第6話 愛すべき妹 2/3

 かくかくしかじか。


 愛すべき妹に全てを話した。


 包み隠さず。


 自分でも最近自覚した気持ちを。


「成程」


 話があっちゃこっちゃいってわかりにくかっただろうに、麗華れいかは我慢強く聞いてくれた。


 有難い。


 マグカップに口をつけ、

「自分でも持て余した感情を吐き出しに来たわけか」

 ちょっと上目遣いでそう言った。


「はい、そうです」


 仰る通り。


「言っとくけど、私は姉さんの感情のゴミ箱じゃないんだが」


「わかってるよ」


 ゴミ箱だなんて、そんなつもり毛頭ない。


 自分で考えても訳が分からなくなって。


 相談に乗ってほしくて来たんだから。


「初恋だよね」


「え、恋?」


「え?」


「え?」


「「……」」


 互いに無言。


 恋?


「まさかまさか。恋じゃないよ」


 首を振って否定する。


「じゃあなんなのさ」


「わかんないよ」


 この感情にラベリングできていたら、忙しい妹に相談しに来ていない。


「無関心だったのに関心持っちゃったんだろ」


「うん」


「惹かれちゃったんだろ」


「んー……それはどうなんだろう」


「チッ」


「おい」


 今舌打ちしたな、妹よ。


 聞き逃さないぞ、姉は。


「はあー面倒くさい」


「おい」


 頭を抱えないでくれ。


 私の頼みの綱はあんただけなんだから。


 麗華はコーヒーを一口飲んだ後、

「……姉さんは恋したことない」

 真剣な目つきで言った。


「そうっすね」


 恥ずかしながら。


 24年間生きてきて、『恋』というものをしたことがありません。


「だからわかんないんじゃないの。自分の気持ちが『恋』だってことに」


「……」


 無言でコーヒーを飲む。


 苦い。


 この苦さが好きなんだよなあ。


 頭がスッキリする感じ。


 今は脳内パニック祭り開催中ですが。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る