呼ばないと来ないのです」


「だからだよ。知らなくても・・・おっ、通信来たな。講和条約に基づいて、ホットラインを開設したんだ」


「ほっとらいん?」

「ニャン?」


ガガガガー


水晶に、黒髪、黒目の女性の顔が映った。


「ちょっと、アキラ君、また、しょうもない話だったら、怒るわよ・・あら、聖女がいるわね。まさか!アキラ君、こんな小さい子に?何が目的?身の代金?それとも、彼女をダシに何をしたいの?」


「あー、しないって、もっと、ムチムチなじゃなくてよ。聖女ちゃん。実は・・・」


・・・・・


「ロザリーちゃんって言うの?大サンガ王国、聞いたことないわよ」


「怪鳥通信は、支部番号、第0892で来るのです」


「えっと、08で始まる番号は、僻地ね。調べて見るわ」


魔王様が、聖女様とお話をしてくれたのです。


私を、聖王国に引き取ってくれるそうです。

嬉しいのです。



「ニャー、ニャー」

「お、猫ちゃん。おいで、お魚あるよ!」


・・・悪い魔族さんではなさそうなのです。


しかし、魔王さん一人しかいないのです。

もしかして、私と同じでお友達がいないのかもしれません。

親近感が湧くのです!


と思ったら、魔王サマが、「お~い」と言うと、人が林から出て来たのです。


「おう、イワンさん。彼女を女性の天幕まで、案内してあげてくれ」

「御意」


「ヒィ、魔族領に人がいるのです!」

「ハハハ、私らは亡国の一族でして、魔王様にお仕えしているのですよ」




・・・・


「行ったぞ。骸骨博士、大丈夫だぞ」


ゴソゴソ、


暗闇から、骸骨のアンデットと、ダークエルフや、体に角や動物の一部がある。魔族兵たちが出て来た。


「フウ、あの聖魔力、少々、キツかったのう」

「あの女、何者ですか?聖王国の聖女と同じ気配を感じました」


「ああ、只者ではない。しかし、骸骨博士、間違いないか?」


「ええ、長年の懸案が分かったのじゃ。あの谷の奥からタダ漏れしていた聖魔法はあの子の聖女一族の仕業だのう。観測したら、谷から、聖魔法の発生源が消えておったわ。目の前じゃったがのう」


「しかし、ただで聖王国に引き渡していいのですか?」

「ああ、いいさ。講和条約結んだしな。それに、あの子が活躍すれば、聖女ちゃんに貸しを作ることになる」



聖女ロザリーは、魔族に降った亡国の人族のキャンプで一晩あかし、翌日には、出立した。


水行4日、船で川を下り。徒歩1日で、国境付近まで到達した。


☆人族、魔族領、国境


「ロザリー、これ、猫ちゃん用の籠だ。リックには、魔石と、干魚も入れてある。水飲むときは、煮沸して冷やしたものを飲め。

魔石を換金するときは、必ず1人で行くな。信用できる人と共に行け」

・・・・ううっ、四本角さんが、お空を飛んで、国境まで来てくれたのです。

クロちゃん用の、フカフカなクッション入りの籠と、魔石も持たせてくれたのです。


「ニャー、ニャー」

クロちゃんはすぐに、籠の中に飛び込んでのです。


「お、クロちゃん。気に入ったか。ロザリーちゃんを守ってやりなよ」


「ニャン!」(任せろ!)


「そろそろ時間だな。俺の姿を見ると、人族は、怖がるから、もう、帰るわ。じゃあな」


パタパタ!


と背中から生えた羽で、お空をすごい速さで飛んでいったのです。


私とクロちゃんは、見えなくなるまで、お見送りをしたのです。


すると、すぐに、冒険者さんたちがやって来たのです。


「初めまして、私は、冒険者グループ、令嬢護衛隊のリーダーのフランソワです。貴女が聖女ロザリー様ですね」

「はい、ロザリーと、こっちがクロちゃんなのです」


「「「キャアーーー、可愛い聖女様!」


ロザリーは、聖王国が派遣した護衛兼案内人と出会い。

生まれて初めて、チヤホヤされた。


思わず口角が上がるが、涙も出て来た。


「グスン、可愛いって、初めて言われたのです」


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