第10話 まさかの正体
「えっ!?」
私以上に勢いよく席を立ったさとちゃんが、何故か大きな声を出した。
かと思えば、手を口に当ててフリーズ。
「さとちゃん?」
店長が声をかけるも、
「……」
引き続きフリーズ。
「えっとー……」
取り敢えずこの場をどうにかしなければ。
「この子、今日からここでバイトをすることになった、さとちゃんです」
本人に代わって紹介すれば、
「ほうほう、よろしくねー」
小百合さんは目を細めて微笑んだ。
だけど、その笑顔は私に向けてくれるような笑顔じゃなかった。
なんていうか……営業スマイル。
どうして?
は、今どうでもいいか。
「ご注文――」
「あのっ」
先ほどよりも大きな声で私の言葉を遮ったさとちゃん。
なにごと?
「もしかして、もしかしてなんですけど……サユリさんですか!?」
「えっ」
なんで貴女が小百合さんの名前を知ってるの。
元々知り合いだった……ってわけじゃなさそう。
さとちゃんの反応的に。
「あははっ、解散して結構経つのに覚えている人っているもんだねえ」
小百合さんは照れくさそうに
「うん、そうだよ」
頬を掻いた。
「やっぱり! 私、ずっと応援してたんです! まさかここでお会いできるなんて」
テンションが急上昇。
小躍りしそうなさとちゃんの肩を押さえ、
「落ち着いて」
その場に静止させる。
「一体どうした――」
「落ち着けませんよ!」
また言葉を遮られたんですけど。
流石にちょっと腹が立つな。
そんな思いは、さとちゃんの言葉で吹き飛ぶことになる。
「だってサユリさんは、元K-POPアイドルなんですよ!」
「……え」
嘘でしょ。
視線を彼女から小百合さんに移せば、
「そうなんだよねー」
呑気に笑っていた。
マジかよ。
私に連絡先のメモを渡してくる職業・正体不明の人は、まさかの元アイドルでした。
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