第3章 彼女の正体

第7話 新人ちゃん 1/2

 目が覚めた瞬間からソワソワ。


 顔を洗ってもソワソワ。


 どうにも気持ちが落ち着かない。


 妹の言葉のせいだ。


「明日も来なかったら連絡してみな」


 他人事だからって簡単に言うなよなあ。


 いやまぁ、たしかに他人事なんですけど。


 貰ったメモをズボンのポケットにつっこんで、家を出てからもソワソワ。


 店について、制服に着替えてからも、開店準備もソワソワ。


 全くもって、

「今日の麗奈ちゃん、落ち着きがないね。どうしたの」

 店長に指摘されてしまった。


「あはは……」


 笑って誤魔化す。


 まさか、「今日小百合さんが来なかったら、連絡してみようと思ってるんですー」とは言えない。


 別に言ったっていいんだけど。


 恥ずかしいじゃん。


 身内だし。


「まっ、いいや。今日は来るといいね、小百合さん」


「あはは」


 笑い返すしかない。


 エプロンのポケットを外側からそっと触れる。


 メモが入ったポケット。


 ズボンに入れっぱなしでも良かったのに、何故だか移してしまった。


 営業時間中に連絡なんてできないのに。


 ホント、なんでなんでしょうね!


「それと、今日から新人ちゃんが来るからね」


「え?」


 なにそれ。


 初耳なんですけど。


 常連さんしか来ない、たまーにふらっとご新規さんが来るこのお店。


 私と店長だけで十分やっていけるのに。


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