第10話

 それから時は経ち、三月十八日。

あの桜の咲かない木に、桜が一輪咲いた。優輝は、それを誰よりも待ち望んでいた少女のことを思い出す。

その手には、彼女の両親から預かった、優輝宛ての手紙が握られていた。この手紙を読むのはきっと、この場所が最適だと考えた優輝は震える手で、その封を切った。

そこにはたった一文、こう書かれてあった。


『あの日から、この桜の木の下で出会ったあの時から、ずっとあなたのことが、好きです。』


と。




きっと彼女は、いずれ満開になるであろうこの桜の木を、ずっと見守り続けるだろう。

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桜になれない君 雪蘭 @yukirann

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