第13話 認める

「お待たせしました、カフェラテです」


「あっ」


 背後から店長がやってきて、小百合さんにコップを手渡す。


 しまった。


 いくらお客さんが彼女しかいないとはいえ、レジ前で話し込みすぎた。


 職務怠慢。


 後で怒られるかな。


 そんなことを思っていたら、

「はい、これ麗奈ちゃんの分」

 アイスコーヒーを手渡された。


「え?」


 戸惑う私の背中を押して、

「今お客さんいないし、存分に話してきな」

 親指を立てられました。


「え?」


 尚も戸惑う私。


 対して小百合さんは、

「ありがとうございます! それじゃあお言葉に甘えて」

 さっさと歩き出してしまう。


「ちょっ……」


 仕方ないから後を追いかけ、私たちは店の一番奥のテーブル席に座った。


「……」


 目の前の小百合さんから目をそらしながら、アイスコーヒーを一口。


 うん、美味しい。


「ねぇ」


「……」


 何回でも言う。


 店長が淹れてくれるコーヒーが世界で一番美味しい。


「ねぇってば」


「……なんですか」


 このまま無視を決め込もうと思った。


 けれど、横目で見た小百合さんの頬を膨らませて拗ねている姿を見ちゃったら、言葉を発していた。


 可愛いんだもん。


 仕方ないじゃん。


 はいはい、認めますよ。


 私は小百合さんの仕草を可愛いと思ってしまう病にかかっています!


「私が口説いてるってわかって、嫌な気持ちになった?」


 その聞き方はズルい。


 同時に首を横にコテンと傾けるのもズルい。


 あざとい。可愛い。


「別に……嫌じゃないです」


「そっかーよかった」


 嬉しそうに笑うのもズルい。


 その笑顔も素敵、だなんて思ってしまったんだから。


 小百合さんが「口説いてる」って言ったとき、実は体温が急上昇するような感覚を覚えていました。


 胸が強く脈打ちました。


 あぁ、もうどうしようもない。


 どうしようもないほど、私は。


 小百合さんに関心を持っているだけじゃなくて、心が惹かれてしまっている。

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