第6話 愛すべき妹 3
「気づいてないんだろうけど、小百合さんの話をしているときの姉さんの表情。まさしく『恋する乙女』って感じだよ」
それをあんたが言うか。
とは言えない。
相談に乗ってもらっている身なので。
でも、傍から見たらそうなのか。
私、恋する乙女みたいな表情をしているのか。
うーむ。
「まっ、それがホントに恋なのかは知らないけど」
口に含んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。
「おい」
急に突き放すじゃん。
薄情者!
「『憧れ』っていう可能性もあるでしょ。根本的に、その人のこと、なんにも知らないんでしょ?」
「ソウデスネ」
その通りです。
なーんにも知らない。
テーブルに肘をつきながら、麗華は話を続ける。
「それじゃあさ、友だちから始めてみたらいいじゃん」
「……成程」
そうか。
その手があったか。
なんで自分で思いつかなかったんだろう。
「まずはその人のことを知るところから始めないとなー」
天井に向かって両手を伸ばした妹にお礼を言おうとした瞬間、
「まっ、小百合さんが姉さんに恋をしてるのかわかんないんだけどさ」
前提をひっくり返された。
「え?」
パニックパニック。
今更それ言う?
「連絡先を渡してくるとか、十中八九下心ありだと思うよ。けどさ、ただ友だちになりたいだけの可能性も捨てきれない」
「たしかに」
思わず頭を抱える。
え、どうしよう。
私が勝手に突っ走って「いや、友だちになりたかっただけなんです」なんて言われたら。
立ち直れない。
自意識過剰じゃん。
「兎に角、明日も来なかったら連絡してみな。自分から動きなよ」
「えー」
「えーじゃない。って、もうこんな時間じゃん。私、これからレッスンあるから。準備しなきゃ」
そう言って、妹に家から追い出されました。
未だに頭の中はグチャグチャ。
ぼんやりと道を照らす外灯に何故だかイラついてキックをキメたら、足が滅茶苦茶痛かったです。
泣きたい。
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