第4話
「青川くん、安価をお願いしてもいいですか」
「金子さん、もちろんいいよ。報酬はなに?」
「報酬は私が大事に育てた『月下美人』ていう蘭の花でもいいかな?」
「報酬は依頼者の赴くままに」
「でもね、人じゃないの。植物なんだけど安価できますか?」
「生きてるんだよね?」
「はい。生き物です」
「とりあえず聞いてみるよ。何について安価して欲しいの?」
「校舎の裏に花壇があってそこのお花さんたちが最近元気がないの。水をあげてもあげても良くならなくて。培養土も混ぜたりしてみたんだけどそれでもだめで。あの子たちを助けてあげたくて」
《なんとしても助けてあげたい。助けてくれるならなんだってする》
金子さんの心の叫びが文字として頭の上に浮かび上がる。それを見た僕は金子さんの役に立ちたいって思った。
最近はバカみたいな安価が多かったから久しぶりのまともな安価に少し嬉しさをかんじた。
「わかった。お昼休みに安価します」
……………………
花壇に向かうと確かに元気なく萎れている花たちがたくさんあった。
「ねえ、みんな、どうしてそんなに元気がないの?」
僕の特殊能力は生き物なら全てその生き物の思いや考えが文字化されて僕には見えるようになる。
会話は出来ないが僕が話しかけたらそれに反応して生き物自身の思っていることが文字化されるのだ。
《ねこだよ。ねこがやたらめったら土を掘り返すのさ》
《水がきつい。金子ちゃんがたくさん水くれるけどもう吸収できない》
《ねこが土を掘り返してふかふかになってそこに水が大量に染み込むからみんな吐きそうなんだ》
《おれはかわい子ちゃんが近くに欲しい。それだけで元気が出る》
花たちの思っていることが全て見える。
「金子さんのことは好きかな」
《だーいすき!》
お花さんたちはみんな同じ思いのようだった。
◇◆◇
「金子さん、安価の時間です」
「はい、よろしくお願いします」
「まず生贄が必要です。月下美人をお返ししますので彼女を花壇の真ん中に植えてください。そして『みーんな、大好きよ♡』と笑顔でにこやかに言い続けながら花の周りの土を蹴り固めまくってください。猟奇的なくらい蹴り固めてください」
「ええ!それじゃあ、お花さんたちが死んじゃうよ」
《かわいそう。かわいそすぎるよお花さんたちが》
(僕のことを疑うよりも花たちの心配が先なんだね。いい子だ、金子さん)
「今までお花さんたちの面倒を見てきて元気がなくなったのは誰のせい?それだけだよ。あとは好きにすればいいさ」
「うん、わたし、なんでもするって言ったからやってみる」
▽▼▽
後日、金子さんの笑顔の花が咲いていた。
「」
安価を求めてみんなが僕にひざまづく。 Rui ji 6 @Analogy6ofIQ114
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