スノーセレナーデ
パ・ラー・アブラハティ
セレナード
空から純白のドレスがダンスを踊りながらヒラヒラと舞い落ちる。窓の下にいる君の頭に白い雪がつもっているのを一人でクスクスと笑いながら、軋む木の階段を降りていく。
肩を震わせて白い息を吐きながら寒そうにしている君の背中をドンッと強く押すと、頭に積もっていたドレスがパラパラと落ちてそれがおかしくて私は大きな声を上げて笑う。
「なんだよ、もうびっくりしたな」
君は目をギョッと開かせながらはにかんで、びっくりしたなと言っているのに優しい口調で私を包み込んでくれる。頭にまだ積もっている純白のドレスを手で振り払って、その手はそのまま下にやってひんやりと冷たい君の手を握る。
私と君の体温は確かに高いはずなのに、純白のドレスが街を銀景色に着替えさせてしまうから、私と君の体温もドレスに包まれて下がってしまう。
「今日も寒いね」
「冬だからねえ。早く春になってほしいね」
「君は寒さが苦手だから冬が大嫌いだもんね。私は好きだけどね、冬」
「どうして?寒いだけだよ、この季節は。いいことなんてひとつもないよ」
「あるよ、君と手を繋げる」
「それはいつでも繋いであげるよ。春夏秋冬いつでも空いてるよ、僕の手は」
「それは春夏秋冬私といる前提なんですか?」
君の言葉をおちょくると耳が真っ赤になるのがわかって、これはきっと寒さから来る赤さではなくて照れから来る赤さなんだろうな。君は、図星をつかれてしまうと分かりやすく熱された鉄のように真っ赤になるから、とてもいじりがいがある。
「そうだとしたら何か悪いんですか」
「いいえ、私は嬉しいです」
「急に翻訳機みたいな喋り方するじゃん。さては照れてるな?」
私も図星をつかれて真っ赤になる。私は照れると言葉が片言になって翻訳機を通したような言葉しか言えなくなってしまう。君と私は分かりやすいもの同士で似ている。だから、こんなにも二人でいるのが心地が良いんだ。
どんな寒さが世界を襲っても二人でいればきっと乗り越えて行ける気もするし、どんな暑さがやって来てもそれも乗り越えれる気がする。君といればどんな災難が目の前から襲ってきても、堂々と真正面から打ち返せて私は万年ホームラン王になれる。
「雪ずっと降ってるね」
「だね、いつやむのかな。これ以上寒くなると本当に困る」
「その時は私が君を温めてあげるよ」
「君が温めてくれるなら、ずっと雪が降っててもいいかも」
「単純だね、下心?」
「どうかな、教えない」
「教えてよ」
「百円ね」
「んー、ならいいや」
君とどうでもいい冗談を純白のドレスを着た街の真ん中で言い合う。街灯が君の横顔を照らして、口から吐き出される白い息がちゃんと見える。しんと静まった世界には君と私の言葉という歌だけが響いていた。
スノーセレナーデ パ・ラー・アブラハティ @ra-yu482
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