第4章 心身の変遷

それからはひたすら勉強漬けだった。22時には授業が終わり、みんなが帰る中、私と日向先生で教え続けた。22時30になって追い出されるまで3人で勉強していた。そんな毎日がずっと続いた。

 真綿のような雪が降るある冬の夜、私は塾の帰りに倒れてしまった。

 意識が朦朧とし、酷い吐き気と立ちくらみが全身を襲った。

 後日、医者の診断で貧血とわかった。貧血ごときで倒れる私は自分自身を脆弱と罵った。Aは多すぎるほど課題を出しても必ずこなし、予習も復習も毎日している。そんなAに比べたらただ教えてるだけで貧血になる私は文字通りただの脆弱だ。

 しばらく塾を休んでいた私を真っ先に心配くれたのはAだった。「せんせ、せんせ、せんせ大丈夫?」と声をかけるAがいた。ぷっくりと膨れた涙袋が、あの大きな瞳から、こぼれそうな涙を必死に抱えていたのを今でも鮮明に覚えている。私は大丈夫だとそう伝えた。

 私の中でなにかが動いたような気がした。

 今まで感じたことのない何かを。

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