第16章 心

感情の整理をした。日向先生は大切な友人だ。高校の時から親友と言えるほど仲が良かった。故にAを取られたことによる怒りと悲しみを彼にぶつけることはできなかった。私はやり場のない怒りと悲しみを抱えていた。Aのことは相変わらず好きだった。1度振られたくらいでは折れないくらいに好きだった。私は誰を攻めたらいいのかと考えるまでもなく、自分に腹が立った。中学生に「先生として好き」なんて気を使わせて振られる大学生がどれほど馬鹿らしいか。水面を蹴散らし、月と川を乱した。

 月と川は凄かった。どんなに乱してもすぐに綺麗な形に戻るのだから。人の心は月と川のように戻るのだろうか、欠けた心はすぐに癒えるのだろうか。らしくないことを考えていた。

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