第6章 恋


「緊張して寝れないから電話したい、せんせの声安心する。」とAは言った。私は馬鹿だ。受験前日の中3の女子と通話をする塾講師など私以外いないだろう。 

 寝れなかった。彼女は寝たようだが、寝れなかった。もしかしたらなにか言ってくれるんじゃないかと期待し、寝たフリをしたが、何も言われなかったので「頑張る君が好きだよ。」と小声で言った。ん、と照れるような声が聞こえたが、勘違いだと思った。月明かりに照らされながら私は眠りについた。

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