第6話 愛すべき妹 1/3

「珍しいね、姉さんが私に相談だなんて」


「そうだね」


 突然押し掛けた私を、麗華れいか

「私がいなかったらどうするつもりだったんだよ……はぁ」

 ため息をつきながらも家に入れてくれた。


 流石は我が妹。


 因みに、両親共働きなのでいなかったら大人しく退散する予定でした。


「あっ、姉さんの話の前に、私から話しておきたいことがあるんだけど」


 出されたコーヒーを一口飲み終えたところで、麗華が口を開いた。


「えっ、なに」


 高校生で芸能界に入り、今はモデルや女優として活躍している妹。


 なにかやらかしたのだろうか。


 スキャンダル? それとも海外に留学に行きたいとか?


「あのさ、アイドルになることになった」


「……そっか、アイドルか。って、え、あんたがアイドル!?」


「父さんと母さんとおんなじ反応してる」


 苦笑されましたけれども。


 そりゃそうだろうさ。


 その親から生まれたんだから。


 じゃない。


「え、マジ?」


 想像の斜め上を言う妹に、開いた口が塞がらない。


「マジだよ。こんな嘘つかねえよ」


「おーん」


 プラチナブロンドのハンサムショートヘア。


 ボーイッシュ路線で活動する麗華がアイドル!?


 心臓が飛び出そうになるぐらいビックリしたわ。


「たしかに、あんたの顔はそこら辺のアイドルと比べても遜色ないぐらい整ってるけどさ……どういう経緯でそうなったのよ」


「いろいろあった」


「いろいろって……」


 端折はしょりすぎでしょ。


 なに一つ伝わってこないよ。


「あー……運命の人と出会っちゃったんだよな」


「運命の人」


「そう」


「おーん」


 なんて返せば正解なのかわからない。


 だって見たことない表情してるんだもん。


 頬がほんのり色づいて、照れくさそうに笑っちゃってさ。


 その人のことが大好きで大切なんだな、って言外に伝わって来る。


 仕方ない。


「あんたが選んだ道なら応援するよ」


 お姉ちゃんですからね。


 いつもなんでも共有していた子ども時代は終わったのだから、お互い知らないことが増えて当然。


 ちょっと寂しいけど。


 本音を言えば、滅茶苦茶寂しいんですけれども。


 ここは大人しく見守ろうじゃありませんか。


「で、姉さんの話ってなに?」


 麗華よ、話しのハンドルをきるのが急すぎやしないかい?


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