第14話
『ダイアン』その愛称として『ディアン』と呼ばれることがある。
灰白の羽毛、黒いかぎ爪、青い目。
目の前の彼がもつその特徴は、かつてのあの子、ディアンにそっくりだった。
「その……」
「だめだったかな?小さいころはよく呼ばれていたけど」
まさか、目の前の彼は、あのディアンなのだろうか。
15年もの歳月が経てば、その姿は大きく変わるだろう。
しかし、私の中では腕にすっぽりと収まるフクロウの雛のようなディアンで止まっていた。それゆえに目の前の存在に戸惑いを隠せない。
「会談のときも目が合っただろ?」
恐らく私が全体を見渡したときのことだ。特定の人物に目を合わせた覚えはない。
「あ、会談」
それよりも私は公務のほうが気になる。会食の準備はすでに整っているのではなかろうか。
それにアニータもおいてきてしまった。
「俺のことを覚えてるみたいで、うれしかった」
私の言葉を、ダイアンは『思い出した』という意味にとらえたらしい。肩を抱き、さらに距離を縮める。
だが、私はやんわりと押し退けた。
「いえ、あの。一度会場へ戻ったほうがよろしいのではないでしょうか?みんな、心配しているでしょうし」
なにより私は、アニータがあの商人の波から逃れたか心配だった。
「いいけど、道、わかる?」
「え、もちろん……」
わかる、と言いかけた私は口を閉じた。
ここは人気のない路地。当然この先がどうつながるのかは知らない。そして市場でもある大通りには、見たこともない商店が並ぶ。
いったいどの道をどうやってきたのか。助けられた身である私には見当つかなかった。
「また迷子になったら、こんどこそ危険だ。俺が案内するよ」
返事を待たずに、ダイアンは私の腕を引いた。
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